生理カップは本当に安全なの? 産婦人科医・宋美玄先生に聞く、生理カップの「気になる」を、一問一答。

2019.07.29

第3の生理用品として、日本でも徐々に認知され注目を集めている生理カップ(月経カップ)。

その安全性や使い方など、生理カップを検討している方や、使い始めた方が気になる点について、産婦人科医・丸の内の森レディースクリニック院長の産婦人科医 宋美玄(そん みひょん)先生にお話を伺いました。

生理カップ(月経カップ)について聞く 産婦人科医・宋美玄先生

―宋先生はいつから生理カップを使用されているのでしょうか?使いはじめたきっかけを教えてください。

 

宋美玄先生(以下、宋):私は普段、低容量ピルやミレーナ*で生理をコントロールしているので、生理カップは2014年ごろ、妊活中に使用していました。きっかけは同じく医師の妹から勧められたことでした。彼女は常に地球にやさしい生活を追求しているので、限りある資源から作られたナプキンを使い捨てするということが耐えられないようです。最初は布ナプキンを使用していましたが、そのうちにカップに行き着いて、「めっちゃいいよ!」と私に勧めてきたのです。

使ってみると、生理中の蒸れやにおい、かぶれなどの心配がなく快適で、12時間もつけておけるので手術中も集中できます。さらに、ゴミが一切出ないので、トイレのゴミ箱の掃除をしなくていいのもうれしいですよね。「もっと早く出会いたかった!」と思うくらい、楽チンでとても便利なものだと思います。

私は、「生理カップ」「デリケートゾーン用の拭き取りシート」「布ナプキン」の3つを、生理のわずらわしさを解放する、女性のための「新・三種の神器」と呼んでいます。(笑)

 

*プロゲステロン(黄体ホルモン)を持続的に放出する器具を子宮の中に置く、子宮内避妊システムのこと。2007年に避妊薬として国内で承認された。子宮内膜を厚くさせない働きがあるため、近年では過多月経や生理痛等に対して有効な治療法として注目されている。

 

―「生理カップを取り出せなくなるのでは?」「生理カップが子宮の中に入ってしまうのでは?」などの心配をしている方もいるようです。実際にそんなことはあるのでしょうか?

 

宋:生理カップの装着位置はタンポンよりも下なので、正しく装着されていれば心配することはありませんが、カップをつけて動いたり寝たりしている間に、いつの間にかカップが腟の奥のほうに上がっていってしまうことがあるんですよね。ただ、子宮口というのは出産のときしか開かないようにできているので、体の構造上、生理カップが子宮の中に入ることはありません。

生理カップが奥に入ってしまって取り出しにくいときは、おなかに力を入れて、いきんで下に降ろすのが一般的です。少し寝転がったり、骨盤を上に向けたりして体勢を変えると、取り出しやすくなることもありますよ。

おすすめの月経カップ

―生理カップが使えない人や向かない人というのはありますか?

 

宋:はい、腟中隔(ちつちゅうかく)などの生まれつきの病気で、腟に仕切り状のものがある人は使えない場合もあると思いますが、それ以外では、生理カップの使用に適さないという人はほぼいないと思いますよ。もちろん、自分で自分の性器をさわったり、腟に自分の指を入れたりすることもできないような人には難しいと思いますけどね。

非常に稀だと思いますが、万一、自力で取り出せなくなった場合には、婦人科に来てもらえば簡単に取り出せるので安心してください。(笑)

 

―生理カップは12時間連続使用ができることがメリットのひとつですが、本来、外に排出される経血が腟内にとどまることは、衛生的に問題ではないのでしょうか?

 

宋:経血が腟内にとどまるといっても、長くて半日くらいですよね。カップを使っていなくても、寝ている間に腟内にたまった経血が朝まとまって出てくるなど、姿勢によって半日くらい腟内に経血が溜まることはあるので、心配する必要はありません。むしろ、生理カップを使うと、経血がほとんど空気に触れることがないため、酸化による細菌の増殖やにおいの発生を抑えられるので、ナプキンやタンポンより衛生的だと思います。

 

―生理カップを使うことによって、腟内で生理カップの溜まった経血が子宮のなかに逆流する心配はありませんか?

 

宋:意外かもしれませんが、経血は、通常、腟を通って排出されますが、実は9割の女性は、子宮から卵管を通って卵巣のほうに経血が逆流しています。これは、使用している生理用品に関係なく、誰でも日常的に起こっていることですので、生理カップを使用するから逆流しやすいということはありません。

 

―タンポンを長時間使用するとTSS(トキシックショック症候群)のリスクが高まるといわれていますが、生理カップにもTSSのリスクはあるのでしょうか?

 

宋:生理カップもTSSのリスクがまったくゼロとは言えませんが、使用されている素材の違いからタンポンより安全だと思いますよ。タンポンは繊維でできているので、長時間使用することで細菌が繁殖しやすくなります。タンポンは実際に使ってみるとよく分かると思うんですけど、長時間使用して取り出したときにけっこう臭いますよね。一方で、エヴァカップやスーパージェニーなどの生理カップに使われている素材は、心臓弁やカテーテル、胃瘻(いろう)用チューブなどにも使われているものと同じ医療用シリコーンなので、細菌が繁殖しづらく臭いも出にくい特徴があります。

最近の研究では、生理カップもTSSにつながる可能性があることがわかってきているようですが、これまで発症した数千ものTSSの症例のうち、生理カップに関連する症例は2件だけです。また、発症した2件のケースは、いずれも数日間カップを腟内に放置していたとのことです。どの生理用品にもいえることですが、生理カップを使う際には、感染予防のために、使用方法を守ることや手を洗って清潔にしてから使用するということが重要です。

関連記事:生理カップがTSS(トキシックショック症候群)を引き起こす!?

タンポンと生理カップのTSSリスク

―外出先のトイレでは、生理カップを取り出して再挿入するときに、水洗いできないのですが、衛生的に問題ないでしょうか?

 

宋:公共トイレでは個室に洗面台がついていることは少ないですよね。水洗いができない場合には、トイレットペーパーやデリケートゾーン用ウェットティッシュでサッと拭いて再挿入しても問題ありませんよ。

腟は決して無菌状態ではありません。腟のなかには口の中と同じようにたくさんの常在菌が存在し、外部から病原菌が入ってくるのを防いでくれているんですよ。この腟の自浄作用が、子宮を清潔に保ってくれています。

例えば、セックスをするときを思い出してみてください。パートナーがあなたの体に触れる前に、きちんとシャワーを浴びたり手を洗ったりすることはありますか?セックスのときに腟がどれだけの菌にさらされているかを考えてみると、自分の腟内に入っていた生理カップを再度挿入することについて、それほど心配する必要がないことが理解できますよね。

関連記事:外出先の公共トイレで生理カップはどうやって交換するの?

 

―生理カップを長年使用すると、腟が圧迫されて広がってしまうことはありますか?大きいサイズのカップを使っている私は、腟がゆるいのでしょうか?

 

宋:生理カップによって骨盤底筋が傷ついたり、腟が伸びてしまったりすることはありません。また、自然分娩の出産を経験すると、腟はある程度ベースが引き伸ばされるので、ラージサイズのカップが適していると思います。

多くの人は、セックスのときの腟の動きと関連づけて、男性から「腟がゆるい」と思われたくないと心配しているんだと思いますが、そもそもセックスのときは、感じたりオーガズムに達したりすることで、腟がぎゅーっと締まります。普段の腟の状態とセックスのときの腟状態は全く別の話だということをぜひ理解してほしいですね。

 

―セックスの経験のない人が生理カップを使うことはできますか?処女膜は破れてしまうのでしょうか?

 

宋:10代でも生理カップを使っている人もいますが、セックスの経験のない人や腟に自分の指を入れることに抵抗がある人はちょっと難しいかもしれませんね。ただ、月経カップを使ったことのある人の方が、初めてのセックスに対する恐怖感や不安が少なくなるかもしれません。考え方によってはメリットもあると思います。

処女膜については、生理カップを使うことで、裂けることはあるかもしれません。でも、そもそも処女膜とは、腟の入り口付近になる穴の空いたひだ状の粘膜のことで、初体験をする以前にすでに処女膜が裂けている人も多いので、裂けていない処女膜が処女の証、ではないと思います。

日本ではまだまだ生理カップの存在を知らない産婦人科の医師や看護師も多いのが現状です。女性がより快適に過ごすことができる新しい生理用品の選択肢として、生理カップがもっと広まればいいなと思っています。私のクリニックにはサンプルも置いてありますので、実物を見てみたいという人はぜひお声がけください。

生理カップ(月経カップ) 産婦人科医師 宋美玄先生

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産婦人科医、医学博士。1976年、神戸市生まれ。2001年、大阪大学医学部卒。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院(胎児超音波部門)留学を経て、2010年から都内で産婦人科医として勤務。診療やセックスに関するカウンセリングのかたわら、書籍の出版や雑誌連載、テレビ・ラジオへの出演等で、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。2012年、2015年に出産した2児の母。

主な著書に、「産科女医からの大切なお願い 妊娠・出産の心得11カ条」(無双舎)、「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)、「幸せな恋愛のためのSEXノート」(ポプラ社)、「ずっとずっと愛し合いたい セックスしつづける男と女のルール」(幻冬舎)など。