毎月ちゃんと生理きてる?スポーツと生理にまつわる話。〜前編〜

スポーツは競技のみならず、健康の維持増進のために老若男女関係なく継続しておこなっている人が増えています。

適度な運動は生理痛をはじめとする生理前の不快な症状を軽減することにも有効であると言われていますが、日々厳しいトレーニングに耐え、年中身体を酷使しているアスリートは初経年齢が遅い傾向にあります。

さらに初経を迎えても、周期の乱れや無月経などの問題を抱えたりしているアスリートが多く存在しているのが現状です。

今回はスポーツと生理の関係について整理し、生理の正しい知識をあらためて確認していきましょう。

スポーツと生理

スポーツとは

現代のスポーツとは、ウォーキングやジョギングなどの軽い運動、陸上や競泳などの相手と競いあう競技など、目的や目標に応じて幅広く人々が楽しむことのできるものです。

そもそもの語源は諸説ありますが、ラテン語の「desportare」が語源といわれています。Portare「荷を担う」という語に否定の意味の「des」を付け、「荷を担わない・働かない」という意味になり、人々は「気晴らし」としてスポーツを捉えていました。

後に、古フランス語の「desporter」(気晴らしする・楽しむ)という語に変化し、現在の「Sport」という英語が広く使われるようになりました。

参考:

「スポーツの歴史第1章 1-1スポーツとは何か」笹川スポーツ財団

スポーツの捉え方

スポーツの語源は「気晴らし」という、精神的な意味合いも強く含まれていたことがわかりました。したがってチェスやトランプなどもスポーツに含まれ、当時の人々は仕事から解放された後に、運動のほかにもゲームなどの“スポーツ”を楽しんでいました。

スポーツを語源までさかのぼると、ただ身体を動かして汗を流すことや、己の限界まで身体を追い込むことだけがスポーツではないことがわかります。

現代であれば、カラオケやテレビゲーム、ウィンドウショッピングも立派なスポーツと捉えてもいいかもしれないですね。

では今回は取り上げる「スポーツと生理」の関係についてですが、ここでのスポーツは上記のスポーツではなく、相手と競い、勝敗をつける競技スポーツのことを指すことにします。そして、競技スポーツに取り組む人々をアスリートと表記します。

 

スポーツと生理の関係

現在、スポーツは競技のみならず、健康の維持増進のために老若男女関係なく定期的におこなっている人が多いとおもいます。

そして、適度な運動は生理痛をはじめとする月経前の不快症状を軽減することにも有効であると言われています。

その理由は、身体を動かすことに集中することで身体の諸症状を紛らわしたり、相手との交流や汗を流すことがストレス解消につながったりするからです。

もちろん、生理中に体調が悪いのに無理をして運動することはよくありませんが、身体を動かせるならば運動は生理中でも全く問題はありません。

しかし一方で、日々厳しいトレーニングに耐え、年中身体を酷使しているアスリートは初経年齢が平均よりも遅い傾向にあります。

さらに競技によっては、初経を迎えても、周期の乱れや無月経などの問題を抱えたアスリートが多く存在しているのが現状です。

今回はスポーツと生理の関係について整理し、生理の正しい知識をあらためて確認していきましょう。

 

アスリートは初経年齢が平均よりも遅い傾向にある

前述したように、競技種目にもよりますが、日々厳しいトレーニングに耐え、己の身体を酷使し続けている女子アスリートは、初経年齢が平均よりも遅い傾向にあります。

その原因の一つに「脂肪の量」が挙げられます。初経を迎えるにあたり、一定量の皮下脂肪の貯蓄が必要になりますが、アスリートは脂肪が蓄積しづらく、さらに厳しい練習によるストレスが原因で初経および毎月の月経が起こりにくくなっています。

特にこれらの現象は、体操・フィギュアスケート・陸上・バレエなどの体重コントロースが必要な競技に顕著に見られます。

 

参考文献:

「月経のはなし - 歴史・行動・メカニズム」 (中公新書) ,武谷 雄二(2012年)

 

「生理が来なくなって一人前?」ひとつのニュース記事より

一方、初経を迎えたとしても、その後生理が止まってしまうアスリートも少なくありません。このような現象を「続発性無月経」といいます。

 

先日、アスリートと生理にまつわる非常に興味深い記事を見ました。

「生理が来なくなって一人前」の幻想 ――10代スポーツ女子をむしばむ月経周期異常

Yahoo!ニュース 4月26日配信

 

記事の内容は、10代のスポーツ女子(クラブ活動なででスポーツをしている中高生)の生理に関する調査をしたもので、多くが無月経や月経不順になっていると述べられています。

さらにクラブ内には「生理があるほうがおかしい」という雰囲気があり、生理に対する間違った認識がスポーツの世界には存在するということ、心身の健康のためのスポーツが逆に、健康をむしばんでいる実態についてまとめられています。

実のところ、筆者も幼いころからスポーツに打ち込み、中高時代も毎日厳しい練習をしていたため、ある年は2回しか生理がなかったことがあります。

その頃は「生理は悪」「生理がない=頑張っている証拠」など、誰かに言われた訳ではないのに、私たちの間ではそのような雰囲気がありました。

「今月来なかったら病院に行こう」と母親と約束した月に生理が来て、その後は周期的にくるようになったのでよかったのですが、今考えるとあの頃は身体を酷使しすぎだったと思います。

 

なぜアスリートの無月経がいけないのか?

アスリート、特に陸上長距離や新体操などの競技で月経異常のある選手が多いことが分かっています。

では、10代で無月経が起こることに、何の問題があるのでしょうか。

それは「骨密度」です。

骨が最も成長する時期に、過度な体重制限やオーバーワーク等による低体重、無月経による女性ホルモンの低下によって骨がもろくなり、その結果10代にして「骨粗鬆症」になってしまいます。骨がもろくなると疲労骨折を起こしやすくなります。

加えて、10代で失った骨を再び平均値まで戻すこと難しく、加えて無月経による不妊など、さまざまな問題を抱えて今後も生きていかなければなりません。

驚くことに、これらの症状を訴える10代女子アスリートたちの全てが全国または国際規模の大会を目指す選手とは限らず、地方大会レベルの選手もこれらの問題を抱えています。

無月経のアスリートが栄養士から栄養指導を受けて実行した結果、周期的に生理がくるようになったという事例もあります。

日本のスポーツ界では、スポーツと生理の関係性についての間違った意識を正し、専門家による指導や社会的な体制づくりが早急に必要であるといえるでしょう。

 

さらなる問題が

前述した無月経が起きやすい競技(新体操・陸上長距離・フィギュアスケートなど)は、選手の無月経・低体重・骨粗鬆症の問題に加え、過度な食事制限によって摂食障害をも引き起こしやす傾向にあります。

実際に、フィギュアスケートの元日本代表でオリンピック入賞経験のある鈴木明子選手はかつて摂食障害であったことを告白しています。

さらに、日本でも人気が非常に高かったロシアのユリヤ・リプニツカヤ選手は拒食症により、まだこれからも活躍の期待がかかる中、19歳の若さで引退を表明しました。

周期的に生理がきている女性からすると、さまざまな不快症状の多い生理は憂鬱なものですが、女性として健康に生きていくためには必要不可欠なサイクルであることがよくわかります。

スポーツは時に人々を歓喜と熱狂に沸かせ、世界をも動かす強いパワーを持っていますが、その華やかな表舞台とは裏腹に、実際には将来の健康を犠牲にした危険と隣り合わせのアスリートたちが多く存在しているのです。

 

まとめ

今回は、生理とスポーツの関係についての記事を中心に、生理の大切さや正しい知識について考えてきました。

2020年に東京オリンピックを控えている日本のスポーツ界は、産婦人科医がスポーツ医学に参入するなど、早急に女性アスリートをとりまく問題について解決していく必要があると思います。

多くの競技スポーツの指導者は男性です。

これからは女性だけでなく男性も積極的に生理や女性の体についての正しい知識を身につけ、アスリートたちに適切な指導を行う必要があります。

これまでの長い歴史の中で生理はネガティブに捉えられ、「恥ずかしいもの」「隠したいもの」であり、それは現代でも変わっていないと思います。

少しでも男性と女性がお互いを理解できるように、ぜひこのブログを女性だけでなく男性にも読んでいただきたいです。

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毎月ちゃんと生理きてる?スポーツと生理にまつわる話。〜後編〜 に続く

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