性交痛の原因は、腟の乾燥!? 症状別チェックで対策を考えて

性交痛は、セックスをはじめようとするときや、セックスをしているときの痛みのことを言います。

痛みを我慢していると、セックスをすること自体がイヤになってしまったり、怖くなってしまうことも…。

痛みの原因を知って、対策をしましょう。

文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

性交時に痛みを感じ、排尿時にはヒリヒリしてつらい…

性交時に痛い…、排尿時にヒリヒリすることがある…、自転車に乗ると擦れて痛い…などの悩みが…。

おもに、更年期世代から増えてくる不調です。

性交痛を感じる場所は、「腟の入口」と「腟の奥」の2つにわけられます。

 

① 腟の入口の痛み (外陰部や陰唇など、腟入り口周辺)

腟の入り口で感じる痛みは、外陰部や腟粘膜の萎縮、腟炎や外陰炎の可能性、またセックス時の精神的な恐怖や緊張などのトラウマが原因のこともあります。

外陰部や腟粘膜の萎縮は、更年期に女性ホルモンのエストロゲンの分泌が少なくなると、外陰部や腟粘膜が萎縮して、挿入時に痛みを感じやすくなります。

ほかに、シェーグレン症候群があります。

シェーグレン症候群は、目や口の乾きの症状(ドライマウス、ドライアイ)が顕著ですが、腟の乾燥も起こります。

シェーグレン症候群と診断されている人のなかにも、腟の乾燥症状をケアできずに、悩んでいる人が多い現状があります。

シェーグレン症候群の治療は、リウマチ内科や膠原病の専門医ですが、腟の乾燥の治療は婦人科でもできますので、悩んだら婦人科に相談してみてください。

また、外陰部、腟、腟両側にある分泌腺の炎症や性器ヘルペス、尿道の炎症でも痛みが生じる場合があります。

性感染症が原因となっていることもあります。

きちんと検査を受けて治療することで、痛みを改善することができます。

 

② 腟の奥の痛み (骨盤内で感じる痛み)

セックス時に腟の奥や下腹部に痛みを感じる場合、クラミジア感染症などで骨盤内で炎症が起こっている、子宮内膜症などで骨盤内の臓器に癒着を起こしている、卵巣腫瘍があるといった原因が疑われます。

これらの病気は、悪化すると不妊症の原因になったり、手術が必要になることもあります。

婦人科を受診して、原因を調べたほうがいいでしょう。

また、子宮頸がんは通常、早期にはほとんど自覚症状がありませんが進行するに従って異常なおりもの、月経以外の出血(不正出血)、性行為の際の出血、下腹部の痛みなどが現れてきます。

これらの症状がある方は、婦人科を受診して下さい。

 

このように、性交痛にはさまざまな原因があり、痛みの場所や原因によって治療が変わります。

自分の痛みがどこに起こっていて、どの程度痛いのかを把握して、婦人科を受診することが大切です。

性交痛は我慢する必要はありません。我慢することで、セックスに対して恐怖心を抱いてしまう女性もいます。

女性の体はデリケートです。

炎症や性感染症にかかっていたり、放置すると不妊症の原因となることもあります。

症状が長く続いたり、繰り返す場合には、早めに婦人科を受診しましょう。

 

更年期の性交痛は、症状別チェックをしてみて

更年期の性交痛

 

更年期の「① 腟の入り口で感じる性交痛」は、女性ホルモンのエストロゲンの低下で起こる腟の乾燥による萎縮が大きな原因です。

女性ホルモンのエストロゲンは、骨、血管、脳のほか、腟、尿道、膀胱の一部、皮膚、粘膜などにも重要な役割をもっています。

更年期障害、萎縮性腟炎、腹圧性尿失禁や尿もれ、過活動膀胱などとともに起こる性交痛は、エストロゲンの低下によるものです。

性交痛に加えて、以下の気になる症状はありませんか?

その症状によって、性交痛がなぜ起きているのかの可能性がわかります。

 

症状(1)目や口、腟が乾く、疲れやすいなど

シェーグレン症候群

更年期に発症のピークがあり、女性に多い自己免疫疾患のひとつ。

膠原病の関節リウマチなどと合併することも少なくありません。

 

症状(2) 腟の乾燥、ほてり、多汗、不眠など

更年期障害

更年期にエストロゲンが激減することでさまざまな不調が起こります。

特に閉経後、粘膜の乾きの症状は、顕著になることが多くあります。

 

症状(3) 腟の乾燥、不正出血、茶色っぽいおりものなど

萎縮性腟炎

別名、老人性腟炎。更年期以降、特に閉経後のエストロゲン減少が原因で、性交痛、ヒリヒリする痛みやかゆみなどの症状が特徴。老年期まで続きます。

 

症状(4) 腟の乾燥、頻尿、尿もれ

腹圧性尿失禁、過活動膀胱

せきやくしゃみなど、おなかに力が入ったときに漏れるのが腹圧性尿失禁です。

急に強い尿意を感じ、トイレに間に合わない場合が、過活動膀胱です。

 

性交痛はクリニックでどう治療する?

性交痛をケアするには、腟の乾燥を治療するために、局所(腟)に効くエストロゲン(ホルモン)剤の腟錠を腟に入れる方法があります。

エストロゲン剤の腟錠にはさまざまあり、症状に応じてエストロゲン含有量の多少を考慮して処方されます。

性交時の痛みだけでなく、性交時に出血がある人もいます。

なかには萎縮性腟炎を起こしていて、腟の周りが真っ赤になる人もいます。

更年期障害、萎縮性腟炎による出血にも、エストロゲンの腟錠が使われることもあります。

ただし、性交時の出血は、子宮頸がんなどの可能性もあります。婦人科を受診して医師に相談しましょう。

性交痛は、女性の問題だけでなくパートナーとの関係も影響します。

パートナーと症状について話し合ったり、心理カウンセリングを受けることが有効なときもあります。

 

腟の乾燥だけでない症状がある場合の治療は?

腟の乾燥だけでなく、ほてり、のぼせ、不眠、関節痛、頭痛など、更年期障害のさまざまな症状や、頻尿、尿もれなどの症状もある人には、全身に作用するホルモン補充療法(HRTという治療法があります。

更年期世代で、全身のホルモン補充療法(HRT)で使うホルモン剤には錠剤、パッチ剤、ジェル剤などさまざまあります。

皮膚に塗るジェル剤は、症状に応じて量を加減できるので便利です。

また、腹圧性尿失禁や過活動膀胱の症状がつらいときには、骨盤底筋群を鍛える体操やそれぞれに効く薬がありますので、婦人科や女性泌尿器科の医師に相談するとよいでしょう。

乳がんの既往があったり、ホルモン剤を使いたくない人には、漢方薬で治療することもできます。

また、最近はモナリザタッチという腟、外陰部CO2レーザー治療が出てきました。

炭酸ガスレーザーを腟壁や外陰部に照射することで、腟粘膜の線維芽細胞を活性化し、新たなコラーゲン生成を促して、粘膜に厚みと潤いが取り戻される治療法です。

血栓症、乳がん、子宮体がんなどで女性ホルモン剤を使えない人にも、行える治療法です。

 

自分でできるケアは?

腟や外陰部の乾燥が気になる人は、洗い過ぎの傾向があります。

洗いすぎは、若い世代でも大事な常在菌を取り除いてしまいます。腟や外陰部は石鹸でゴシゴシ洗わないようにしましょう。

特にエストロゲンが低下する更年期以降は、常在菌が少なくなり、バリア機能が低下する状態になりやすいので、一層注意が必要です。

デリケートゾーン専用の洗浄剤もあります。

ぬるま湯でやさしく洗い流す程度で十分です。ビデも使い過ぎないようにします。

性交時の潤い不足に使うジェル剤やデリケートゾーンに潤いを与えるスキンケア剤なども販売されています。

また、補正下着などで締めつけるのも、粘膜や皮膚が乾燥している人はよくありません。通気性のよい素材で、締めつけない下着を選ぶようにしましょう。

 

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