視覚障害者のための生理ケア:月経カップが選ばれる理由
2024.12.13生理用品の選択肢が広がる昨今、月経カップは視覚に障害を持つ人にとっても、快適で安心感のある選択肢として関心が寄せられています。
とはいえ、「目が見えなくても月経カップは使えるのか?」「漏れの心配はないのか?」「正しくお手入れがができるのか?」など、さまざまな疑問や不安を持つ方も多いのではないでしょうか。
実は、月経カップは視覚に障害がある人ならではの生理の困りごとを解消し、負担を軽減する多くのメリットがあります。
この記事では、月経カップを使うことによるメリットと注意点を、インテグロが行っているサポートの取り組みとともに紹介します。
目が見えなくても月経カップは使用できる
月経カップは、事前に適切なサポートを受けることができれば、目が見えなくても使うことができる生理用品です。その理由は、カップを使うときは視覚に頼る場面がほとんどないからです。
まず、腟などの女性器は体の中にあるため、誰にとっても見ることができない部分です。カップの挿入や取り出しは基本的に手指の感覚を頼りにおこなうため、何度か練習を重ねてコツをつかめば、目が見えない状態でも使うことは可能だと考えられます。
実際に、視覚に障害を持ちながら月経カップを愛用している人はいらっしゃいます。例えば、パラ水泳選手の石浦智美さんは、インテグロのサポートのもと以下の方法でカップデビューされました。
- カップを手に取り、形状や弾力を入念に確認し、カップの構造を立体的に理解する
- 折りたたみ方の練習と、自分の手を使った挿入や取り出しのイメージトレーニングをくり返す
この準備により、石浦さんはスムーズにカップを使い始めることができました。
現在ではカップが「自分の体の状態を知る手段」となり、経血量を触覚で把握できることから、漏れの不安が解消されたと語っています。詳しい体験談はこちらをご覧ください。
月経カップなら生理用品の買い物が不要
視覚に障害がある方にとって、生理用品の買い物や在庫管理は私たちの想像以上に負担が大きいものといえます。例えば、次のようなことが考えられます
- パッケージの記載内容が読めないため、製品の特徴がわかりにくく、商品選びがむずかしい。
- 買い物の際は店員に商品の場所や種類を聞かなければいけない。男性スタッフしかいない場合、うまく伝わらないことがある。
- 視覚的に在庫を管理できないため、常に生理用品の数を把握しておく必要がある。
月経カップは洗ってくり返し使えるため、こうした課題を一気に解決できます。
高品質な月経カップは数年間から10年間ほど使用できるため、買い物や在庫管理が不要になるだけでなく、荷物も減り、ゴミ捨ての手間もなくなり、長期的に見ればコストの節約にもつながります。
月経カップなら漏れる心配がほぼない
漏れへの不安は、目が見えない方々が抱える大きな課題の一つです。生理用品の交換のタイミングがわかりにくかったり、漏れていることに気づかない場合もあります。
月経カップは、正しく装着できれば、どんなに激しく動いても、寝ているときも漏れることはほとんどありません。さらに、ナプキンやタンポンの3〜4倍の容量があるため、生理用品の交換回数を大幅に減らすこともできます。
満杯にならない限りは12時間装着し続けることができるのも大きなメリットです。特に外出中は、漏れの不安やトイレを探すストレスも減らすことができます。
月経カップなら指で触れると経血量や粘度がわかる
ナプキンやタンポンは素材に経血が染み込むため、正確な経血量や粘度が把握できません。しかし月経カップは、指で触れることでそれらの情報が把握でき、新たな視点から健康管理ができるという大きなメリットがあります。
・カップの目盛りで量を把握できる
月経カップの内側には、凹凸のある目盛りがついているため、経血量を数値で把握することができます。自分の量を知っておくと、カップをリセットするタイミングが掴めるため、漏れる前に対処することができます。量の変化にも気付きやすくなり、健康管理にも役立ちます。
・指で粘度を確認できる
経血の粘度も指先で確認することができます。量と粘度の両方を確認できると、よりくわしく自分の生理の傾向を把握できたり、体の不調を早めに察知するきっかけになったりします。
吸水ショーツを併用するとさらに安心
月経カップを使うことで漏れの不安はほぼ解消されますが、吸水ショーツを併用することでさらに安心感を得ることができます。
吸水ショーツは、ナプキンよりも吸収面積が広く、体にフィットするため、特に以下のような場面で役立ちます。
・生理がはじまりそうなとき
ショーツを履いておくことで、急に生理が始まっても下着や洋服を汚す心配がありません。また、ナプキンを持ち歩く必要もなく、荷物を減らしつつ、ナプキンの消費量も抑えられます。
・量が多いとき、就寝中、外出時
量が多い日には、カップとショーツと併用することで、万一カップから経血が溢れてしまった場合にもショーツが吸収してくれるため安心です。特に、就寝中や外出中にカップをリセットができない場合にも便利です。
・生理の終わりかけ
量が減る生理の後半では、吸水ショーツだけで過ごすこともできます。カップとショーツを数サイクル併用するうちに、自分の生理周期や経血量のパターンがわかり、「何日目まではカップ、何日目以降はショーツのみ」という使い分けがしやすくなります。
吸水ショーツは洗ってくり返し使えるため、カップと同様に買い物や在庫管理の負担を軽減させます。
カップを使うのが不安な方も、まずはショーツから使い始めてはいかがでしょうか。履くだけでOKなので、誰でもすぐに使い始めることができ、ナプキン以上の安心感を得ることができると思います。
視覚障害者のための月経カップの使い方サポート
インテグロでは、視覚に障害のある方を含む、すべての人が月経カップを安心して使えるよう、対面型でのセミナーや月経カップ講座を定期的に開催しています。具体的なサポート内容は以下の通りです。
・女性生殖器の模型を使って体の構造を説明
インテグロで販売している女性生殖器模型を使用し、各部位を指でなぞりながら、腟や子宮、膀胱や腸などの女性器の構造やしくみを説明します。
・カップの構造や特徴を説明
カップを手に取っていただき、形状や弾力、サイズ感、リムやステム、目盛りなどの部位を手指で確認しながら、カップの特徴を説明します。
・挿入や取り出しの練習
折りたたみ方の練習のほか、自分の手を使った挿入と取り出しの練習方法を一緒に行い、実践に近い形で使い方のコツをお伝えします。
・不安や疑問へのサポート
生理のお悩みや、月経カップの使い方に関する不安や疑問について、個別相談を承っています。
・月経カップの購入サポート
インテグロの月経カップアドバイザーがヒアリングをおこない、個々に合う月経カップのメーカーやサイズを提案します。
・アフターサポート
経験豊富なスタッフが、その方の使用状況に合わせてアドバイスを行い、カップを快適に使えるようになるまでサポートします。
セミナーの詳細については、2024年2月に開催した視覚障害者向けの「フェムケア勉強会」のレポートをご覧ください。
まとめ
月経カップは、視覚に障害のある方々の生理の課題を解決し、より快適な生活を送るための可能性を秘めたアイテムといえます。
インテグロでは今後も月経カップを通じて、女性の身体や生理の正しい知識を伝え、誰もが快適に自分らしい生活を送れるよう、サポートを続けていきたいと考えています。
これらのセミナーや講座は、人数や時間、内容などは主催者や参加者のご要望に合わせてカスタマイズできます。都内に限らず、遠方での開催も可能*ですので、まずはお気軽にご相談ください。(*別途料金あり)