紙ナプキンの化学物質は危険?オーガニックのほうがいい?産婦人科医・宋美玄先生に聞く、賢いナプキンとの付き合い方とは

2019.08.05

コンビニやドラッグストアなどでも売られ、日本で最も入手しやすい生理用品であるといえる、紙ナプキン。吸収力やつけ心地に優れたものが多数販売されている一方で、環境や健康の意識が高まった昨今は、オーガニック製のものも注目を集めています。

紙ナプキンとの上手な付き合い方について、丸の内の森レディースクリニック院長の産婦人科医 宋美玄(そん みひょん)先生にお話を伺いました。

紙ナプキンの化学物質は危険? 産婦人科医師 宋美玄先生

―日本で生理用品といえば、紙ナプキンが一般的ですが、健康や環境への意識が高まった今、紙ナプキンに高分子ポリマーなどの化学物質が入っていることで、体に影響がないか心配して、オーガニックの紙ナプキンやタンポンを求める人がいます。実際にはどうなのでしょうか。

 

宋美玄先生(以下、宋):化学物質の影響は全くありません。「高分子ポリマーや有毒物質が皮膚から吸収され、子宮内膜症や子宮筋腫などの原因となる」などは、非科学的な眉唾です。高分子ポリマーは、分子量が高すぎて皮膚から吸収されるということはありません。

また、ナプキンに使われる綿花に漂白剤が使用されていてもいなくても、ナプキンとして皮膚に触れたら体に影響があるかといったら、「ない」ですよ。多くの女性がはいているおしゃれなランジェリーのほとんどに化学繊維が使われていることを忘れていませんか?それが体に悪い影響を与えるとはいわれないですよね。

 

―ナプキンの素材には、特にこだわらなくていいということでしょうか。また、オーガニック紙ナプキンのよさはどういうところにあるのでしょうか?

 

宋:オーガニックコットンの紙ナプキンは、肌荒れや、かぶれのある人にはいいと思います。でも、オーガニックのナプキンは、生理用ナプキンをつくる企業が日夜研究した成果である、「漏れない」とか「吸収した経血が戻らない」などの快適性につながる機能がないということですよね。そのようなナプキンを使用するということは、30年以上前に逆戻りするような気がしますが。

私の生理が始まったころは、今のような羽根つきの薄型ナプキンはなくて、ごわごわしたナプキンにせいぜい粘着テープがついているぐらいでした。ずれたらすぐに漏れてしまって、「ああ…」ということがたくさんありました。今はもう販売を終了してしまいましたが、生理用ナプキンの「ウィスパー」が登場したときには、「こんなに安心なものが出たなんて!」と感動したのを覚えています。オーガニックを選ぶということは、そうした機能をもう一度失うことになりますよね。オーガニック紙ナプキンだけでは吸収力が足りなくて不安ですが、生理カップとオーガニック紙ナプキンを併用するのはよさそうです。

オーガニッックナプキンのメリット

―「コットンのナプキンで子宮を温める」などという話も聞きます。こうした考え方の背後に、「温活」「冷えとり」といったトレンドワードがありますが、実際はどうなのでしょうか?

 

宋:「子宮を温める」、「子宮を冷やさない」も、よく耳にする言葉ですよね。コットンのナプキンを使うと体や子宮が温まるとうたって、オーガニックナプキンや布ナプキンを販売しているところもあるようですね。みなさんもご存知のとおり、登山では、コットンは冷えるからNGというのは常識です。コットンは一度濡れるとなかなか乾かないため、体から体温をうばい続けます。

また、「冷え」は東洋医学の概念で、諸悪の根源のように敵視されていますが、子宮は骨盤の中にあって非常に太い血管が通っている場所なので、体の中でも一番体温が安定したところにあります。そのため、手足やおなかが少し冷えたくらいでは、骨盤内の温度は下がらないんですよ。

 

―体を鍛えて経血を腟に溜めておけば生理用品を使わなくても大丈夫という「月経血コントロール」という言葉を聞いたことがあります。トレーニングすれば、誰でも月経血をコントロールできるようになるのでしょうか?

 

宋:「昔の女性は、月経血を腟にためておき、トイレでまとめて出していた」という言い伝えを聞いたことがある方もいるかもしれませんね。これは、「昔は良かった」系の神話です。月経血を腟にためておいて、出したいときにまとめて出すというのは、身体の構造上、無理なのです。

私たちが尿や便をためておいて、トイレで排泄できるのは、尿道や肛門には括約筋があり、止めておくことができるからです。でも、腟はそのような構造にはなっていません。

よく、産後の体型回復のトレーニングで「骨盤底筋」と呼ばれている、「腟トレ」の運動で鍛えられるのは恥骨直腸筋という筋肉ですが、恥骨直腸筋を収縮させて前後に腟を閉めても、小陰唇はぴったり閉まりませんから、月経血が出てこないように密閉することは不可能です。

女性の体については、単に体の仕組みを知らないために神秘的にしたいという想いが働くようで、さまざまな眉唾な話が広がりやすいです。月経コントロールやオーガニックナプキン信者の「独自の理論」は医学的・生理学的に正しくないということはぜひ知っておいてほしいです。

生理用ナプキンについて 産婦人科医師 宋美玄先生

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産婦人科医、医学博士。1976年、神戸市生まれ。2001年、大阪大学医学部卒。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院(胎児超音波部門)留学を経て、2010年から都内で産婦人科医として勤務。診療やセックスに関するカウンセリングのかたわら、書籍の出版や雑誌連載、テレビ・ラジオへの出演等で、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。2012年、2015年に出産した2児の母。

主な著書に、「産科女医からの大切なお願い 妊娠・出産の心得11カ条」(無双舎)、「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)、「幸せな恋愛のためのSEXノート」(ポプラ社)、「ずっとずっと愛し合いたい セックスしつづける男と女のルール」(幻冬舎)など。