生理中の水泳って大丈夫?元水泳選手が伝えたいこと

2018.09.14

3歳から大学まで水泳をしていた元水泳選手の私は、1年のほとんどを水の中で過ごしていました。

長い水泳競技生活の中で、毎月の生理に対して、自分なりの対処法を自然に身につけ、いつもと変わらず泳いでいました。

そんな私は、学校の体育の授業のときに、プールサイドに洋服を着た女子生徒たちが長い列を作って授業見学をしている光景にいつも違和感を抱いていました。

みなさんの中にも「生理中の水泳はよくない」というイメージを持っている方がいるのではないでしょうか。

実は、「月経中のスポーツ、特に水泳の可否」については、1989年に日本産婦人科学会が小児・思春期問題委員会報告書(月経期間中のスポーツ活動に関する指針)として、2010年には日本臨床スポーツ医学会産婦人科部会が「月経中のスポーツ活動に関する指針」(日本臨床スポーツ医学会誌:vol18 No.1, 2010)として、「生理中の水泳は医学的に問題ない」ということを示しています。

つまり、生理中の水泳は強制するべきではありませんが泳いでも大丈夫、ということなのです。

今回は生理中の水泳について多くの方がもつ疑問や対処法にについてご紹介します。

生理は病気ではない

女性の体は、排卵し受精卵を育てる子宮の内膜を厚くしたりなど、月のサイクルで妊娠に備えるための準備をしています。しかし、人間は毎月妊娠するわけではありません。

そこで妊娠しなかったことによって、いらなくなった子宮内膜がはがれ落ちて血液とともに排出されます。これが生理です。

生理は女性の体で起きるひとつの現象であり、病気ではありません。

しかしながら、多かれ少なかれ生理前や生理中には頭痛や腹痛などのさまざまな不快症状が現れ、なかには日常生活に支障をきたすほどひどい生理痛がある女性もいます。

そのため、生理中は体育の授業、特に水泳は、「生理だから休んでもいい」とまるで病気のように扱われていたのでしょう。

女子生徒たちもそれをいいことに、体調が悪いわけではないのに、「生理だから休んでもいい」「生理って言えば先生(特に男性教諭)は何も言い返してこない」という雰囲気があったり、中には水着を忘れただけなのに「生理って言えばいいや」と水泳の授業をさぼる人もいました。

もちろん、経血量が多くて貧血気味だったり、ひどい下腹部痛などがある場合には、無理をするべきではないと思いますが、医学的に「生理中は絶対に安静」ということはないのです。

 

専門家の指針によると

「月経中のスポーツ、特に水泳の可否」については、日本産婦人科学会が1989年、日本臨床スポーツ医学会は2010年に指針を出しており、元水泳選手であり「日本水泳ドクター会議」に所属するスポーツドクターでもある産婦人科医の江夏亜希子先生は、一貫して「医学的には問題ないけれども、強制はすべきではない。水に入る前や上がった後の流血に配慮すべき」という見解を示されています。

この指針を学校の授業に置き換えると、生理痛がひどかったり貧血の症状があるなど体調が優れない生徒に対しては休ませ、そうではない生徒は体育の授業に参加しても全く問題ないという解釈になると思います。

日本産科婦人科学会では30年近く前からこのような指針を出しているのにも関わらず、「生理なら仕方ないね。」という雰囲気・風潮が教育現場を中心にいまだに存在します。

その理由には、中学校高等学校ともに学習指導要領の保健体育、水泳の項目には「生理中の女子生徒に対する指導について」などという記載がないこともあげられます。

体育の教諭は男性が多いこと、また、生理痛の強さや経血量などは個人差があるため他者と比べることができないことも原因のひとつかもしれません。

参考記事:月経中に泳ぎたい女性にも、泳ぎたくない女性にも。元水泳選手でスポーツドクターの産婦人科医が伝えたいこと

 

生理中の水泳が大丈夫な理由とは?

では、なぜ生理中の水泳が問題がないといわれるのでしょうか?

主な3つの理由をご紹介します。

 

① 運動が生理痛を軽減させる

生理痛がつらいから1日中じっとしている、これは実は逆効果だそうです。

動かないでいると下半身の血流が滞るため、経血を押し出そうと子宮が収縮し痛みが増すといわれています。

適度な運動は、生理痛だけでなくPMSによる気分の落ち込みなどを改善する効果もあるそうです。

生理中は無理のない範囲で、なるべく体を動かしたほうがいいのです。

お風呂上がりに血流を促したあとに軽いストレッチをするなど、生活の中で無理なくできることから始めてみましょう。

このようなことから、生理中の水泳についても、特に体調が悪くなければ、通常どおり行っても悪影響はないといえます。

日本産科婦人科学会によると、妊娠中の諸症状(むくみや倦怠感、頭痛など)が水泳によって軽減されたという報告もあります。

参考記事:女性の栄養と運動妊婦のスポーツ:聖路加国際病院産婦人科医長 伊藤博之(1999年9月 クリニカルカンファレンス N-289)

② 水中では経血は出にくい

経血は自分の意思で出すタイミングをコントロールできないからこそ、その対応に苦労すると思います。

日常生活に加えて、特に運動しているときは突然の動きや激しい動きによって、経血漏れをしないかが心配で集中できなかったり思い切り動けなかったり・・・。

さらに、水泳の場合は、水中で経血がダラダラと流れ出てきてしまったらどうしようと、とても心配ですよね。

でも安心してください。

実は、水中では水圧によって経血が出にくくなるのです。

経血が出て後ろで泳いでいる人に見られたらどうしようという心配は不要なのです。

ただし、水から上がったあとは経血が出やすくなります。

濃い色のバスタオルを用意しておいたり、シャワーをすぐに浴びてサっと着替えるというような対策が必要です。

レジャープールや海などでしばらく水着のまま陸上にいなければいけない場合は、タンポンを使用するのもよいと思います。

③ プールでの感染リスクはほぼない

生理中の水泳に関する疑問のひとつに、水中に出る他人の経血によって、HIVやB型・C型肝炎への感染を心配する方もいるかもしれません。

確かに、HIVやB型・C型肝炎は血液や体液を介して感染する病気ですが、専門家の指針によると、塩素などを使用した水質管理がされているプールでは、「生理中の水泳による感染は問題ない」とされています。

ある感染症内科の医師は、「ヒトの肛門周辺には平均0.14グラムの便が付着している。つまり100人の子どもがプールに入れば14グラム程度の便がプールに溶け出していることになる。遊泳用のプールの衛生基準はこれらを前提として、塩素濃度0.4~1.00ppmを保つようにするなど定められている」と説明し、「この濃度では死滅までに時間のかかるウイルスもあるが、細菌の塊といえる便に比べれば、数ccの経血による感染リスクは大した問題ではない」と述べています。

参考記事:生理中のプール授業 医学、人権上問題は? 副読本に「大丈夫」の表記で半強制的に 「休む」選択肢必要

 

生理中、水泳選手はどうしてるの?

1年のほとんどを水着で過ごしている水泳選手はどのように過ごしているのでしょうか?

水泳歴20年以上の筆者がおこなった聞き取り調査によると、多くの水泳仲間は泳いでいる時に「タンポンを使っている」または、「特に何もしていない」という結果になりました。

ちなみに筆者は後者の「特に何もしていない」派です。

初潮を迎えて間もないときはタンポンを使用していましたが、挿入した時の感覚があまり好きではありませんでした。

さらに水着からタンポンの紐が出ていないかという心配があり、練習に集中できないと感じたこともありました。

そんな時に、先輩から「泳いでいるときは血ができないから大丈夫だよ」と聞き、それからはできる限り何もつけずに泳ぐようになりました。

泳ぐ前にプールサイドでストレッチなどをする時は水着にナプキンかタンポンを使って、泳ぐ前にそれらを取りシャワーを浴びてからプールに飛び込んでいます。

水から上がったときに最も注意が必要

水中では経血漏れを気にする必要はありませんが、問題は水から上がったときです。

水圧がなくなると経血が出やすくなるので、できる限り素早くシャワーを浴びて着替えるのが良いです。

もしレジャープールや海水浴など、何度か水中と陸を行き来するような場合はタンポンを使うのが無難でしょう。

タオルは万一に備えて濃い色のタオルを用意しておくことをおすすめしますが、多くの水泳選手は絞って何度でも使える「セームタオル」というものを使っています。

セームタオルとは水分を吸った後に軽く搾ることですぐに吸水性が復活する特殊な素材で作られた便利なタオルです。

1日に何度もプールに入ったり出たりする水泳選手にとっては水着と同じくらい大事な必需品です。

このセームタオルにはカラーバリエーションがあるので、「赤」を1枚持っていると多少経血がついても目立ちません。

同時にすぐ洗えば汚れも落ちるので洗濯も簡単ですし、スポーツ用品店で誰でも簡単に手に入れることができます。

タンポンがうまく使用できない方や、初潮を迎えたばかりの小・中学生などにはこれらのグッズを活用することをおすすめします。

参考記事:1枚あると超便利!セームタオルのおすすめとお手入れ方法

 

水泳時におすすめの新しい生理用品

前項では水泳時におすすめする生理用品としてタンポンをご紹介しました。

しかし清潔ではないと感じたり、紐が水着からはみ出ていないか気になったりと、完全に満足するものではありませんよね。

そこでおすすめしたいのが、ナプキンでもタンポンでもない新しい生理用品として徐々注目が集まっている「生理カップ(月経カップ)」です。

生理カップはタンポンと同じように膣に挿入し、膣内で経血を溜める生理用品です。

経血が溜まったら、カップを取り出して経血をトイレに流し、カップを洗って再度装着するだけです。

従来の生理用品と異なる大きな点は、「長時間連続で使用できる」「漏れにくい」「洗って繰り返し使用できる」ことです。

左:サイズ1(スモール)、右:サイズ2(ラージ)

スモールはタンポン約3本分、ラージはタンポン約4本分の経血を吸収できます。

経血量にもよりますが最大で12時間の連続使用が可能です。

泳ぐ前に装着すれば水から上がった後に急いで着替える必要もありませんし、タンポンの紐が水着から出てしまうことを気にする必要もありません。

水泳のみならず、タイトで露出の多いレオタードなどを着用する体操やフィギュアスケート、バレエ、ダンスなどをする女性にはぜひおすすめしたいです。

遠征や合宿のときには、荷物がかさばることもないため非常に便利です。

 

生理カップは今ではAmazonで簡単に手に入るものの、筆者が競泳選手として過ごしていた時には日本ではまだ存在しませんでした。

長年の競技生活で自分なりの対処方法は身につけていたものの、大会や合宿などのイベントごとに生理が重なることが多く、選手としては苦労をした方だと思います。

もっと早く生理カップがあればよかったのに、というのが本音です。

競技引退後は、趣味としての水泳が生活の一部になりました。

泳ぐ際はもちろんのこと、指導をする際はプールサイドに立つ時間が多くなるので、そんな時に生理カップが大活躍しています。

 

水泳時に生理カップをおすすめする4つの理由

あらためて、水泳時に生理カップをおすすめする理由をまとめました。

 

① プールサイドで経血が漏れない

公共のプールを使用する際は約1時間に1回は必ず全員がプールサイドに上がり、休憩を取らなければいけない時間があります。

プールサイドで、水着の上に洋服(ジャージなど)を着用することができれば、生理中でも他の人の目が気にならないのですが、ほとんどの公共のプールはプールサイドでの衣服の着用・持ち込みが禁止となっているのが現状です。

こんなときに、生理カップを使用していれば、経血漏れなどを心配することなくのびのびとプールサイドで過ごすことができます。

② タンポンの紐による不快感や心配事がない

タンポンの紐が常に体外に出ている状態のため、水中に入れば濡れるため、不快感があったり清潔ではないと感じることもありますよね。

また、紐が水着からはみ出てしまう可能性があるため、常に他人の目が気になります。

生理カップの場合には、紐がついてないため不快感や心配をすることなく、泳ぐことに集中できます。

③ タオルが汚れない

水圧のある水中では経血が出てくることはあまりないのですが、水から上がれば経血が出やすくなります。

シャワーや更衣室に行くまでの時間にタオルで抑えれば漏れを防ぐことはできますが、どうしてもタオルが汚れてしまいますよね。

経血の付いたタオルをきれいにするのも手間がかかります。

生理カップがあれば、急いで更衣室まで走ることもなく、タオルを汚すこともありません。

特にレジャープールの場合はさまざまな種類のプールを行き来したり、水着のままプールサイドで休んだりすることが多いので生理カップの活躍が多いに期待できます。

④ 生理中でも好きなデザインの水着が着用できる。

タンポンの紐が外に出ていないか気になる場合は、スパッツタイプのような丈のある水着を着用すればその心配を解消することができます。

しかし海水浴やリゾートでは、お気に入りのビキニなどの水着を堂々と着て遊びたいですよね。

生理カップであれば、生理中でも自分の好きな水着を、心置きなく着ることができます。

 

まとめ

木下綾乃

今回あらためて、生理中の水泳が、身体的にも感染の危険性に対しても、医学上問題はないという判断が専門家によってなされていることをご紹介しました。

月経痛が強かったり、経血量が多く血が流れ出てしまうことへの不安があったりして、「生理中は泳ぎたくない」という選択は尊重されるべきです。

一方で、「生理中でも泳ぎたい」という選択も尊重されるべきだと思います。

筆者は水泳が生活の一部という程に日々水と関わりながら生きてきて、自然に自分なりの対処法を身につけてきました。

しかしその経験を持っている人はごく一部でしょう。

今回、生理中の水泳を快適にする方法のひとつとして、生理カップという新しい生理用品をご紹介しましたが、他にも低容量ピルなどさまざまな対処方法があり、今後も多様に変化していくと思います。

常に自分自身で正しい情報を受け取り、その都度自分に適した対処方法を選択していく必要があります。

そして私たち大人は、女性の体や生理についての正しい知識に基づいて、10代の女子生徒たちを正しい方向に導いてあげることが大切だと思います。

 

生理カップについて参考記事:

新しい生理用品「生理カップ」とは?メリットとデメリット

生理カップにはサイズがある。初めての生理カップのサイズの選び方とは?

生理カップを使用しはじめたころ直面する問題点とその解決法をご紹介!入れ方編

生理カップを使用しはじめたころに直面する問題点とその解決法をご紹介!取り出し方編

生理カップの選び方 間違いやすい4つのポイント

人生で生理にかかる費用って一体どのくらいなの? 生理用品別でシミュレーションしてみた

生理カップとは みんなが知らない生理カップの歴史

 

インテグロ株式会社 アソシエイトディレクター・生理アドバイザー

1990年東京都生まれ。筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻、博士前期課程修了(研究分野:体育史スポーツ人類学)。在学中、カンボジアにてスポーツ指導や小学校体育科教育の普及にも従事。

3歳から水泳を始め、高校3年時に全国高校総体400m個人メドレー第3位。約18年間の競技生活を経て引退後、競泳選手として生理と向き合ってきた経験と、途上国生活で満足する生理用品に出会えず苦労した経験から、生理について他者と情報共有することや、生理用品の重要性を感じました。そして生理カップとの出会いをきっかけに、女性がより快適で自由に過ごせるように、そして分野問わず国内外でアクティブに活躍する女性たちをサポートしたいと思うようになりました。日本ではまだまだタブーとされている生理や女性の体についてもっとオープンに話せるような環境をつくっていきたいです。

・愛用の生理カップ:スーパージェニーのスモール(ブルー)

・愛用のサニタリーショーツ :ステインフリーのビキニ(ピンクドッツ)