#私とサウナと月経カップ 【岡歩美さん】 サウナと月経カップで、自分の体を自分の手に取り戻そう

インテグロ×サウナラボの国際女性デー企画「#私とサウナと月経カップ」

サウナが好きな女性たちに、月経カップを知ってほしい!とサウナと月経カップにまつわるエピソードを集めました。

今回お話を伺ったのは、東京都千代田区にあるサウナラボ神田の広報担当の岡歩美さんです。

いつも「サウナ的に」生きていたい!

サウナが大好きで、2年前にサウナの仕事に転職しました。私のサウナとの出会いのきっかけは、大学生のときに近所のスーパー銭湯で4年間アルバイトをしたことでした。その後、サウナブームにのって全国の銭湯やサウナ施設をめぐるようになり、当時は「ととのい」を求めるために、休日に5~6軒サウナをはしごするのも当たり前でした(笑)。

社会人になってからデンマークにに留学したのですが、そのときに行ったフィンランドでのサウナ体験が、私のサウナに対する価値観をがらりと変えました。それまでは、自分へのご褒美のような感覚で、非日常的な空間としてサウナを利用していました。ところが、フィンランドや北欧では、決して特別なものではなく、生活の延長線上にサウナがあることが印象的でした。普段の生活で無理をして、たまにサウナでストレスを解消するのではなく、いつも「サウナ的に」生きられるようになりたい。生活とサウナと自分自身を切り離さずにいたいと意識するようになりました。
フィンランドのサウナ

↑ フィンランドでは、公衆サウナを中心にサウナをめぐりました。

留学の荷物を減らしたくて、月経カップに出会う

2013年に、世界を旅している友だちから月経カップを教えてもらいました。当時はネットに日本語の情報がなかったので「大丈夫なの?」と半信半疑で、自分が使うという選択肢はまったくありませんでした。2019年に日本の市場にも登場しはじめたころ、留学のための荷物を減らしたいと思い、ネットで購入してみました。

はじめは入れ方も出し方もわからず不安で、使っている知り合いもほとんどいないし、SNSにも気軽に書けない。相談できる人がいなかったので孤独に奮闘していました。出し入れはすぐにできるようになったのですが、かなりやわらかいカップを使っていたので、中で開かせるのが難しくて、コツをつかむのに時間がかかりました。今回使用したディーバカップは弾力性があり、中に入れて指を離しただけで自然に開くのでびっくり!カップの種類によってこんなにも違うというのもおどろきでした。

私にとって月経カップは、サウナや長期の旅行に行くときに特に重宝しています。普段は、月経カップだけでなく、吸水ショーツなどの生理用品と併用しながら、生活に合わせて使い分けています。

月経カップの本とディーバカップ

↑ 今回使用したディーバカップ

デンマーク留学で考えた、生理や性のこと

サウナに行く友だちから「生理中のサウナどうしてる?」とよく聞かれるので、月経カップをすすめると、カップに挑戦することに対してけっこうハードルが高いんだなと感じることがあります。自分の身体に触れることが怖かったり、経血に触れることに抵抗があったりするようです。

私が留学したデンマークの「フォルケホイスコーレ」という学校は、17歳以上であればだれでも入学することができ、高校卒業後から大学入学までのギャップイヤーで利用する若者から、学び直しをする大人までが集まる自由な学びの学校です。試験や成績もなく、対話やフィールドワークを中心に授業が行われます。

そのなかで「生理をタブーにしないためのポスターをつくる」という授業があり、生理に関する世界中の広告を見たり、歴史を学んだりしました。学校では授業の外でも当たり前のように生理の話をするし、ドラッグストアにも月経カップが普通に売っていて、気候危機に対する問題意識から自然環境に配慮してゴミを減らすために月経カップを使用しているという人もたくさんいました。

この授業をきっかけに、デンマークのオーフスにある女性と民主主義の歩みが学べる「女性博物館」や、ロンドンにオープンしたばかりの世界初の「女性器博物館」にも足を運びました。デンマークでもロンドンでも、生理や性のことをオープンに話せるような環境があったわけではなく、今こうやって歴史を残して伝えたり、対話できる環境を作り出したり、自分たちでタブーを破ろうとしているんだということがわかりました。

デンマークの女性博物館とロンドンの女性器博物館

↑ (左)デンマークのオーフスにある女性博物館は世界的にも珍しい女性をテーマにした博物館、(右)ロンドンに2019年10月にオープンした女性器博物館

デンマークと比べると、日本では性の話をオープンにする空気はまだ一般的ではないように感じます。生理を隠すことは、女性の体を隠すのと同じこと。私も思春期のころはタオルで体を隠して銭湯に行ったり、他人の身体と比較してしまったり、自分の身体に自信を持てず受け入れられなかったことがありました。

サウナに頻繁に入るようになって、さまざまな年代のいろいろな体型の人を知ることで、人と比べたり自分の体を恥じたりする必要はないんだなと気づき、自分の体がとても身近に感じられるようになりました。体も心も、誰かに評価されるためのものでなく自分のものなんだと思える体験は、私にとってはとても大事な体験でした。

サウナと月経カップで、自分の体を自分の手に取り戻す

サウナブームでサウナを利用する女性が増えた理由について、「美容のため?」「ダイエットのため?」「オシャレなサウナが増えたから?」などとよく聞かれます。私にとっては、そのような社会からの抑圧から解放されるための場所なのになぜ?といつも不思議に思います。サウナは、私たちが誰かのためじゃなくて、自分らしくよりよく生きられるように、手助けしてくれるものです。

そういう意味では、月経カップもサウナに似ているなと感じます。月経カップを使うためには、自分の体の構造を理解したり、自分の体に触れなければいけません。どちらも自分の体を自分の元に取り戻すことにつながると信じています。自分のためにサウナに入ったり、月経カップでセルフケアしたりすることを通じて、社会の中でないがしろにされてきてしまった自分に出会い直すことができるはずです。

 

【 取材・執筆 協力 】

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