月経カップで腟がゆるむことはないの?
2024.12.10月経カップをこれから使おうかなと思っている方や、使い始めて間もない方から、「カップを使うことで腟がゆるむのでは?」という質問を受けることがあります。
結論からいうと、月経カップを使うことで腟がゆるむことはありません。
この記事では、その理由と、そもそも腟の状態が変化するとはどういうことなのかについてくわしく解説します。
月経カップの使用で腟がゆるむことはない
月経カップを使うことで腟がゆるむことがない理由には、月経カップと腟、それぞれの特徴にあります。
月経カップの特徴:
月経カップの本体は、柔らかいシリコーン素材で作られているため、腟に柔軟にフィットする構造になっています。装着しているときは、腟の形状に合わせてカップの形は自然な状態になっているため、装着中のカップが腟を無理に広げたりすることはありません。
腟の特徴:
腟は伸縮性と柔軟性のある筋肉組織でできているため、月経カップを取り出したあとは元の状態に戻ります。また、腟は入口が狭いものの、奥には、ニワトリの卵ほどの大きさのカップが入る十分な空間があるため、柔らかい月経カップ程度の負荷で、筋肉が伸びたり、腟の形が変わることはありません。
腟がゆるむってどんな状態のこと?
「腟がゆるむ」という表現は医学用語ではなく、明確な定義がありません。多くの場合、「腟がゆるむ」というのは、以下のような状態を指しています。
(1)腟や骨盤底筋の弾力が低下する
腟の弾力は、膀胱や子宮を支えたり、腟や肛門、尿道口を動かしたりするときに使う「骨盤底筋*」の状態が大きく影響します。加齢や妊娠、出産などによって骨盤底筋は弱りやすく、弾力が落ちると軽い尿漏れやお湯漏れなどの症状が出やすくなります。
*骨盤の底に位置する筋肉群。ハンモックのような形状をしていて、骨盤内にある子宮、膀胱、直腸を支える働きをしている。
(2)腟の締まりが変化する
閉経に向かう過程(更年期)で女性ホルモンは徐々に分泌量が低下していきます。すると腟粘膜のコラーゲンも減ってしまい、腟のハリや弾力が失われることがあります。また筋力も低下しやすくなるため、腟のゆるみを自覚する人が増えます。
これらの体の変化は月経カップの使用とはまったくの無関係で、加齢やホルモンバランスの変化、妊娠・出産によるものが主な原因です。
妊娠・出産による影響
腟や骨盤底筋の状態に大きく影響を与えるのが妊娠と出産です。主に以下のような影響があります。
(1)妊娠中の負荷
妊娠中は、子宮を支える骨盤底筋が長期間にわたって圧力を受ける状態になります。おなかの中の赤ちゃんが成長していくにつれて重みも増していくため、骨盤底筋はよりダメージを受け、弾力が低下しやすくなります。
(2)ホルモンの変化
妊娠中はリラキシンというホルモンが分泌されて、骨盤底筋や靭帯を柔らかくし、出産に備えます。この課程で一時的に骨盤底筋の弾力が低下したり、筋肉が伸びやすくなることがあります。
(3)出産時の負荷
経腟分娩では、産道となる腟が通常の3倍〜4倍ほどに広がり、直径が約10cmになります。骨盤底筋はそのときに大きなダメージを受け、出産後は筋肉の収縮が弱まることがあります。通常だと産後1〜2ヶ月ほどかけて骨盤底筋は回復していくケースが多いですが、意識的にトレーニングをすることで、回復、改善が早まります。
セックス時の「締まり」と骨盤底筋は別の話
次に、セックスにおける男性がよく話す「締まり」についてです。このことが気になって月経カップを使っても大丈夫?と心配している人もいるかもしれません。でも実は、セックス時の「締まり」と骨盤底筋の強さや腟のゆるみとは直接関係がありません。
セックス時には、女性の体の仕組みによって腟の奥が自然にぎゅっと締めつけられます。この「締まり」は、性的興奮時の神経反射や血流の変化によって起こる生理的な反応の一つで、腟がリラックスしている日常の状態とは異なります。
そのため、骨盤底筋が多少弱くても、性的興奮時の「締まり」にはさほど影響を与えないといわれています。「骨盤底筋のゆるみ」と「セックス時の締まりが悪い」という話を混同するのは間違いなのです。
月経カップを使用すると骨盤底筋のケアにつながる?!
月経カップは、腟に悪影響を与えるどころか、将来の健康のためのセルフケアアイテムとしても注目されています。
カップを着脱する際、腟を締めたり緩めたりする動作を行うため、自分の骨盤底筋の状態に気づくきっかけとなります。
また、使い続けることで骨盤底筋の動きを日常的に意識するようになり、「初めて自分の体と向き合えた」といった喜びの声や、長年悩まされていた尿もれや頻尿の症状が改善されたユーザーもいます。
尿漏れや頻尿はQOLを大きく下げる要因になるため、骨盤底筋の弾力を維持することは、快適な生活を送るために重要です。
ぜひ月経カップを活用しながら、自分の体と向き合ってみませんか?