ひどい生理痛はなぜ起こるのか?

生理(月経)前や生理中は、程度には個人差があるものの、多くの女性が身体の不調や不快感をかかえていると思います。

私たちはそれらを「生理痛」と呼んでいますが、そのほとんどが腹痛や頭痛ですよね。

排卵をともなわない生理「無排卵月経」のときは経血量が少なかったり、生理痛が軽かったりするため、生理痛があるということは排卵をともなう生理がきているというひとつの判断基準になりますが、毎月生理痛があるのはツラくて憂鬱ですよね。

今回は生理痛が起こるメカニズムについてみていきましょう。

自分の身体のことを理解すれば、生理中の気持ちも少し楽になるはずです。

関連記事:毎月ちゃんと生理きてる?生理周期と生理期間、経血量について考えてみよう。

 

痛みの原因は何なのか?

生理痛の原因について考えている中学生

 

そもそも生理痛の痛みの原因は何なのでしょうか?

簡単にいうと、「子宮の収縮」です。

生理中に子宮に溜まった経血を外に押し出そうとするために子宮が収縮します。

その収縮の力が痛みの強さに表れるのです。

ではもう少し詳しくみていきましょう。

 

子宮は筋肉?!

実は、子宮は筋肉の壁でできた袋のような構造をしています。

その筋肉は平滑筋(へいかつきん)といい、収縮をつかさどる筋肉になっています。

普段、私たちが動かしたいと思って、意識的に動かすことのできる筋肉のことを横紋筋(おうもんきん)といいます。

一方、平滑筋は自律神経の支配下にある筋肉のため自分の意思では動かすことのできない筋肉なのです。

これを不随意筋(ふずいいきん)とも言います。

子宮を構成する細胞は平滑筋のため、私たちの意思ではコントロールすることができません。

子宮が勝手に収縮して子宮内の経血を押し出す結果、その収縮の強さが生理痛になるのです。

なんとなく生理痛のメカニズムが分かりましたか?

 

参考文献:武谷雄二著「月経のはなし:歴史・行動・メカニズム」(中公新書),2012年

 

生理痛の正体「プロスタグランジン」

子宮が収縮する強さによって生理痛がおこることは説明しましたが、もっと詳しくみていくと、どうやら痛みの正体は「プロスタグランジン」という物質が関係しているようです。

そのプロスタグランジンという物質は、子宮が収縮する時に収縮を促すもので、子宮内で作り出されます。

排卵しても妊娠しないと、妊娠のために準備して厚くなっていた子宮内膜組織が剥がれて、外に排出されます。

この子宮内膜を外に押し出そうとするときにプロスタグランジンが分泌しはじめ、分泌が高まるとその作用で生理痛を感じます。

 

参考:「生理痛の原因:痛みの主な原因はプロスタグランジン」BUFFERIN 痛み解決ナビ

 

生理痛には個人差がある

生理痛は周期が安定し、排卵の周期が確立した女性のほとんどが感じる痛みだと思いますが、その痛みの強さが数字で示されているわけでなく、あくまでも自覚症状でしかありません。

初経後しばらくの間は排卵を伴わない月経が多いため、生理痛がないことがほとんどです。

しばらくして経血量や周期が安定したり、排卵の周期が安定したりすると生理痛を感じるようになり、成人になると生殖機能が成熟するので痛みがピークになります。

しかし、ひとりひとり痛みの程度も違ううえ、痛みに対する耐性も異なるため、痛みを説明することは非常に困難です。

生理痛とひとことでいっても、女性同士でも他の人の痛みはわからないということが、生理痛の厄介な点なのかもしれません。

 

参考文献:武谷雄二著「月経のはなし:歴史・行動・メカニズム」(中公新書),2012年

 

生理痛の程度について

女性労働協会がおこなった「働く女性の健康に関する実態調査(2004年)」によると、16歳から50歳未満の女性1906人のうち、4分の1の女性が「強い月経痛」に悩まされていることがわかっています。

詳しくみてみると、年齢が上がるにつれて生理痛の強さは弱まる傾向にあります。

一方、25歳未満の女性の4割程度は強い生理痛を感じていることが明らかになりました。

一般的に生殖機能が成熟することで生理痛がピークになりますが、その後出産を経験したり、年齢を重ねたりすることで生理痛が軽くなるという傾向が見られるため、このような結果になったと考えられます。

しかし、もし子宮系の疾患「子宮内膜症」や「子宮筋腫」などを発症させた場合は、痛みが軽減するどころか、逆に痛みが増すようになります。

何歳になっても痛みが変わらず、むしろ30歳を超えて痛みが強くなっている女性は注意が必要です。

参照:「働く女性の健康に関する実態調査(2004年)」女性労働協会

 

もしかしたら「月経困難症」かも

これまで、生理痛の原因や、痛みの程度、年齢別による痛みの傾向についてみてきました。

皆さんは生理痛があるときにどのように過ごしていますか?

鎮痛剤を飲んで痛みを抑えたり、お腹を温めて痛みを和らげたりしている女性が多いのではないでしょうか?

もし、生理痛によって生活に支障をきたしているのであればそれは「月経困難症」かもしれません。

 

月経困難症は2タイプに分類できる

月経困難症は大きく分けて2つのタイプに分類できます。

1つめは、痛みの原因となるような子宮筋腫や子宮内膜症などの病気がないタイプ。

2つめは、子宮系の婦人科疾患があり、その原因によって痛みが強くあるもの。

前者を「機能性月経困難症」、後者を「器質性月経困難症」といいます。

30歳ごろを境に、年齢が進むにつれて痛みが増してくる場合は「器質性月経困難症」を疑うことがあります。

しかし、先にも述べましたがこの「痛み」の感じ方には個人差があります。

数字や客観的な評価基準があるわけではないため、簡単に前者か後者かを判断することはできません。

気になることがあれば専門医に相談して、きちんと診察を受けることも大事ですね。

我慢は禁物です!

 

関連記事:

もしかしたら過多月経かも?! 自分の経血量を知る方法

生理休暇ってなに?働く女性たちの生理事情と男性たちのホンネとは

参考:

「思春期の女性医学 3)月経困難症」,日産婦誌59巻9号, 日本産科婦人科学会

 

まとめ

雨上がりの少女とレインボーの傘

 

これまで簡単に「生理痛」という言葉を使ってきたとも思いますが、そのメカニズムや痛みの程度については詳しく知る機会は少なかったのではないでしょうか。

知ったからといって生理痛が軽減するということはありませんが、身体の仕組みを知ったあとに生理を迎えれば、「あぁ、今子宮が収縮しているんだなぁ。」とか、「今回の生理もちゃんと排卵があったんだ。」とか、生理を少し前向きに受け止めることができそうですよね。

これまでは痛くツラく憂鬱なものでしかなかった生理痛を、少しでもやさしい気持ちで迎えることができれば、それだけでストレスも少し軽減するのではないかと思います。

しかし何度も言いますが生活に支障をきたすほどの生理痛がある女性は注意が必要です。

我慢せずにすぐに専門医に相談して診察を受けてくださいね!

 

関連記事:生理痛がひどい!それってもしかしたら月経困難症かも。

 

この記事の監修:宗田聡先生

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