避妊に失敗した!望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬アフターピルとは
2019.01.09避妊法として一番知られているものはコンドーム。
失敗率は約2%といわれていますが、専門家によると、その数値は最も理想的な使い方をした場合だそうです。
日本産婦人科医会の資料からも、実際には一般的な使い方でコンドームを使用した場合では、100人のうち2〜15人が妊娠したと示されています。
コンドームは避妊具とされていますが、実際には性行為による感染症を防ぐためのものだともいわれています。
コンドームをつけていれば妊娠しないと思っていた多くの人にとっては驚きですよね。
また、日本では今、1年間で約16万件の人工妊娠中絶が行われています。(厚生労働省 平成 29年度衛生行政報告例の概況のデータより)
そこで、万が一避妊に失敗してしまった場合のために、ぜひ知っておきたい「アフターピル(モーニングピル、緊急避妊薬)」についてご紹介します。
参考資料:女性の健康推進のためのホルモン療法経口避妊薬(OC)承認11年を経過して ~避妊,月経困難症,ホルモン補充療法など(日本産婦人科医会資料)
緊急避妊薬アフターピルとは?
アフターピル(モーニングピル)とは妊娠を避ける薬のことで、避妊に失敗した場合や無防備な性行為をしたあとに服用します。
妊娠を望まない人たちにとっての最終手段ともいえるでしょう。
アフターピルは、定期的に服用し排卵を抑制する「低容量ピル」と同様のホルモン剤ではありますが、用途や服用方法は大きく異なります。
日本ではコンドームによる避妊が最も一般的な方法ですが、100%避妊ができるわけではないことは先ほどお伝えしました。
コンドームを正しく使えなかったときや破れてしまったとき以外にも、ある日突然性犯罪に巻き込まれてしまうこともあるかもしれません。
そんな時に、アフターピルの存在を知っていれば最悪の事態を回避し、自分の身を守ることができます。
今回は望まない妊娠を避けるための薬「アフターピル」の効果や使用方法、使用する際の注意点、入手方法などついてみていきましょう。
アフターピルはどんなときに必要なの?
アフターピルは主に避妊に失敗したり、性犯罪に巻き込まれたりした際に使用します。
考えられる具体的なケースは以下のような場合です。
・コンドームが破損した(破れた・穴が空いた)
・コンドームが脱落した(性行為中に外れていたことに気付かなかった)
・避妊をせずに無防備な性行為をした(コンドームなしの膣外射精)
・相手が避妊に応じてくれなかった
・性行為を強要された(レイプなどの性犯罪に巻き込まれた)など
このようなケースを体験し、妊娠を望まない場合は72時間(3日)以内に服用することが必要です。
毎回コンドームを使用して避妊を心がけていたとしても、このようなトラブルに見舞われる可能性は誰にでもありますよね。
他人事と思わず、万一に備えて自分を守る方法を知っておくことは重要です。
服用方法と注意点
日本でアフターピルを手に入れるためには医師の診察と処方箋が必要なため、薬局などで手に入れることは現段階ではできません。
処方される薬は病院によって異なりますが、国内では副作用が少なく、服用の回数が少なくて済む「ノルレボ」が処方されることが多いと思います。
このルノレボは性行為後72時間(3日)以内に服用する必要があり、早ければ早いほど効果的です。
そう考えると、避妊失敗などのトラブルが起きたあとは素早い行動が求められますよね。
薬によっては2回に分けて服用するものや、120時間以内に服用が求められるものなどさまざま。
服用の前には医師からの説明をきちんと聞き、確認することが大切です。
また、ピルというと副作用が心配という方もいるのではないでしょうか。
ごく稀ですが、服用後に吐き気やめまい、頭痛などが起きる可能性があるようです。
もし服用後2時間以内に嘔吐してしまった場合は再度服用が必要になることもあるため、こちらに関しても事前に医師に相談・確認するようにしましょう。
アフターピルの作用の仕組み
アフターピルはホルモン剤です。
服用することで体内のホルモンバランスを変化させ、妊娠を防ぎます。
具体的に体内で起こる作用を整理すると以下の通りです。
①卵巣から卵子が排出する(排卵)のを抑制して、精子が着床するのを防ぐ。
②子宮内膜の状態を変化させて受精卵が子宮内で成長し始めるのを阻止する。
これらの薬の効果は一時的なもののため、将来の妊娠に影響することはありません。
しかし、薬で強制的にホルモンバランスを変化させるため、身体には大きな負担になります。
生理周期を乱すことにも繋がるため、頻繁に使用することはおすすめできません。
また、服用後に再び無防備な性行為を行った場合、それをも防ぐということはできないため注意が必要です。
100%妊娠を回避できるわけではない
現在、主に使用されているアフターピルの避妊率は約97~99%とされており、妊娠が99.9%防げる低用量ピルと比較すると、避妊率は低いといえます。
アフターピルは中絶するための薬ではないため、服用すれば100%妊娠を防げるという魔法の薬ではないことを覚えておきましょう。
例えば、受精卵が着床してしまってから服用した場合は、妊娠が成立してしまうこともあるそうです。
生理周期(排卵周期)や服用のタイミングによっては妊娠を避けることができない場合もあるので、服用すればあとはもう安心!というわけではありません。
しかし、何も対処せずにただただ生理が来ることを祈るよりは、アフターピルを服用した方がはるかに自分の身を守ることができます。
妊娠を望まないのであれば、たとえ可能性が100%でなくても服用するべきだと思います。
服用後の注意点
アフターピルは強制的に身体のホルモンバランスを変化させるため、本来の生理予定日がくるってしまう可能性が高いことを念頭に置いておきましょう。
個人差はありますが、服用後しばらくは生理周期が安定しないこともあるようです。
まず、服用後1〜3週間以内に生理のような出血が起きます。(早い人は3日ほどで起こることもある)
これを消退出血と言いますが、服用後の消退出血は通常の生理よりも少量であったり、期間が短かったりと症状はさまざまです。
生理周期に関しては早まったり、逆に遅れたりと両方の症状が起こりうるため、まずは3週間待ってみましょう。
しかし、出血が確認されたからといって100%妊娠を避けることができたというわけではありません。
服用後の出血が消退出血なのか、それとも不正出血なのか、着床による出血なのかというのは一目で判断するのが難しいからです。
完全に妊娠を避けることができたかどうかについては、服用してから3週間後に妊娠検査薬で判断することが望ましいといわれています。
もしも、妊娠の可能性が高いと判断した場合は病院を受診するようにしましょう。
アフターピルの入手方法
日本では、アフターピルの服用には医師の診断と処方箋が必要です。
まずは近くで取り扱っている病院があるかどうかを速やかに調べることから始めましょう。
地域によっては、土日祝日や夜間まで処方をしてくれる病院もあるため、たとえ長期休暇(年末年始やお盆など)や週末に避妊に失敗したとしても、諦めずに探してみてください。
アフターピルの処方に関して年齢制限はありません。
生殖が可能だと判断されれば処方してもらえる病院がほとんどのため、未成年の場合も入手することが可能です。
アフターピルに必要な費用
アフターピルの費用は、薬の種類や病院によって異なります。
ノルレボを例に挙げると、初診料等含めて10000〜15000円ほど。
決して安い金額ではありません。
緊急で現金の持ち合わせがない場合は、クレジットカード支払いが可能な病院もあるので焦らずによく調べてみましょう。
パートナーがいる場合は費用をどちらが負担するのか(または折半するのか)を話し合う必要があると思います。
病院に行くのも服用するのも女性側ですが、避妊に失敗したことについては男性にも非がありますよね。
処方されて思ったよりも高額なことに驚き、果たしてそれを相手に請求しても良いのか…とためらう女性もいるでしょう。
しかし、妊娠をしたあとに出産を望まない場合は、子宮の中を器具で掻き出す「人口妊娠中絶手術」を行うことになります。
この手術は病院や時期(胎児の成長過程)にもよりますが、10〜15万円程度、場合によっては30〜50万円近くになることも見込まれ、これらは全額自己負担です。
ごく稀ですが、掻き出す際に器具で子宮に穴が開いてしまう事故も起こっています。
アフターピルと比べると費用だけでなく、身体にも、そして心にも負担のかかるものであることを念頭に置いておきましょう。
参考記事:「医師が解説!人工妊娠中絶手術の基礎知識」, 産科医:竹内正人/All About暮らし
まとめ
アフターピルは、欧米では承認薬が2000年前後から販売されていますが、日本では10年ほど遅れて2011年に承認薬が発売されました。
アフターピルについて先進国では「知らないのは愚か、知らせないのは罪」といわれており、フランスでは高校生に養護教諭が無料で配布できるようにして認知度を高めたり、アメリカでは処方せんなしでドラッグストアなどで買うことができます。
緊急の薬にもかかわらず、日本では医師に処方してもらわないと入手できないのは非常に不便ですよね。
近年では日本でも一般医薬品として取り扱う動きが高まっていますが、なかなか実現しないのが現状です。
万一のためにアフターピルに対する正しい知識を身につけておくことは必要ですが、最も大切なことはアフターピルを使用することがないように、日頃から避妊に対する意識を持つことです。
現在ではコンドーム以外にも、低用量ピルや子宮内避妊具などの確実な避妊の選択肢があります。
「自分の身は自分で守る!」という強い意識を持ち、あらゆる角度から避妊についての知識と理解を深めておきましょう。
くれぐれも、その場の雰囲気に流されて後悔しないようにしましょうね。
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参考記事:
「あなたに知っていて欲しい緊急避妊のこと」, 一般社団法人日本家族計画協会
「緊急避妊薬を家庭の常備薬に!医師が語る理想の使い方と入手法」, 医師:久住英二/ダイアモンドオンライン
「【医療監修】アフターピル(緊急避妊薬)とは?仕組みや効果、副作用」,医師: 清水ほなみ/mamari