20代~40代に最も多い子宮頸がん。正しい予防法とは?
2020.06.24婦人科のがんで、最も多いのが子宮がんです。
子宮がんには、子宮頸がんと子宮体がんがありますが、このふたつは、原因も発生する場所も全く異なるがんで、このうち20代~40代という若い世代に多いのが子宮頸がんです。
子宮頸がんは予防できるがんのため、妊娠、出産の可能性がある若い世代だからこそ、子宮頸がんの正しい予防法と早期発見法を知ってください。
子宮と命を守るために。
文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
子宮頸がんは、自覚症状では早期発見は難しい…
子宮頸がんは、20歳代後半から40代までの罹患率が高く、40代がそのピークです。
そのあとは、減少傾向に向かいます。
がんというと、年齢が上がるほど多くなると思いがちですが、子宮頸がんは例外です。
罹患率も、死亡率も20代から40代に増加しています。
日本では、年間約11,283人の女性が新たに子宮頸がんにかかります。
また、子宮頸がんで亡くなる方は年間約2,871人もいるのです。*
子宮頸がんは、子宮の入り口にある子宮頸部という場所に起こります。
子宮の入り口付近なので、普通の婦人科の診察で発見されやすいがんですなのですが、早期のうちには自覚症状はほとんどないため、自覚症状だけで早期発見することが難しいのです。
早期に発見すれば、治療しやすく治りやすいがんですが、進行すると治療が難しいことから、予防と早期発見が極めて重要ながんです。
*国立がん研究センター 地域がん登録全国推計値2016年(罹患数)、2018年(死亡数)上皮内がんを除く。
原因は、性交渉によるウイルス感染です
まず、子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因ということを知っておきましょう。
HPVは性交渉で感染しますが、ごくありふれたウイルスですから、感染そのものはまれではありません。
約80%の女性が一生涯で一度は感染すると言われています。しかし、感染しても多くの場合、自然に排除されます。
ところが、なんらかの原因で感染が継続すると、子宮頸がんへと進みます。
喫煙も、子宮頸がん発生の危険因子です。
子宮頸がん検診の中身とは?
子宮頸がんを予防し、早期発見する方法には、まず検診があります。
子宮頸がん検診は、一般では「子宮がん検診」と呼ばれていて、子宮頸部から小さなヘラやブラシなどで細胞をこすり取り、異常な細胞の有無を調べる「細胞診」という方法で行われています。
この細胞診の検査は、約1~2分で終了し、リラックスして力をぬけば、あまり痛みはありません。
検査後、ほんの少量出血することがあるくらいです。
この細胞診による子宮頸がん検診は、異形成(前がん病変)といって、がんになる前の病変も発見できます。
この段階(高度異形成)で見つけて治療すれば、がんになる前に治せます。ですから、検診が予防にもなるのです。
子宮頸がん検診を受けるのは、20歳から2年に1回。
予防のためには、定期的に検診を受けることが大切です。
日本女性の検診受診率は低く、先進国では最低の割合のため、子宮頸がんで亡くなる人が減っていないのです。
もし、何かの症状があって婦人科を受診した場合は、子宮頸部の「細胞診」を保険診療で行えることもあります。
また、人間ドックのオプションになっていることもありますので、この2年間、受けていない人はぜひ受けてください。
異常な出血やおりものの異常などが続くようであれば、検診結果に異常がなくても、産婦人科を受診して、詳しい診察を受けることも忘れないでください。
検診+ワクチンで子宮頸がんは、ほぼ完全に予防できる時代です
子宮頸がんは「検診+ワクチン」でほぼ完全に、予防できる時代になっていることを知っていますか?
2009年には子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)がやっと日本でも接種可能になりました。
がんが予防できるなんて、画期的なことです。
世界中100か国以上の女性たちは、検診とワクチンで子宮頸がん予防を行っています。
大切なのは、ワクチンだけではほぼ完全な予防にはならないということです。
必ず、子宮頸がん検診も2年に1回は行なうことが大切です。
子宮頸がんの原因は、性交渉によるヒトパピローマウィルス(HPV)の感染です。
HPVは全部で100種類以上あり、がんになるものが約15種類。
当時、ワクチンで予防できるのはこのうちHPV16型とHPV18型の2種類でした。
この2種類は、全部の子宮頸がんのうちの約70%を占めています。
しかし、ほかのHPVタイプのがんは予防できません。ですから、検診も組み合わせることが大事です。
HPVワクチンは、中高校生が接種するものと思っている人も少なくないと思いますが、大人の女性にも有効で、20歳以上の大人の女性も接種するメリットがあると言われています。
性交渉を行なう前、HPV感染前の子どもたちに接種することはとても大事です。
でも仮に今、HPVに感染している大人でもHPVワクチンは有効なのです。
子宮頸がん20~30代女性の約70~80%に見つかっている16型と18型
がん化するHPV 16型とHPV 18型の2種類は、子宮頸がんを発症している20~30代の女性の約70~80%から見つかっています。
20代~40代の日本女性では、HPV16型、HPV18型の両方に感染している人はほとんどいないと言われています。
たとえ、どちらかに感染していても、ワクチンを接種していればもう一方の感染は防げます。
そして、多くのHPV感染は一過性で、しばらくすると免疫力で自然に消滅します。
ワクチンはHPVが消滅したあとの再感染を防ぐこともできるのです。
このHPVは、性交渉のある女性の80%以上が50歳までに一度は感染を経験すると言われているほど、ありふれたウイルスです。
ですから、性交渉があれば、何歳でも感染する可能性はあります。
中高生のHPVワクチン接種は見合わせたまま…
ところがこのワクチン、今日本でなかなか接種できない状況にあります。
発展途上国を含む全世界100カ国以上でHPVワクチンは現在も接種されているのに、日本だけが接種しにくい状況にあるのです。
日本では2010年から、中学1年~高校1年までの女の子に、公費助成で無料ワクチン接種が始まりました。
しかし2013年、厚生労働省では接種のあと原因不明の体中の痛みを訴えるケースが30例以上報告されていて、当時は回復していない例もあったことから、全国の自治体に対して積極的な接種の呼びかけを一時中止しました。
そして現在も、一時中止したままです。
ただ、この判断は医学的な統計的根拠に基づかない日本の政策決定であることから、多くの非難を浴びています。
日本産科婦人科医会、学会、小児科学会ともに、早期の接種再開を何度も厚労省に要望していますが、いまだに中、高校生の公費助成のHPVワクチン接種は再開されていません。
また当時、原因不明の体中の痛みを訴えた人も、その大部分は、改善しています。
このままでは日本女性だけが子宮頸がんにかかってしまう…
WHO(世界保健機関)では2015年12月に声明を出し、世界の中で日本だけが接種の勧奨を中止していることに対して、日本を名指しで非難しました。
「日本の若い女性は、本来なら避けられるはずのHPV(ヒトパピローマウイルス)の脅威に暴露されている、“薄弱な根拠”に基づく政策決定は、安全で効果的なワクチン使用を妨げて、結果として真の被害を招く可能性がある」と厳しい見解を示しました。
WHOが1国のみを名指しで非難することは異例のことです。
日本産科婦人科医会、学会も、なんとか早い積極的接種再開を望むとの声をあげています。
世界中でHPVワクチン接種が行われているにもかかわらず、このままでは、日本だけにHPVが蔓延して、日本女性だけに子宮頸がんが増える状況になっていて、亡くなる女性もいまだに増えています。
子宮頸がんを予防するHPVワクチンは今、打てないの?
「HPVワクチンは、打たないほうがよいのですか?」
「HPVワクチンを1回接種しました。あと2回打たなくてはいけないのだけれど、どうしたらいいの?」
という不安の声が聞かれます。
現在では、原因不明だった体中の痛みなどの重篤な副反応とHPVワクチンとの因果関係はなかったということがわかっています。
ワクチンとの因果関係が疑われていた起立性調節障害や複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、中高生にもともと多い症状で、HPVワクチン接種をしなくても同じ割合で発生していることがわかりました。**
**第6回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 資料より
副反応のリスクを減らすためには?
HPVワクチンの接種で、重篤な副反応が起こる確率は、10万接種あたり0.01~0.2例という少ない発生数です。
副反応のリスクを減らすためには、痛みに弱い、緊張しやすい、失神しやすい人は、ベッドに横になった姿勢で接種してもらい、接種後、院内で30分は休むなども大切です。
それでも不安が大きい人は無理せず、積極的接種勧奨の再開まで待ってから打つ、ということも対策のひとつです。
不安があると緊張して痛みを強く感じ、副反応のリスクが増す可能性があるからです。
子宮頸がん予防を本気で考えるなら…
先ほどの、「HPVワクチンは、打たないほうがよいのでしょうか?」という不安の声がありましたが、これに対する答えは、「いいえ」です。
子宮頸がんとHPVワクチンのことを知って、子宮頸がんを予防したいという気持ちがあるなら、接種したほうがよいと言われています。
さらに、「HPVワクチンを1回接種。あと2回打たなくてはいけないのだけれど、どうしたら?」という声に対する答えは、「最初からやり直す必要はない。」です。
長期間、接種間隔が空いてしまった場合の効果を検討したデータはなく、各回の接種間隔がのびた場合、どの程度まで大丈夫なのかといった具体的な期間はないものの、残りの回数を接種すればいいと言われています。
HPVワクチン接種の相談ができる婦人科や内科、小児科で相談にのってもらってください。
大人の女性のHPVワクチン公費助成は、最初から行われていませんので、自費で支払うことになりますが、おもに婦人科や内科クリニックで希望すれば、接種可能です。
HPVワクチンは、肩に近い腕の筋肉に、半年の間に3回接種します。
費用は、自費なのでクリニックによって違いますが、3回で5万円くらいが多いようです。
HPV16型、18型の2種類の2価HPVワクチンに加え、性感染症である尖圭コンジローマも一緒に予防できる16型、18型に6型、11型が加わった4価ワクチンもあります。
そして、2020年5月、9種類のHPVを予防できる9価ワクチンが日本でもやっと厚労省に承認されました。
欧米に遅れること約5年、日本でもやっと9価ワクチンが認可に
9価ワクチンは、世界標準のワクチンで、日本では承認審査が止まっていて、申請から5年でようやく認可されました。
9つのHPV型(6、11、16、18、31、33、45、52、58 型)をターゲットとして予防できるのが9価ワクチンです。
アメリカでは2014年12月、EUでは2015年6月に承認されたこのワクチンは、日本で発生している子宮頸がんの90%を防ぐことができます。
やっと日本でも、欧米諸国と同レベルのワクチン接種で、命と健康を守れるようになりました。
海外ではすでに、HPVの感染率が低下し、前がん病変も減少、子宮頸がんの罹患率の低下も報告されるようになっています。
さらに、子宮頸がんの90%以上の予防が期待できる9価ワクチンが主流となり、女子だけでなく男子へのHPVワクチン接種も広がっています。
特にこれから妊娠出産を望む女性は、正しい情報を知って、ワクチンと子宮頸がん検診で、子宮頸がんを予防してください。
子宮頸がん予防(HPV)ワクチン相談窓口のある全国のクリニック
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