東京YMCAにて「女性アスリートと生理」の講義を実施しました
2021年6月29日、当社の月経カップ&生理ケアアドバイザー 木下綾乃が昨年に引き続き、東京YMCA社会体育・保育専門学校の学生約120名に向けて「女性アスリートと生理」の講義を行いました。
東京YMCAは、日本で最初のスポーツ養成校であり、アスレティックトレーナー、フィットネストレーナー、スポーツインストラクターなど、社会体育の専門家を目指す社会体育専門課程と、保育士や幼稚園教諭を目指す保育専門課程に分かれています。
社会体育専門課程では在学中からスポーツ現場で実習をおこない、卒業後は全体の8〜9割の学生がスポーツ業界に就職します。
男女ともに生理について正しい知識を身につけることによって、将来パートナーや家族とよりよい関係を築くこと、そして、選手や生徒、会員さんのスポーツのパフォーマンス向上につながる新しい生理ケアの方法を理解することを目的に、「女性アスリートと生理」に特化した内容で約80分お話させていただきました。(コロナウイルス感染拡大の影響により、昨年同様講義を事前に録画した動画を学生が視聴するというオンデマンド形式で実施)
また東京YMCAの校内には、昨年の講義実施時に3種類の月経カップ「エヴァカップ」「スーパージェニー」「ディーバカップ」のサンプルを設置させていただき、現在でも学生の方々が自由にカップを見て触れられるようになっています。
実際に今回の講義に参加した学生からは、「学校の女子トイレに月経カップのサンプルや説明書があるものの、実際にやり方が分からず、月経カップにとても恐怖心がありました。しかし、講義で使い方を詳しく教えて頂き、月経カップの良さを知ることができました。これから挑戦したいです。」というコメントが寄せられました。
事前アンケートの実施
講義の内容を構成するにあたり、学生たちが生理についてどの程度理解しているのかを把握するために、女性向け・男性向けの2つのアンケートを作成し、先生のご協力のもと事前調査を実施しました。
まずは、男子学生の回答結果を一部紹介します。
上記の結果から、生理周期や生理の日数についての質問では、ほとんどの男子学生が「生理周期は1ヶ月に1回」「1回の生理は1週間くらい」であることは理解していることが分かりました。
しかしもう少し踏み込み、「生理期間中に出る経血の量」や「使用するナプキンの枚数」について質問すると、上記のとおり、回答がバラつき、正解率が低い結果となりました。
経血量については、80mlの回答がもっとも多かった昨年に比べて、今年は200mlや120mlの多い量に回答が集中。
それに対してナプキンの使用枚数は10〜20枚という回答が半分以上を占め、経血量とナプキンの性能(吸収量)がリンクしていない印象を受けました。
そのほか、「生理とは何か」という問いでは「子宮内膜が外に排出されること」というほぼ正解に近い回答があったものの、一方では、ただ「痛いもの」「辛いもの」と認識している学生がいたことから、ほとんどの学生が生理について曖昧またはほとんど知らないことが明らかになった。
次に、女子学生の理解度についてです。
生理について正しいものを答えてもらう項目では、初潮と閉経の年齢については90%以上の学生が正しい回答をしていましたが、一方で、半数以上の学生が「生理があれば何歳でも妊娠できる」と間違った回答をしていました。
また、約20%が「生理がスポーツのパフォーマンスに影響する」という質問に対して「影響しない」と認識しており、毎月生理と付き合っている女子でさえも生理についてあまり理解していない、間違った認識をしていることが多い印象を受けました。
普段使用している生理用品については、ナプキンとタンポンで7:3の比率でした。
また、タンポン派の33%の中から、タンポンをメインに使用している人を数えると、全体の4%にとどまり、ほぼ全員がナプキン派であることが分かりました。ちなみに月経カップを使用している学生はいないという結果でしたが、昨年に比べて「気になっている」「使ってみたい」という回答がいくつかあり、この1年間で月経カップの注目度が若い世代にも広がってきていることが感じられます。
しかしながら、月経カップを実際に使うとなると、まださまざまな疑問や不安を抱いている印象を受けました。
講義内容
事前調査の結果を踏まえて、本講義では、「生理とは」「生理とスポーツの関係」「アスリートにおすすめの新しい生理用品と、新しい生理ケアの方法」の3つのテーマに分けました。
第1章「生理とは」
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生理のメカニズムについて(女性ホルモン・月経周期・排卵・精子と卵子の数)
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生理中の心身の不調と対処法について(月経前症候群・生理前不快気分障害・生理痛)
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さまざまな避妊法や生理中のセックスについて(経口避妊薬・コンドーム・妊娠率)
イラストやスライドを用いて、経血=剥がれた子宮内膜であることを説明。
日本産科婦人科学会が定義している経血量の正常値(20ml〜140mlの範囲)を、色付きの水で紹介。個人差が非常に大きいことがわかる。
第2章「生理とスポーツの関係」
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アスリートが抱える生理用品の問題について(漏れる・蒸れる・ズレる)
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生理用品の紹介(ナプキンやタンポンの特徴とそれぞれのメリット・デメリット)
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生理中の睡眠の質の低下について(睡眠がパフォーマンスに与える影響)
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生理周期を考慮した練習計画の必要性について(海外女子サッカーチームの例より)
生理用品の紹介。ナプキンに20mlの色付きも水を垂らし、どのように吸収されていくのか実験。
吸わせたあとのナプキンは重量感たっぷりで、いまにも漏れそうだった。
ナプキンと同じように、タンポンでも20mlの色付きの水を吸わせてみると、数秒で容量いっぱいになり、下の部分から数滴垂れた。
水分を吸収させると、筒状だったタンポンが徐々に開いて平べったくなるという、タンポンの構造もわかった。
第3章「アスリートにおすすめの新しい生理用品と、新しい生理ケアの方法」
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アスリートにおすすめの「月経カップ」とは(特徴・種類・メリット)
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ナプキンいらずの吸収型サニタリーショーツ「エヴァウェア」とは(特徴・メリット)
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従来のケア方法と新しいケア方法の違い(生理用品の交換回数の比較)
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生理用品をアップデートしたアスリートの声を紹介
月経カップ(写真はスーパージェニーのスモール)の容量の紹介。20mlの色付きの水を入れても、まだまだ余裕があることがわかる。
講義を受けた学生たちの感想
講義終了後は、学生たちからフィードバックシートを提出してもらい、印象に残ったキーワードや、講義から学んだこと、感じたことなどについてひとりひとり共有してもらいました。感想を一部紹介します。
【男子学生の感想】
- 男女の性差を理解したうえで、指導することを大事にしていきます。女性アスリートの生理の周期に合わせたトレーニングプログラムという例がありましたが、そういうことを当たり前に、女性に負い目がないように工夫できたらと思います。
- これからトレーナーとして性別関係なく多くの方を指導していく中で、女性を担当することがあると思います。そういった時に今回学んだ生理についての知識を体現し、生理周期を考慮したアプローチができるようになりたいと思いました。女性自身からは言いづらいことかもしれませんが、全ての人の共通認識となって周りの人がサポートできるように考えを広めていきたいです。
- 将来子供が欲しいとなったとき、パートナーの生理状況について知っておかないといけないなと思いました。男性だからといって関係ないと思わずにパートナーの状態を把握し、気を配ってあげることがとても必要なことなのだと感じました。
- 高校で生理のことは学んでいたので少しはわかっていたのですが、生理中の不調や、生理用品の問題などは全然知らず、ハッとすることが多かったです。毎月生理用品を買うというのは、すごい負担になるのではないのかと思いました。
- 私は生理を経験したことがないので想像することしかできませんが、だからこそ男性は生理について理解を深めるべきだと思います。女性は生涯で約7年間も生理を経験するということを知り驚きました。しかし生理用品が年々良いものになってきていると聞いて少し安心しました。自分にとってまだ未知の世界なので、もっと理解をもっと深めていこうと思います。
- 今回の授業を受けるまで、正直、生理なんて自分たちには関係のないことだと思っていたけれど、生理の辛さや大変さを今回学んで、生理を知らない男性に生理の大変さを伝えていきたいです。
【女子学生の感想】
- 生理がどうやってでるのかは知っていたんですが、約40年くらい生理が続いて7年間も出血していることになると聞き驚きました。タンポンは使ったことがあっても、どうやって吸収するのか分かりませんでした。今回の話を見て聞いて初めて、吸収すると広がっていくこと知りました。
- 生理とスポーツは自分が思ったより関係しているんだなと思いました。生理用品もナプキンやタンポンだけじゃなく、新しく月経カップ、吸収型サニタリーショーツというものがあるということを知ることができ、これらを使うことでパフォーマンス向上に大きくつながると思いました。
- 生理については知っているつもりではいたものの、実際に今回のようにお話を聞くとまだまだ知らないことが沢山ありました。中学、高校でバスケットを行っていたのでその時に、月経カップやタンポンについて知っていたらもっとパフォーマンスを発揮することができたのかなと思いました。
- 生理についてこんなにも詳しく教わったことがなかったのでとても勉強になりました。初めて見る生理用品もあったので実際に手元に出して見せてくれてわかりやすかったです。月経カップの話を聞いたときはメリットが多いな、愛用している人がいるからいいものなんだろうなと思いました。
- 将来インストラクターになった時に、女子生徒が言いにくそうにしていたり、何か困っていそうだったら、私から声をかけてあげたいと思いました。また、その悩みをその子だけでなく、他の子の悩みも解決出来るように工夫して環境作りをしていきたいと思いました。
- 今まで、月経カップ怖くて使おうと思ったことがないけど、きのっしーのお話を聞いてとても便利なものだと理解ができました。ナプキンだとどうしても漏れてないか心配になったりムレるし、歩き方も変になるから、ちょっとチャレンジしようかと思います。
感想とまとめ
昨年に引き続きオンデマンド形式での講義だったため、学生の反応が見えないまま講義を録画し、配信することに不安がありましたが、講義後のフィードバックを見ると、想像以上に学生ひとりひとりが生理に対する理解や関心を深めてくれたことがわかり、私たちにとっても刺激や学びの多い時間となりました。
また、講義ではじめて学んだことを、将来の仕事やプライベートに活かすだけでなく、自分の周りの人たちにも教えてあげたい!というコメントも多く、非常にうれしく思います。
日本では、スポーツ指導者の生理に対する正しい知識が不足していることがたびたび問題視されていますが、ここ最近になって日本のトップアスリート・元アスリートたちが声を上げ、生理についての情報が発信されるようになりました。
指導者だけでなく、アスリート自身も生理を「自分ごと」として捉え、現場の状況や選手たちの意識は少しずつ改善されているように感じています。
ぜひ今後もこのような機会をさらに増やしていき、正しい情報をひとりでも多くの指導者やアスリートたちに届け、インテグロのミッションである「女性の健康課題を解決する商品やサービスを提供し、誰もが自分らしく活躍できる社会を作る」ことにつなげていきたいと考えています。