生理カップ選びに役立つ!生理カップのデザインと機能を徹底解説

2018.12.24

世界中の生理カップ(月経カップ)をみると、ブランドによってカップの形ややわらかさ、サイズや容量、ステムの長さや形、色などはさまざま。

しかし、カップ自体の基本的な形に大差がないことにはお気づきですか?

どれもピンポン球程度の大きさで、鈴のような形をしていて、先端に尻尾のような細長い部分がついていて、カップ本体より少し分厚い縁の部分があって。

このデザインの基盤は、実は、最初に生理カップが作られた1937年当時とほぼ変わっていないそうです。

ではなぜ、約80年間にも及ぶ生理カップの歴史の中で、形の変化がほとんどなかったのでしょうか?

それは、カップ全体のデザインと各部位の機能全てに理由があり設計されているからです。

生理カップのデザインに最も求められることは、子宮から膣に出てくる経血を漏れることなく受け止めて溜めること。

それに加えて、挿入や取り出しが簡単で、長期間使用できること、そして、繰り返し使用が可能で、膣に対して害がなく膣の環境に適していなければなりません。

これらの要求を満たすためには、物理学(デザイン設計)、物質化学(素材)などの視点が必要です。

今回は、インドのCSIR-Institute of Minerals and Materials Technology (IMMT)の化学者のAbdul Rauf Sheik氏による理論的な解釈についてのレポートをもとに、基本的な生理カップのデザインと各部位の機能についてご紹介します。

 

生理カップのデザインの特徴と各部位の名称

まず、生理カップのデザインの特徴と、各部位の名称について確認しましょう。

カップには5つの特徴的な部位と名称があります。

 

基盤となる部位

1 リム(カップ上部の縁)

2 本体(経血を溜める丸く膨らんだ部分)

 

二次的な機能となる部位

3 ステム(カップの先端の尻尾部分)

4 空気穴(リム付近にある小さい穴)

5 リブ(本体の下部にある筋)

 

月経カップの構造

<生理カップの構造>

カップのデザインは一見とてもシンプルに見えますが、この5つの部位にカップを快適に使用するための必要不可欠な機能が備わっています。

それでは、各部位の機能を細かく見ていきましょう。

 

生理カップの各部位の機能

1 リム(縁)

リムは、カップを膣にピタッと密着させる働きをして、カップと膣壁の間から経血が漏れるのを防ぎます。

膣は完全な筒状ではなく、狭くなっているところもあれば、広くなっているところもあります。

そのような膣の形状に合わせて、リムは形を変えてフィットするように柔軟でなければなりません。

もしリムが円形のまま形が変化しなければどうなるでしょうか?

その場合、リムと膣壁の間に隙間が空いてしまって、そこから経血が漏れることになるのです。

このようなことから、リムには柔軟性が必要ですが、一方で、リムは膣圧によってつぶれたり折れたりしないことが不可欠です。

そのため、リムはカップの本体よりも分厚く作られ、膣圧がかかっても形がつぶれにくい堅さが求められます。

つまり、リムには柔軟性と堅さのほどよいバランスが必要なのです。

生理カップをお持ちの方は、ぜひリムと本体の厚さの違いや、リムの柔軟性と堅さを触って確かめてみましょう。

 

2 本体

カップ本体は、経血を溜める部分です。

ブランドによってサイズや容量はさまざまですが、一般的な容量は15〜30ml程度。(ちなみに、エヴァカップ はスモール30ml/ラージ37ml。経血量の多い人におすすめのスーパージェニーはスモール32ml/ラージ41.6ml。)

形は、リムからステムにかけて少しずつ細くなるように作られていて、V字型、鈴型、チューリップ型などブランドによっていろいろあります。

カップのなかには、側面に目盛りがついているものもあります。

エヴァカップとスーパージェニーにも、15mlと30mlの部分に目盛りがついており、ナプキンやタンポンでは知ることのできなかった自分自身の正確な経血量がひと目で分かるので便利です。

横から見た月経カップ

3 空気穴

カップ本体の上部、リムの少し下の部分には小さい空気穴(通常3〜4つ。ブランドによって違います)が空いています。

目を凝らして見ないと分からないほどの小さい穴です。

「何のために穴が空いているんだろう?」「穴から経血が漏れなのかな?」と疑問に思ったことはありませんでしたか?

これらの穴は、実はカップを挿入したり取り出したりする際に、カップから空気を外に逃がすという重要な働きをしています。

まず、カップを装着する際、折りたたんだカップが膣内でぱっと開くことで、カップと子宮頸部との間に吸引力が発生するのですが、これらの空気穴から空気が抜けることで、カップが膣壁にぴたっと密着します。

さらに、カップを取り出す際には、膣壁とカップの密閉を解除させる必要があります。

もしカップと膣壁との密閉を解除せずに、そのままステムを引っ張るとどうなるでしょうか?

膣内が吸引されて、膣壁や子宮頸部に痛みが生じてしまいます。

まず密閉を解除するために、カップの下部を指でへこませます。

カップをへこませると、空気が空気穴から流れることで、カップの密閉が簡単に解除できます。

これで、生理カップの取扱説明書の一番最初に「使用前にカップの空気穴がきちんと空いているか確認しましょう」と書いている理由がわかりましたね。

カップの空気穴は目立たない存在ではありますが、カップを快適に使用するための非常に重要な要素なのですね。

 

でも、空気穴から経血は漏れないの??

カップの空気穴が重要なことはわかりましたが、その穴から経血が漏れてしまうのでは?と心配になりませんか?

しかし、基本的には空気穴から経血が漏れることはありません。

その秘密は「表面張力」。

表面張力とは表面の浸透に耐える、流体の特性のことです。

液体によって表面張力の強さは異なり、表面張力が強いほど表面を壊す(貫通させる)のが困難になります。

水面を歩くアメンボを想像してみてください。

アメンボの特徴

水の表面張力は水面を弾性フィルムのように作用させます。

アメンボは、体が軽く、足の長さに沿って体重を分散することができるため、トリックのように水面を自由自在に動くことができるのです。

一方、食器洗剤を含ませた水は界面活性剤の働きによって普通の水よりも水に馴染みやすくなり、表面張力が弱くなります。

そうなると、アメンボは水面を歩くことができなくなるそうです。

では、カップに溜まっている経血はどうでしょうか?

経血にも表面張力があり、経血が自然に空気穴を通って流れるには、経血の表面を壊すための強い力が必要で、そのためにはカップの空気穴は小さすぎるのです。

だからといって、100%漏れないというわけではありません。

カップの容量がいっぱいになり、膣の上部まで経血で満たされた場合には、経血が空気穴を通ってしまうほどの強い力が働く可能性が高まります。

漏れるリスクを減らすためには、容量がいっぱいになる前に、カップを取り出して中身を捨てるようにしましょう。

 

4 リブ(筋)

リブ(Ribs)を直訳すると肋骨・肋骨状のもの・(牛などの)あばら肉・うね・葉脈などですが、カップで言うリブはどの部分でしょうか?

正解は、カップ本体の下部に水平に入っている筋のことです。

リブには、2つの役割があります。

ひとつ目は、カップを指でつかむときの滑り止めの役割です。

ふたつ目は、折りたたんだカップを開きやすくしてくれる役割です。

やわらかいカップは、挿入時に折りたたみやすく小さくしやすいですが、一方で、やわらかすぎるカップは骨盤底筋の強さによっては膣圧に負けて、挿入時に折りたたんだカップが開かなかないこともあります。

リブは本体よりも厚く作られているので、骨盤底筋の収縮によって膣圧がかかってもカップを変形させません。

やわらかくて柔軟性のあるカップ本体と、強いリブによって、簡単に手で折りたたむことができる一方で、膣圧に負けずにカップをスムーズに開くことができます。

このカップ本体のやわらかさと、リブの強さの絶妙なバランスが、カップの使いやすさを左右するのです。

月経カップのリブ

<エヴァカップ(左)とスーパージェニー(右)のリブ>

5 ステム(尻尾)

ステムは本体の先端についている尻尾のような部分です。

長かったり短かったり、細かったり太かったり、リング状になっていたり、丸くなっていたりと、その形状はブランドによって異なります。

必要があれば、ユーザーが使いやすい長さにカットして使用することもできます。

ステムは、カップを取り出す際に引っ張るものではなく、あくまでもカップを挿入したり取り出したりすることをサポートするものです。

カップと膣壁の密閉を解除しないでステムを引っ張ると、痛みを生じたり、ステムが切れる原因にもなるので注意しましょう。

 

生理カップで生理痛が軽くなるって本当?

生理カップのユーザーから「生理痛が軽くなった!」「生理痛がなくなった!」という声をよく聞きます。

このことは医学的に証明されていないため、もしかしたら、生理中の漏れの心配や、蒸れやかゆみなどの不快感から解放されストレスが減ることで、生理痛が軽くなった気分になるのかな?と想像していたのですが、Abdul Rauf Sheik氏の仮説は以下のとおりです。

通常は、子宮をギュッと収縮させることによって経血を膣へ出しています。生理痛はこの子宮の収縮によって生じる痛みです。

カップが膣内の正しい位置に装着されると、カップと子宮頸部の空間は空気圧によって密閉されます。

装着したカップは、歩く、座るなどの日常的な動きによって、膣に沿って上下にわずかに動きます。

このわずかな動きが、圧力差を生じさせる可能性があり、その結果、通常よりも早く子宮から経血が出てくる可能性が考えられます。

子宮から経血が早く出れば、子宮の収縮を減らすことができるため、生理痛が軽くなるというわけです。

世界的にも生理に関する研究はまだまだ少なく、あくまでもこれは理論のみに基づいた彼の仮説ですが、非常に興味深いですよね。

ブランコに乗る女性

まとめ

普段何気なく使っている生理カップ。一見非常にシンプルに見えるデザインですが、実はひとつひとつの部位に重要な役割があり、カップを快適に使うためにはどの部位も欠かせないことがよくわかりました。

また、各部位のやわらかさ、柔軟性、厚さ、弾力性、堅さなどの微妙なバランスが、カップのよしあしを左右することは、使っていて何となくそうだろうなと感じてはいましたが、物理的な解釈を理解することによってスッキリしました!

そうなると、これらの要素を満たしたカップを選ぶことが、カップ生活を快適にするポイントといえそうです。

もし、今お使いのカップが何度か使用しても、どうしても漏れやすい、開きにくいという場合には、あきらめないで、カップのブランドを変えてみるのもよいかもしれませんね。

何にせよ、約80年前に生理カップの原型を発明したレオナ・カルマーズさんへの感謝の気持ちでいっぱいです!

 

参照記事:「A Chemical Scientist’s perspective on the Design of Menstrual Cups」by, Abdul Rauf Sheik / Medium

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インテグロ株式会社  生理ケア&生理カップアドバイザー

1990年東京生まれ。筑波大学体育専門学群 卒業、中高保健体育教員免許取得。筑波大学人間総合科学研究科体育学専攻 博士前期課程 修了。

小さいときから身体を動かすことが好き。3歳から水泳を始め、約18年間競泳選手として活躍。大学院在学中は、スポーツを通じた国際協力としてNGOにてカンボジアの小学校の体育科教育の普及に携わる。また、日本では小学生から大人までの幅広い年齢層に水泳の指導を行う。

2017年生理カップと出会い、生理中の過ごし方や生理に対する捉え方が大きく変わり、生理カップを通じて女性がより快適で自由に過ごせるように、社会や家庭でアクティブに活躍する女性たちをサポートしたいと思うようになる。世界中の数十種類もの生理カップを試してきた経験から、生理カップの選び方や使い方、経血量やライフスタイルに合わせた生理ケアについて、アドバイスを行ったり、ワークショップを開催したりしている。

現在、女性の体や性教育、妊娠・出産・子育てについてより専門的な知識を身につけるため、一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会(代表理事:丸の内の森レディースクリニック 院長 宋美玄先生)主催「これだけは知っておきたい」講座を受講中。