35歳から始まる“卵巣力”の低下は、くい止められるの?
2020.05.18女性の健康維持に大切な女性ホルモンは、卵巣から分泌されているため、“卵巣力”(卵巣機能)が低下すると、健康や妊娠・出産にも支障をきたします。
女性の健康にとって注目すべき“卵巣”の働き。
まずは“卵巣”についての知識をもつことからはじめましょう。
文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
卵巣力をチェック!
下記のチェックリストで、“卵巣力”をまず、チェックしてみませんか。
⬜︎ 生理(月経)が規則正しく、かつ排卵も毎月ある
⬜︎ 子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣のう腫などの病気がない
⬜︎ 規則正しい生活と食事に気をつけている
⬜︎ タバコは吸わない
⬜︎ 体脂肪率は29%未満である
⬜︎ ひどい冷え症や強いストレスはない
⬜︎ 無理なダイエットをしたことはない
上記に当てはまるものがなければ、とりあえずひと安心です。
もし当てはまるものがあったら、月経(生理)があっても安心とはいえません。
毎月、排卵もしていることが大切です。病気がないか定期的に婦人科検診でチェックしていますか?
卵巣のためには、規則正しい生活が大事です。喫煙、太りすぎ、やせすぎもNGです。また、ストレスや冷えは、卵巣の機能を低下させます。
そして、年齢は、“卵巣力”にとって重要なファクターです。
35歳を過ぎると、卵巣機能は低下をし始めます。卵巣機能の低下に伴い、妊娠、出産も40歳になると厳しい状態になります。
卵巣力=妊娠力とも言えます。
卵巣機能の影響は、妊娠、出産はもちろん、健康にも関係します。
卵巣力のために、年齢という時計の針を巻き戻すことはできませんが、検診や日常生活など、自分で努力してできることは、いろいろあります。
アラフォー女性の外見は20代。でも体は…
卵巣の働きと女性ホルモンの分泌は、30代後半から低下し始め、40代になると急激に下降し始めます。
今の40歳前後のアラフォー女性は、外見は20代と思わせる人も少なくありませんが、体の中は確実に老化しています。
「とはいっても40代後半や50代で初出産した有名人の女性もいるのだから、40代での初産は決して珍しくないのでは?」と思っている人も少なくないと思います。
たしかに、高齢出産と言われる35歳以上で出産している女性は、現在日本で5人に1人です。40代で出産する女性も増えています。
ただし、その多くは自然妊娠ではなく、高度不妊治療によるものです。
ここ10数年、不妊治療を受ける女性の年齢層は10歳近く上がり、40代比率が高まっています。
では、女性に備わっている自然に妊娠できる力というのは、何歳くらいまでなのでしょうか?
卵巣力が高いのは? 40歳からはかなりダウン…
目安として卵子の数で見ると、20代に20~30万個だったものが、30代後半から減少速度が速まり、40代に入ると数千個になります。
卵子の数だけでなく、卵子の質も低下します。
さらに、AMH(抗ミューラー管ホルモン)という卵巣年齢の目安ともなるホルモンの値は、40代では20代の10分の1以下になります。
排卵や妊娠に欠かせない女性ホルモンのエストロゲンの分泌も35歳を境に減少し、40代で坂道を転げ落ちるように激減します。
年齢を重ねるほど、卵子の数も質も落ちて、卵巣力も妊娠力も下がってくると言わざるを得ません。
20代の不妊症は、数%であるのに対して、40代では60%を超えると言われています。
また、せっかく妊娠しても、育たずに流産してしまう割合も高まり、流産率は30代後半で20%、40代では40%にはね上がります。
やはり卵巣力が高いのは、35歳までで、高齢出産となる35歳から、低下を始める年齢と考えざるを得ません。
そして、卵巣機能は、40歳になると激減すると考えたほうがよさそうです。
AMHは卵巣年齢を測る方法
AMH(抗ミュラー管ホルモン)というホルモンの一種を採血で測る検査があります。不妊治療時によく行われる検査です。
AMHは、卵巣の中にある卵胞から分泌されるホルモンで、卵胞数が少なくなってくるとAMHの値が低くなります。
つまり、AMH値が高いと、卵胞がまだたくさんある状態です。値が低いと、卵胞が少なくなってきている状態です。
いわゆる卵巣年齢(今後、排卵できる期間が長いか短いか)を知ることができ、卵胞の数があとどのくらい残っているかの目安になります。
このAMHは、25歳をピークに、あとは減少の一途をたどります。
ですから生理があれば、妊娠できるというものではないのです。きちんと排卵していなければ、妊娠はできません。
生理があるからといって、必ず排卵しているとは限りません。
排卵しているかの目安は、基礎体温をつけていればわかります。
卵巣できちんと卵が育っているかは、婦人科の経腟超音波検査で、卵巣を見ることでも判断できます。
20代 VS 40代、卵巣力はどう変わる?
20代女性と40代女性の卵巣力を卵の数、AMH、エストロゲン値で比べてみました。
やはり、年齢によって卵巣力が落ちていくのがわかります。
20代と40代女性の違いは、見た目の差より、卵巣力の差のほうが大きいかもしれません。
卵子の数は、だれもが同じなのでしょうか?
卵巣の数は、生まれたときはみんなほぼ同じ数です。しかし、その後、減っていくスピードには個人差が出ます。
お母さんのおなかの中にいる胎児のときに、すでに卵巣に600万〜700万個の原始卵胞(卵子の元になる細胞)があります。
けれども徐々に消失していき、生まれたときには100万〜200万個になっています。ここまでは、だれもがほぼ同じ数です。
その後、原始卵胞は、新たにつくられることはありません。
男性の精子は、新しく作り続けられますが、女性の卵子は時間とともに減り続け、排卵が始まる思春期ころには30万個まで減少し、20代では約10万個になります。
卵子は、ひと月に1個ずつ減っていくわけではありません。もっと大量に減っていきます。
この卵子が減るスピードには個人差があって、本人の生活環境や病気などによって変わる可能性が大きいのです。
年齢だけでなく生活習慣や喫煙、ダイエットも影響
年齢は、卵巣機能の低下の目安になりますが、若いからと年齢だけで判断するのは危険だと言われています。
30代前半でも、40代の女性のような卵巣機能の人もいれば、40歳でも30代のような若い卵巣機能の人もいます。
20代、30代女性の約70%がなんらかの婦人科系のトラブルを気づかないままに抱えているという報告もあります。
不調があれば、婦人科を受診するのは言うまでもありませんが、不調がなくても、子宮筋腫や卵巣のう腫、性感染症や子宮頸がんなどの病気がないか、定期的に検診でチェックすることも大事です。
喫煙や無理なダイエットは、卵巣機能を大きくダウンさせる要因です。
生活習慣、食事、睡眠、運動、メンタルケアなどで、女性の体(卵巣)は変わります。
卵巣力に注目して、健康維持に役立てましょう。
卵巣の老化を食い止める方法はあるのでしょうか?
卵巣の老化を食い止める医学的に確実な方法はありませんが、卵巣は体の奥にあっていつも温かい状況にあります。
ですから、卵巣を冷やさないことは大切です。
一方、男性の精巣が体の外にあるのは、温めすぎるとよくないから、なのです。
卵巣が冷えると、抹消の血液循環が悪くなり、代謝が落ちます。
女性ホルモンがスムーズに血流にのって、行き渡る環境ではなくなってしまいます。
また、抗酸化としてビタミンC、Eを摂るのも、卵巣のアンチエイジングにもなると言われています。
低用量ピルは、卵巣の機能を回復するために使われることがあります。
低用量ピルは排卵を止めるので、卵巣をお休みさせることができて、子宮内膜症や卵巣がんを予防する作用があります。
そういう意味で、卵巣を保護して、卵巣の老化防止に役立つと考えてもいいかもしれません。
「初潮が早いと、閉経も早いのでは?」と考える人もいますが、初潮(初経)年齢と閉経年齢の相関はありません。
日本の初潮年齢は、平均12歳です。この100年で初潮は2~3歳早くなっています。けれども、閉経はずっと変わらず平均50.5歳です。
初潮と閉経の相関はなく、閉経年齢の予測は正確にできません。母親の閉経年齢は参考になりますが、生理不順などの女性は、早く閉経してしまう傾向にあります。
女性ホルモンの分泌を減らすのは肥満?!
肥満だと、卵巣をコントロールするホルモンのひとつに異常をきたすことがあります。そうなると、排卵が抑制されて排卵障害を起こすこともあると言われています。
肥満の人は、妊娠しづらいというデータもあります。
女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンは、卵巣による生理と排卵の周期に従って日々変動しています。
女性ホルモンの値は、採血で測れますが、生理周期のどの時期に測るかで、その値は大きく異なります。
女性ホルモンの値は、多ければいいわけではありません。バランスよく変動していることが大事なのです。ちなみにエストロゲン(E2)の値がおよそ30pg/ml未満になると、閉経状態となります。
女性の健康にとって大きな役割を果たしている卵巣。卵巣は、女性ホルモンが分泌される大切な場所です。
卵子の数、卵巣年齢、初潮と閉経年齢の関係、女性ホルモンや卵巣の老化を防ぐ方法など、知っているようで意外と知らない卵巣力の知識を深めて、健康ケアに役立てください。
参考/ 一般社団法人日本生殖医学会
日本生殖補助医療標準化機関「結果の出せる不妊治療」
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