おりものや痛み、かゆみ、臭い… 気になる性感染症の予防策。セーフセックスとは?
2019.12.11性感染症(STI=Sexually Transmitted Infections)とは、性行為によって、皮膚や粘膜を通して感染する病気の総称です。放っておくと不妊の原因になるものや、体にダメージを与えるものも。昔、代表的なSTIと言われていた梅毒は影をひそめ、代わって自覚症状がほとんどないクラミジア感染症やエイズなどが広がってきています。気になる症状と予防法をお伝えします。
文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
症状がないまま進行して不妊症の心配も…
性感染症には、クラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス感染症、尖圭(せんけい)コンジローマ、梅毒、HIV感染症/エイズ(後天性免疫不全症候群)などがあります。
女性の場合、ほとんどの性感染症は、自覚症状が乏しいため、気づかないまま進行して、病気によっては治療後も、後遺症として不妊症などが心配されるものもあります。男性は、女性に比べて症状が出ることも多く、比較的早い時期に気づくことができます。
性感染症は、特別な病気ではなく、性行為を行えば、誰にでも感染の可能性があります。
もし、何か異常を感じたり、不安を感じる場合は、必ず検査を受けるようにしてください。そして、感染している疑いがあったら、パートナーに伝えて一緒に検査を受けることが大切です。
チェック! こんな症状に要注意です!
- おりものの量が増えた
- おりものの色が変わった。臭いが強い
- 外陰部に痛みやかゆみを感じる
- 外陰部に水疱やイボができた
- 性交時や排尿時に痛みがある
- 性交後、性器から出血する
これらの症状は、なんらかの性感染症に感染している可能性があります。特に、おりものの変化を見逃さないことも大切です。
おりものは、女性性器から出るさまざまな分泌物の総称。おもに腟壁の古い細胞や子宮頸管からの粘液、皮脂腺や汗腺からの分泌物などが混ざり合っています。
性感染症に感染した場合には、おりものの量、色、においに異常が見られることも。おりものの変化に気づいたときは、放っておかず受診しましょう。
どんなときに感染する?こんな感染経路も!
母親の胎盤から胎児に感染させたり、生まれてくるときに産道で感染することを垂直感染といい、母子感染のことを指します。
このような母子感染を予防するためにも、妊娠中だけでなく、妊娠前にも性感染症の検査を受け、感染している場合は、きちんと治療しましょう。
また、ピンポン感染という言葉を知っていますか?
パートナーの片方が性感染症にかかったら、性行為によって相手にも病気をうつしている可能性があります。
本人が治療して治っても、パートナーも一緒に治療しなければ、その後の性行為によって再び感染してしまいます。これをピンポン感染と言います。
ピンポンのやりとりのような繰り返し感染を防ぐため、どちらかが性感染症と診断されたら、ふたり同時に治療することが大切です。
婦人科や泌尿器科で検査・治療します
検査や治療は、産婦人科や泌尿器科を受診します。最近では、女性だけの女性泌尿器科もあります。また、皮膚症状の強い性器ヘルペスや尖圭(せんけい)コンジローマなどは、皮膚科でも治療できます。
性感染症の種類によって、検査は若干違いはありますが、問診を行い、おりものや性器の状態を観察したり、尿検査、血液検査、腟分泌物検査などを行います。
飲み薬や軟膏のほか、注射や腟に入れる錠剤などもあります。性感染症は、ほとんど薬で治療できます。が、なかには手術が必要なものもあります。
かつて、エイズは死に至る病とされていましたが、治療法の進歩によりHIVウイルスに感染しても適切な治療により、通常の生活を過ごせるようになってきています。
性感染症は、自分自身の感染に気づかずに、感染を拡大させてしまうこともあります。しっかりとした予防が大事です!
予防のための “ セーフセックス ” って?
妊娠を望まない人にとって、妊娠しないセックスが、安全なセックスだと思っているかもしれません。
セーフセックスは、性感染症の予防のためにコンドームを使用するなど、配慮をしたセックスのこと。セーフセックスの知識をもつことが大事。
性感染症の予防には、低用量ピル(OC)や子宮内に入れる器具(IUD、IUS)、避妊手術などの避妊法を行っていたとしても、コンドームが重要です。コンドームの正しい装着は、性感染症の予防として非常に有効です。
セーフセックスのポイントの第1は、コンドームです。
コンドームは、性感染症予防には欠かすことができません。ただし、セックスの最初から最後まで正しく使用しなければ、確実な効果を得られません。また、破れたり外れたりしないよう、装着法も学びましょう。
セーフセックスのポイント2。複数のパートナーとのセックスは、感染する機会を増やします。パートナーの特定は、感染予防のためにも大切。
セーフセックスのポイント3。セックス前後にシャワーを浴びるなど、清潔を心がけることが大切。肛門に触れた手で、腟や外陰部に触れないようにすることも感染防止につながります。
性感染症にはこんな種類が…
【クラミジア感染症】
女性では、最も頻度が高い性感染症です。女性も男性も自覚症状が少ないことが特徴。気がつかないうちに病気が進行し、子宮や卵巣に炎症が広がり、不妊の原因になることがあります。女性の場合の自覚症状は、おりものの増加、頻尿や排尿痛、性交後の性器出血など、進行すると上腹部痛をともなうことも。男性は、尿道からの膿(うみ)、排尿痛などです。
【性器ヘルペス】
感染しても必ず発症するとは限りません。しかし、一般的に初期感染で発症したときには、歩けないほど痛むこともあります。感染すると、脊髄神経節にウイルスが潜み、ストレスや風邪などで抵抗力が落ちたときに、再発することがあります。妊娠中に発症すると、出産時に産道で子どもに感染する恐れがあります。自覚症状は、性器に生じる水疱、そけい部のリンパの腫れ、軽いかゆみなどです。
【梅毒】
梅毒トレポネーマの感染によって起こります。感染から2~3週間後に固いしこりができ、2~3か月後には体全体に発疹などの皮膚症状が現れます。早期に治療をすれば完治します。しかし、進行すると脳の神経がおかされることも。
【淋菌感染症】
淋菌感染症は、クラミジア感染に並んで、頻度の高い性感染症。日本では特に男性に多く、男性は排尿時に痛みを感じるなど比較的すぐ症状が出ます。しかし、女性は自覚症状が非常に少ないため、気づきにくい性感染症のひとつ。感染を放っておいて、症状が進むと淋菌が子宮から卵管まで広がり、激しい下腹部痛と発熱が起こります。子宮外妊娠や不妊症の原因になることもあります。女性は、おりものの増加、臭いが強くなる、外陰部のかゆみ、排尿痛などの症状が。男性の場合は、尿道からの膿(うみ)、排尿痛などです。
【尖圭(せんけい)コンジローマ】
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で、女男とも、薄茶色や灰色のイボができます。痛みやかゆみはありません。再発しやすいので、徹底的に治すことが大切です。女性は、腟や外陰部、子宮頸部にイボができます。
【HIV感染症】
エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染で起こります。感染から発症までの潜伏期間が6か月~10年以上と長いのが特徴。ほかの感染症に感染していると、HIVになりやすくなります。発症すると、人間に必要な免疫力が低下。健康な体ではほとんど害のない細菌やウイルスの感染、悪性疾患などによって、死に至ってしまうことも。
関連記事:
生理中にセックスはしてもいいの?知っておきたい3つのリスクとは
避妊に失敗した!望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬アフターピルとは