PMSってなぜ起きる?どの程度なら病院に行くべき?病院では吹き出物&むくみ対策もあります
2019.10.03PMS(月経前症候群)は、治療して治すことができるのを知っていますか? 「でも、この程度で病院に行っていいの?」と躊躇するのも確か。そこで、どの程度の症状なら、婦人科で治療したほうがいいのか…、セルフケアでなんとかできるか…の見極めのコツを紹介します。特に、気になる人が多い生理(月経)前の吹き出物やむくみの対処法もお知らせします。
文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
生理1週間前から不調が続く、PMSのメカニズムとは?
PMSが起こる原因は、生理(月経)に関係がありますが、一体どのようなメカニズムなのでしょうか?
PMSの症状は百人百様。その数200以上にのぼると言われています。
けれども、原因ははっきりとわかっていません。一説には、排卵後に訪れる“黄体期”の、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌の急激な変動がかかわっていると考えられています。
また、通常、ホルモンの異常はなく、排卵を抑制するとPMSが発症しないことが確認されているため、プロゲステロンが誘因では、とも言われています。
さらにほかの研究では、うつ状態を誘導する受容体のプロゲステロンに対する感受性が高いために発症する、と報告されているものもあります。
生理周期が28日の場合では、排卵が起こるのは、ちょうど生理が始まる14日前です。排卵を境に、ふたつの女性ホルモンが影響し合って、PMSを引き起しています。
PMSの症状が日常生活に支障をきたすようなときは、一度、婦人科専門医を受診してみましょう。
婦人科でのPMSの治療法は、ピル、漢方薬、抗不安薬、カウンセリング、アロマセラピーなど、さまざまあって、ドクターと相談しながら自分に合ったものが選べます。
参考:生理のミカタ
PMSを医師に相談する目安は?
生理前の5日間で、次のような症状があるかどうかをチェックしてみましょう。
下記にあてはまるようなら、治療して治したほうがいいPMSの可能性が高いです。婦人科を受診して相談しましょう。
◆体の症状
□ 乳房の痛み
□ おなかの張り、腰痛
□ 頭痛
□ 手足のむくみ
◆心の症状
□ 抑うつ気分
□ 怒りっぽくなる
□ イライラ
□ 不安
□ 混乱
□ 引きこもり
☑︎ 過去3か月以上連続して生理前5日間に、上記の体と心の症状のうち、少なくともひとつ以上の症状がある。
☑︎ その症状は、生理開始後から4日以内に症状が改善し、13日目まで再発しない。
☑︎ 薬やアルコールによる症状ではない。
☑︎ これらの症状は、仕事や生活に支障をきたす。
いかがでしょうか?
上の4つの☑︎にすべて当てはまったら、婦人科を受診して相談したほうがいいPMSの可能性が高いです。
参考文献:
Repinted from int.J Gynecol & Obsted 73(2001),ACOG practice bulletin premenstrual syndrome ,183-191,Copyright April 2000 by the American College of Obstetricians and GYnecologists ,with permission from Elsevier.
PMSは問診で診断します
婦人科での問診では、「過去3か月以上連続してPMS特有の症状のうち、ひとつ以上があるか」「生理前のどのくらいの時期に症状があるか」などを質問されます。
受診のときは、症状を記録した日記やメモなど、簡単でもいいので、記録を用意しておくといいでしょう。できれば、基礎体温表に書き込んでおくと、さらに資料として役に立ちます。
婦人科では低用量ピルなどのお薬で治療します。
婦人科での治療としては、お薬が中心です。比較的軽い症状であれば、低用量ピルなどのホルモン剤、鎮痛剤、安定剤、漢方薬などで治療します。
PMS改善のためのカウンセリングや日常生活のアドバイスもしてもらえます。
少し症状が重い場合には、SSRI(セロトニン選択的取り込み阻害薬)などの軽いうつ剤が処方されることもあります。
気になるPMSの肌トラブルやむくみにもピルは効果的です
婦人科では、生理前に悩むPMSのさまざまな症状緩和に、低用量ピルが処方されています。
低用量ピルは、避妊薬です。排卵を休めて、ホルモンバランスを一定にすることで、子宮内膜を薄い状態にして、生理の出血量を減らし、生理痛を緩和します。PMSの症状も起こりにくくなります。
低用量ピルは、肌の皮脂分泌や水分量のバランスを整えるのに役立つため、PMSのニキビ、吹き出物、肌荒れ、むくみにも使われます。
また、女性ホルモンのプロゲステロンには、水を溜め込む性質があります。PMSの時期は、プロゲステロンの分泌量が増えるため、水分代謝が影響を受け、むくんだり、体調が不安定になったりすると言われています。体重増加も水分の溜め込みによって起こりやすくなります。
そのため、低用量ピルで排卵を抑えてホルモンバランスを一定にすることで、むくみが改善することも少なくありません。
低用量ピルは、医師から処方してもらいます。ピルには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが含まれていて、OC(低用量ピル)とLEP(超低用量ピル)があります。
いずれも排卵を抑えるとともに、子宮内膜が厚くならないようにして、痛みの原因となるプロスタグランジンという物質の産生を抑えます。
その影響で、生理痛や生理周期によって起こるさまざまな症状が改善され、排卵を止めるので、PMS症状も改善します。
OC(低用量ピル)とLEP(超低用量ピル)は、いずれも種類がたくさんあるので、医師と相談して選んでください。
OCは、自費のため、クリニックによって値段が違います。1か月分1シート約2,000円~3,000円(診療費別)程度です。
月経困難症(つらい生理痛)がある人は、LEPだと健康保険が使えます。LEPは、月経困難症の保険適用薬です。生理痛がつらい人はこちらを選んでもいいでしょう。健康保険3割負担で2,400~2,500円(診療費別)ほどです。
向き不向き、合う合わないなど個人差があるため、OCやLEPは1か月程度試して、自分に合うものを探してみましょう。
漢方薬もニキビ、肌荒れ、むくみに効果があります!
また、PMSの症状改善に有効な漢方薬も多数あります。
PMS全般を改善する薬から、PMSのむくみ、ニキビ、頭痛、腹痛など、それぞれの症状に効く薬もあります。
体質によって、同じ症状でも漢方薬は変わります。自分に合ったものを選ぶことが大切なので、医師の診察を受けるのがベストです。婦人科医は、漢方薬をよく処方していますし、医師処方なら健康保険が使えます。
「清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)」
ニキビに多く使われている医師処方の漢方薬。健康保険が使えます。比較的体力がある人の赤みや炎症が強く、脂性肌のニキビに。顔面の湿疹にも使われます。
「桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)」
生理前に下腹部痛や肩こり、頭重、めまいがあるタイプの、生理前と生理時のニキビ、吹き出物、肌荒れ、手足の荒れや生理不順に。医師処方の漢方薬で健康保険可です。
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