アラサー世代の子宮頸がん急増中!がんにならない予防と対策は
2019.12.17「がん検診は、歳をとってから受ければいい」なんて思っていませんか? がんは、高齢者の病気と思ったら大間違い。20代、30代、40代の女性が、ほかの年代より多くかかっている、がんがあります。それが「子宮頸がん」です。今、どの年代よりも20代、30代女性の子宮頸がんが増えています。将来の妊娠、出産にも大きな影響を及ぼすことになりかねません。その予防法をお伝えします。
文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
子宮がんは、ふたつある!
子宮がんには、子宮頸がんと子宮体がんがあります。
このふたつは、原因も性質もできる場所も全く異なるがんです。今、20代~40代の世代に非常に増えているのは子宮頸がんです。
がんというと年配の人の病気のように思うかもしれませんが、子宮頸がんは違います。どの年代よりも、20代、30代に多いのです。
子宮の入り口にできるのが子宮頸がん、子宮の奥の内膜にできるのが子宮体がん
子宮頸がんは、子宮の入り口である頸部の上皮(表面の細胞)に発生します。
一方、子宮体がんは、子宮の奥にあたる体部の内膜に発生。内膜は、生理のときに剥がれて月経血と一緒に排出されてしまうので、閉経前の女性では子宮体がんの発生は多くありません。子宮体がんのリスクが高まるのは、閉経以降です。
子宮頸がんは、20代~40代が最も多くかかるがんです。20代、30代は乳がんより子宮頸がん(上皮内がんを含む)のほうがずっと多いのです。
毎年約1万人の女性が新たに発症し、年間約2700人もの女性が亡くなっています。
子宮頸がんのおもな原因は、性交渉によるヒトパピローマウィルス(HPV)の感染です。
このHPVは、性交渉のある女性の80%以上が50歳までに一度は感染を経験すると言われているほどありふれたウイルスです。ですから性交渉があれば、何歳でも感染する可能性はあります。
感染しても多くの場合は、症状のないうちにHPVが排除されますが、排除されないで感染が続くと、数年から十数年かけて前がん病変(がんに移行する前段階の病変)を経て子宮頸がんを発症します。
子宮頸がんの初期は自覚症状がほとんどないため、症状が現れたときにはすでにがんが進行していることが多く、子宮や卵巣の摘出手術が必要となってしまいます。
早期に発見できれば子宮を失わない治療ができますが、将来流産率が高まるという報告もあります。
子宮頸がんは検診で早期発見も大事ですが、かからないように予防もしたいのです。
ではどうやって、子宮頸がんを予防すればいい?
子宮頸がんは、「検診+ワクチン」を組み合わせることで99%予防できることを知っていますか?
まず、子宮頸がんの検診は地方自治体や会社で行われている「子宮がん検診」と言われているもので、20歳以上の女性は、2年に1回の頻度で子宮頸がん検診を受けることが国からも薦められています。
自治体や企業の検診だと、無料あるいはかなり安い費用で受けることができます。婦人科のクリニックでは自費になりますが行えます。
綿棒くらいのサイズで小さな柔らかいブラシのようなもので、子宮の入り口の細胞を採取する検査ですので痛みもほとんどなく簡単にできる検査。子宮頸部の細胞を採取して、細胞に何らかの異常がないかを検査する「子宮頸部細胞診」です。
子宮頸がんは、検診を受けることでがんになる前の段階“前がん病変”で発見することができます。これも大切な予防のひとつです。
20歳になったら2年に1回は行いたい検査です。定期的に検査していれば万が一異常があっても、がんになる前(前がん病変)の状態でわかります。がんになる前にわかるなんてすごいこと。
前がん病変や早期発見なら治療も簡単に済み、子宮を失うこともなく、将来、妊娠、出産も可能です。ぜひ、受けてほしい検査です。
検診+ワクチンで子宮頸がんは99%予防できる時代
子宮頸がん検診以外にも、もうひとつ子宮頸がんの予防として重要なものがあります。
子宮頸がんを予防できるワクチン、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンです。HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)は、20歳以上の大人の女性も接種するメリットがあります。
子宮頸がんは “検診+ワクチン” で99%予防できる時代になっているのです。
子宮頸がんのワクチンが日本でもやっと接種可能になりました。がんが予防できるなんて医学的にも画期的なことです。
世界中120か国以上の女性たちは、今も検診とワクチンで頸がん予防を行っています。
子宮頸がんの原因は、性交渉によるヒトパピローマウィルス(HPV)の感染ですが、HPVは全部で100種類以上あり、がんになるものが約15種類。
このうち日本にあるHPVワクチンは、HPV16型と18型の2種類です。この2種類は全部の子宮頸がんのうちの約70%を占めています。
HPVワクチンには、16,18型に、6型と11型を加えたものもあります。6型と11型は尖圭コンジローマの予防になります。
妊娠と同時に子宮頸がんがわかって…
子宮頸がんの予防のHPVワクチン情報の前に、知人のS子さんの話を聞いてください。
数年前、S子さん(当時28歳)から「妊娠した!」という嬉しい知らせが届きました。でも、それとともに、「子宮頸がんだったことがわかって…」という相談でもありました。
がんは早期だったため、妊娠中はがんが進行しないように見守りながら出産することができました。無事妊娠は継続でき、元気な赤ちゃんが産まれました。
そして、S子さんは出産後、子宮頸がんの治療をしました。0歳の赤ちゃんがいる中での治療は精神的に大変だったと言います。
早期発見だったため、円錐切除術という比較的簡単な治療で頸がんを取り去ることができました。次の妊娠出産も可能ですが、ただ次の妊娠時には流産率が高まるという説明を受けました。
「早期発見で子どもも命も守れましたが、ワクチンの情報があったら絶対に接種していました。みんなにワクチン接種と検診を受けて、と言いたい」とS子さんからのメッセージです。
HPV(子宮頸がん予防)ワクチンは摂取できるの?
HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)は現在、世界100か国以上で認可され、60か国以上でワクチンプログラムに組み入れられ公費接種がいまも行われています。
日本では2013年から小6~高1の女子を対象に定期予防接種を開始しました。しかし、接種後、慢性疼痛、運動障害などの副反応が報道され、厚労省が積極的な接種勧奨を一時中止する事態になりました。
現在、副反応が起こった人たちの多くは回復していますが、国の積極的摂取の勧奨差し止めは今もそのままです。この判断は、医学的な統計的根拠に基づかない国の政策決定であることから、多くの非難を浴びています。副反応とワクチンの中身との関連性はないと言われています。
WHO(世界保健機構)は2015年、「日本は予防可能であるヒトパピローマウイルス(HPV)関連がんの危険にさらされたままになっている」と日本を名指しで非難しています。WHOが1国のみを名指しで非難することは異例のことです。
日本の産婦人科学会、医会、日本小児科学会の専門家たちも、国に早期にHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の再開を求めていますが、まだ再開の目途が立っていません。HPVワクチンの積極的接種勧奨を停止しているのは、先進国で日本だけです。
このままでは日本女性だけが子宮頸がんにかかってしまう…
世界中でHPVワクチン接種が行われ、子宮頸がんが減少しているデータが続々出ているにもかかわらず、このままでは、日本だけにHPV(ヒトパピローマウイルス)が蔓延して、日本女性だけに子宮頸がんが増える状況になってしまいます。
特に、これから妊娠出産を望む女性は正しい情報を知って、子宮頸がん検診とHPVワクチンで子宮頸がんを予防してください。
大人の女性の公費助成は、最初から行われていませんので自分で支払うことになります。おもに婦人科クリニックで希望すれば、今も接種可能です。
大人の女性にもHPVワクチンは有効です
ワクチンというと、中学生、高校生が接種するというイメージを持っている人も少なくないかもしれません。でも、大人の女性にも頸がん予防ワクチンは有効です。
性交渉を行なう前、HPVに感染する前の子どもたちに接種することは大事です。でも、仮に今HPVに感染している大人でもワクチンは有効なのです。
そのわけは…?
20代、30代では16型、18型両方に感染している人はほとんどいません。たとえ、どちらかに感染していても、もう一方の感染は防げます。
そして、多くのHPV感染は一過性で、しばらくすると免疫力で自然消滅します。ワクチンを摂取していれば、消滅したあとの再感染を防ぐこともできるのです。
このHPVは、性交渉のある女性の80%以上が50歳までに感染を経験すると言われているほど、ごくありふれたウイルスです。ですから、性交渉があれば、何歳でも感染する可能性があります。
半年の間に3回接種します
HPVワクチンは肩に近い腕の筋肉に注射します。半年の間に3回接種します。大人の女性なら婦人科で相談にのってくれます。
費用はクリニックによって違いますが、3回で5万円くらいが多いようです。HPV16型、18型の2価ワクチンに加え、性感染症である尖圭コンジローマも一緒に予防できる6型、11型が加わった4価ワクチンもあります。
このように、子宮頸がんを予防できるHPVワクチンは、20代以上の大人の女性も接種するメリットがあります。ただし、くり返しますが、ワクチンだけでなく、子宮頸がん検診も行なうことが必須です。
HPVワクチンでHPV感染を防ぐとともに、子宮頸がん検診によってがんを早期に発見することで、子宮頸がんで死亡する人を大幅に減らすことができるのです。
参考資料:厚生労働省 子宮頸がん予防ワクチンQ&A
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