生理の出血量が多い「過多月経」とは。気になる原因や対処法は?

2018.10.14

広尾レディース院長の宗田聡先生に聞きました。過多月経に関する疑問!

女性が生きていく上で長い間付き合っていかなければならない「生理」。しかし、ひと言に生理といっても、周期や出血量などは人それぞれです。当然悩みも人それぞれ。

「1時間ごとにトイレに行かないと不安」「夜は夜用ナプキンを2枚重ねは当たり前」。そんな方は、もしかたら過多月経かもしれません。

今回は、生理の悩みの中でも多くの女性が気になっている生理の出血量が多い「過多月経」に注目し、女性が抱えるさまざまな疑問を広尾レディース院長の宗田聡先生に伺いました。

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過多月経とは

女性同士でもお互いに生理の出血量について話すことはあまりないので、自分の量が通常より多いかどうかわからないですよね。「過多月経」かどうかどうやって分かるのでしょうか。目安はありますか?

生理中の出血量が極端に多いことを「過多月経」といいます。日本産科婦人科学会では、正常な1回の生理の出血量は20〜140mlという基準を設けています。したがって、140ml以上の出血がある場合は「過多月経」と言えるでしょう。

しかし通常、生理の出血量を測ることはできませんよね。目安として、“日中でも夜用のナプキンを使わなければいけない”とか、“ナプキンやタンポンが1時間もたない”というように、生理用品の一般的な使い方では対応できない場合は「過多月経」を疑った方がいいでしょう。

 

ところで、生理のときにレバーのような塊が出ることがあるのですが、これは何でしょうか?

レバーのような塊が出ることも過多月経の症状のひとつです。生理の出血量が多いと、一度に排出されずに膣の中にとどまってしまった血がレバー状に固まってしまうことがあります。それが出てくるのです。出血量が少なければ固まることなくサラっと出てきます。

 

過多月経の原因は2つ

では「過多月経」の原因は一体何でしょうか?

過多月経の原因は主に2つあります。ひとつは「器質性疾患」、もうひとつは「機能性疾患」です。

「器質性」は、病気が原因で生理の出血量が増えることです。子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜症などが代表的です。多くは20代以上で起こり、徐々に悪化していき30代になっても量が増えていくという特徴があります。

一方「機能性」は体質のようなもので、もともと生まれ持ったその人自身の特徴ですね。10代の若いときから出血量が多いという特徴があります。個人差がありますが、子宮の内膜が通常よりも厚くなるため、出てくる出血量が多くなるのです。

10代のころから子宮筋腫や子宮内膜症があることは考えにくいため、急に20代や30代になって出血量が多くなったり、加齢とともに経血の量が増えてくる人は、子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜症などの可能性があるので注意が必要です。

 

生理の出血量と生理痛の重さは比例しますか?

はい、一般的には比例します。生理痛は、いらなくなった子宮内膜をはがして外に出すときに、子宮の筋肉が収縮することによる痛みです。通常、出血量が多い人は子宮内膜が厚いです。そのため、それをはがして外に出すためには、子宮の筋肉もぎゅーっと強く収縮させるため痛みもひどくなるのです。特に子どもを産んでいない人は、子宮内膜を生理初日に一度に出そうという傾向があるので、特に痛みが強くなる場合があります。

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過多月経を放置するとどうなるのか

生理の出血量が多いことで病院に行く人は少ないように思うのですが、過多月経を放っておくとどうなるのでしょうか?

おっしゃるとおり、生理の出血量が多いために立ちくらみや動悸など重い貧血の症状があっても、病院に来ない人はたくさんいます。なかには血液中のヘモグロビンが正常の半分ほどまで低くなって、ある日倒れて救急車で運ばれるということもあります。私たち医師にとっては、よくそこまで我慢したなと驚くのですが、本人は貧血状態に慣れてしまっていたり、みんなもそうなんだと思い込んでいたりするので、放置してしまうのでしょうね。

貧血で倒れてしまうほどのひどい過多月経の生理の出血量は、バスタオルを敷いて寝てもタオルが真っ赤になってしまうくらいの量です。生理のときは漏れが心配で外出ができないなど生活に支障をきたす場合には明らかに過多月経です。放置しておくと、貧血が進み最終的に命にかかわることになります。また、まれではありますが子宮体がんや子宮頸がんなどによる出血の可能性もあります。これらの重大な病気を見逃さないためにも、早めに病院を受診していただきたいです。

 

過多月経の治療法・対処法について

過多月経の治療法・対処法にはどんなものがあるのでしょうか?

過多月経も含め重い生理に対する一般的な治療法のひとつは「低用量ピル」です。低用量ピルはホルモン剤で、ホルモンバランスをコントロールして、排卵を抑制します。一般的に、避妊薬という印象が強いですが、同時に子宮内膜をあまり厚くさせない効用もあるため、過多月経や重い生理痛の人が飲むことで生理の出血量が減ったり、生理痛が軽くなったり、生理期間が整ったりする効果(副効用)があります。

なぜピルが過多月経や重い生理痛に効くのかというと、ピルを飲むことによって子宮内膜が厚くならず、その結果としてはがれ落ちる子宮内膜の量、つまり出血量を減らすことができるからです。外に出さなければいけない出血量が減ると、生理痛も軽くなるという仕組みなのです。

ピルを飲んだからといって、生理痛が全くなくなるわけではありませんが、これまで生理が始まると生理痛が辛くて寝込んでいた人や出血量が多くて外出できなかった人が普段通りに動けるようになりますよ。

 

ピルといえば副作用というイメージがありましたが、実際にはどうなのでしょうか?

「ピルに副作用がある」というのは昔のはなしですね。昔は今のようなホルモン量の少ないピルがなかったので、治療用のホルモン量の多い薬を避妊用のピルとしても処方していました。そのため、様々な副作用もでやすかったのです。例えば、「ピルで太る」と俗に言われますが、確かに女性ホルモン自体が体内に水分を溜め込む作用があるため、むくみやすかったり、太りやすかったりしました。しかし、現在処方される低用量ピルは含まれるホルモンの量が非常に少ないため、通常はほぼ太ることがありません。

 

では最近はピルを使用する人も増えているのでしょうか?

そうですね。最近は生理の量が多くて友達に相談したら「ピルがいいよ」と言われたので病院に来ました、という患者さんも少なくありません。

まだまだ欧米に比べるとピルの服用率は非常に低いですが、日本でもピルが避妊だけでなく、生理痛や過多月経にも効果的であるという理解が少しずつ広まってきたと感じています。

 

低容量ピルは長年飲み続けても問題はありませんか?

全く問題ありません。年中服用しても構いません。

ただし、ピルを飲んでいるからといって生理が止まるわけではありません。また、どんな薬でも副作用があるということは覚えておいてほしいですね。可能性はとても低いですが血栓症のリスクがあります。そのため、必ず医師と相談してから処方してもらいましょう。

 

最近、日本でも注目されている生理カップ(月経カップ)についてはどう思われますか?

過多月経の人は経血があふれて漏れることが常に不安だと思います。生理カップは、「漏れにくい」「トイレに行く回数が減る」などのメリットがあるので、生理の出血量が多い女性にとって対処法のひとつだと思いますよ。デリケートゾーンのかゆみやかぶれに悩んでいる人にもおすすめではないでしょうか。

最近は選択肢も増えてきて、ブランドによっていろいろな素材、形状、サイズなどがあるようですね。日本国内で医療機器の登録がきちんとされているものの中から、ご自分に合ったものを選ばれるとよいと思います。

 

加齢に伴う経血の量の変化

生理の出血量は出産経験や年齢によって変化するのでしょうか?

特に子宮筋腫などの病気がない場合には、年齢を重ねていくにつれて月経期間は短くなり量も減っていくというのが一般的です。10代20代のときと比べると30代40代のほうが出血量は当然少なくなります。だからこそ、30代以降になって出血量が増えてきたという場合は子宮筋腫や子宮内膜症を患っていることが多いです。しかしこれらの疾患の有無は検査をしない限り、分かりません。噂やインターネットの情報ばかりを信じて自己判断をするのは危険ですので、必ず病院で検査を受けてほしいと思います。

 

では逆に、生理の出血量が少ないことは問題でしょうか?

それは程度によります。排卵できずにホルモンが分泌されなければ子宮内膜は薄いままなので、はがれ落ちる子宮内膜の量が少なくなり、生理の出血量も減ります。ピルを飲んでいるのと同じ状況ですね。何か問題があるのかどうかについては病院で調べる必要があります。

 

生理の血の色について

生理の血の色がピンクだったり真っ赤だったり茶色だったり…。これらの色の違いは体調などに関係あるのでしょうか?

あまり関係はないですね。通常、血は赤色ですよね。最初から茶色い血はありません。色の違いの原因は、血液は空気に触れると時間の経過とともに酸化するからです。出たばかりの血は真っ赤ですが、生理の血が膣に長時間留まっていたり、ナプキンを長時間交換しなかったりすれば茶色っぽく変化します。

 

最近、生理カップを使い始めました。カップに溜まった血が今までよりも赤くて綺麗でサラサラしているようです。なぜですか?

出たばかりの血を見たから綺麗な赤色だったのでしょう。生理カップは膣内で血を溜めるので膣がカップによって密封された空間になりますよね。そのため経血が酸素に触れる時間が短く、酸化されにくく、血も固まりにくいということが考えられます。

昔は女性の生理の血が「体の中に溜まった悪いもの」と捉えられ、生理をデトックスのような意味合いで説明がされてきた時代がありました。現在もそのようなネガティブなイメージが少なからず残っていて、「ドロドロの血=体が悪い」という印象を与えているのではないかと考えられます。実際には、生理は体内の悪いものが出ているわけではありません。生理の血の状態の違いは、「血が出てから生理用品を交換するまでの時間」の違いなので、ドロドロでもサラサラでも心配することはないですよ。

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まとめ

いかがでしたか? 過多月経の原因や対処法、加齢に伴う出血量の変化、血の色の変化の意味合いなど、さまざまな疑問に答えていただきました。

宗田先生のお話から、私たち女性は長く生理と付き合っているからこそ、生理についての勝手なイメージや思い込みがあったり、生理について他者と情報共有をする機会が少ないために、自己流の対処法が確立してしまっていたり、ということが多いことがわかりました。

生理の出血量が明らかに多くても、日常生活に支障が出るほどに生理痛が酷くても、「みんなもこんなものだろう。」「生理は病気ではないから大丈夫。」と、夜寝るときにバスタオルを敷いたり、夜用ナプキンを重ね付けしたり・・・このような人はぜひ一度病院を受診しましょう。

晩婚化や少子化が進み、昔に比べて現代の女性は生理の期間・回数が格段に増えているため、より一層自分自身の身体の変化に敏感でなければいけません。過多月経に限らず、生理に関する悩みや不調の原因は自己判断するべきではなく、気になることがあれば早めに専門の医師に相談することが重要です。

 

参考記事:

もしかしたら過多月経かも?! 自分の経血量を知る方法

あなたは過少月経?過多月経?ひと目で分かる経血量の違い

広尾レディース院長・東京慈恵会医科大学講師(非常勤)
筑波大学産婦人科講師を経て、米国ボストンのNew England Medical Center(NEMC)遺伝医学教室に留学。
帰国後、茨城周産期センター長。その後、女性のこころと身体を総合的にサポートする医療をこころざし、2012年より女性の健康をトータルにケアするクリニック、「広尾レディース」開設。
産婦人科専門医・臨床遺伝専門医(指導医)・アメリカ人類遺伝学会(ACMG)フェロー・産業医・医学博士。
筑波大学、首都大学、東京慈恵会医科大学の非常勤講師。
著書に『ニューイングランド周産期マニュアル』『31歳からの子宮の教科書』『これからはじめる周産期メンタルヘルス』「EPDS活用ガイド」等。