生理にかかるコストを少しでも減らしたい。節約するためにできること
2023.02.22ガソリンや光熱費、食品など、生活必需品の値上げが相次ぎ、家計への負担を感じている人も多いのではないでしょうか。
そんな状況のなか、女性にとっては、生理に伴う経済的な負担も見逃せません。
では、使い捨ての生理用品を毎月使い続けると、一体いくらかかるのでしょうか。今回は生理にかかる出費について把握して、少しでも負担を減らすためにできることを考えてみましょう。
一生涯で経験する生理の回数とコストについて
私たちは12歳頃に初潮を迎え、閉経にいたる50歳頃まで、月に1回、約40年間生理を経験します。
日数にすると2400日以上、回数にすると456サイクル、そしてそれを年数にすると、なんと私たちは7年近くも生理の状態にあります。
この期間をすべてナプキンやタンポンなどの使い捨て生理用品で過ごす場合、どのくらいのコストがかかるでしょうか。
20〜30代の働く女性を対象に行われたアンケート調査*によると、9割以上が毎月の生理用品購入にかかる金額を「1,000円以下」と回答し、さらに細かく見ると、もっとも回答者数が多かった価格帯は「500円~1,000円」という結果が出ました。
ユース世代を対象にしたアンケート調査**でも、30%以上が300円〜700円の価格帯で購入しています。
これらのアンケート結果から、毎月平均で650円ほどの費用がかかると仮定すると、生涯にかかる費用の合計は約30万円。
しかしこのアンケートは、「生理用品」の購入のみに関する結果です。
経血が出るだけが生理ではありません。生理のときの体はさまざまなケアを必要とします。
生理用品以外に、生理用ショーツ、鎮痛薬、使い捨てカイロ、ひざ掛けなどのアイテムのほか、婦人科にかかったときの医療費などがかかることもあるので、実際にはさらに高額になると予想されます。
生理痛がひどい人や、量が多い人であれば、生理関係に一生で100万円近く、あるいはそれ以上使うというケースもあるかもしれません。
普段の生活ができなくなるくらい痛みやだるさを感じ、学校や仕事を休まなければならないこともあります。
参考:
*女性の負担は大きい!? 一生のうち生理にかかる日数とコスト
**「日本のユース女性の 生理をめぐる意識調査」(プランインターナショナル/2021年)
「生理の貧困」の結果起こっていること。不適切なケアをしてしまうとどうなる?
生理は身体的、精神的に不快な症状を与えるだけでなく、生理がなければ使う必要のないお金、つまり経済的な負担まで個人に強いているのが現状です。
その深刻さが近年知られるようになり、世界的には「period poverty」、日本でも「生理の貧困」として、メディアにも取り上げられるテーマとなりました。
厚生労働省は2022年に、全国の 18 歳から 49 歳の生理のある女性3,000 人から回答を得て「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」を行いました。
この調査によると、新型コロナウイルス感染症発生後(2020 年2月頃以降)の生理用品の購入・入手に苦労したこと」の有無について、「よくある」「ときどきある」の回答が8.1%(244 人)にのぼりました。
さらに、そのときの対処法として、61.9%が「生理用品を交換する頻度や回数を減らす(長時間利用する等)」「トイレットペーパーやティッシュペーパー等で代用する」「タオルやガーゼ等の布で代用する」といった不衛生と考えられる対処法を1種類以上行っていること、こうした結果、半数以上が身体症状として、「かぶれ」「かゆみ」「外陰部のかゆみなどの症状」 「おりものの量や色の異常」 「外陰部などの発赤、悪臭」 を経験していることがわかりました。
この結果が示しているのは、生理用品が買えない、あるいは節約しなければいけない状況により、不衛生で不適切な生理ケアを選んでしまう人が一定数いること、そしてその間違ったケアの結果、トラブルが経験されているということです。
また、生理用品を購入・入手できないことを理由とする社会生活への影響については、「プライベートのイベント、遊びの予定をあきらめる(40.1%)」「家事・育児・介護が手につかない(35.7%)」、「学業や仕事に集中できない(34.1%)」などが挙げられ、学業や仕事、社会的活動の機会も損なわれていることがわかります。
食費を選ぶか、ナプキンを選ぶか。生理用品をめぐる世界の動き
生理の貧困により、食費を選ぶか、ナプキンを選ぶかという切実な選択すらなされているという世界中からの声は、政治にも反映され、今、世界は変わり始めています。
スコットランドでは2020年、世界に先駆けて、すべての人に生理用品を無償で提供する法案が承認されました。フランス、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカなど、国や州レベルでこうした動きがあります。
2023年2月現在、日本においては、生理用品は無償どころか、軽減税率の対象ですらないのは残念なことですが、NPO団体や企業、各地方自治体などが、生理用品を必要な届けようとさまざまな取り組みをしています。
個人ができる節約は?使い捨てではない生理ケアを選ぶ
長い間、生理の話題はタブーとされていて、話題に出すべきではないとされてきました。
近年、「生理の貧困」という言葉が知られるようになり、生理が個人に与える負担に光が当てられ、知られるようになってきたのは、非常に大きな一歩です。
今後、税率が下げられたり、理想的には無料で生理用品が手に入るようになれば素晴らしいですが、社会の変化を待つ以外に、個人でもできることには何があるでしょうか。
定期的な出費を抑えるためには、使い捨てではなく、何度も繰り返し使える生理用品に切り替えることが考えられます。
月経カップや吸水ショーツは、初期費用がかかりますが、定期的な出費を抑えることができます。使い捨てではないため、洗って使い続けることができます。
5,000円のカップを10年使えば、ひと月わずか42円です。
毎月の予算から生理用品代をマイナスできるのは大きいことです。
また、使い捨てではないのでゴミが出ず、家にどれくらいナプキンが残っているのかを気にしたり、ネット注文したり、スーパーやドラッグストアで買って帰ったりなどの手間も省くことができます。
最後に
生理が来るのは、ある年齢の女性にとって当然のことで、生理にはお金がかかってしまうことも残念ながら、現在のところ事実です。
しかし、この身体的、精神的、経済的な負担である生理を、どうしたら少しでも軽くし、ラクに過ごすことができるのかを考えていきませんか。
「我慢するしかない」「イヤだけど、何とかやり過ごそう」という態度では、現実に起こっている「生理の貧困」の解決にはなりません。
前述のように、今、世界は動き出しています。一昔前は語ることもしにくかった生理という言葉が、人々の口に出されるキーワードとなった今、比較的容易になったことがあります。それは、調べたり、話題にしたりすること。
今回紹介したような調査結果や、生理の貧困をめぐる各国の動きにアンテナを張ってみたり、今使っているもの以外に、どんな生理用品があるのか、どんな準備が必要で、どんなメリットがあるのか、デメリットは何かをリサーチしてみること。友達と生理について話してみることだけでも、自分の気づかなかった視点が得られるかもしれません。
「当たり前」は、永遠のものではないのです。
日本でも2020年7月1日からプラスチック製買物袋が有料化され、各自がエコバッグを持つことが常識になりました。
この変化のように、「生理のつらさは我慢するものではない」「各自が自分に合った生理用品を使う」「生理の金銭的な負担は個人で引き受けなくていい」、こういった見方が増えていくように、私たちの行動を少しずつ変えていけたらいいなと願っています。