月経カップの煮沸消毒って必要?カップを長く使用するためのメンテナンス方法についてご紹介
2020.07.12*2024年1月15日更新
鈴のような形のカップに経血を溜めて使用する月経カップは、ナプキンやタンポンに変わる新しい生理用品として、日本でも徐々にユーザーが増えてきました。
今回は、月経カップをよい状態で長く使い続けるためのお手入れに欠かせない「煮沸消毒」についてご紹介したいと思います。
月経カップの使用に慣れてきた方も、このタイミングでいまいちど確認していきましょう。
月経カップが他の生理用品と異なる点
「ナプキン」や「タンポン」は、一度使ったらゴミ箱に捨てるという使い捨てが当たり前で、今まで私たちは何も考えずにいつも生理のたびにトイレにあるゴミ箱に捨ててきましたよね。
現在、新しい生理用品として注目を集めている月経カップは、他の生理用品と比べて「繰り返し使える」ということが大きな特徴です。
使用方法にもよりますが、医療用シリコーン100%のカップの寿命は数年間〜10年間。
でもやはりメインテナンスを雑にしてしまうと、その寿命は短くなってしまいます。
せっかくなら長く大切に使いたいですよね。
長く使えば使うほどエコにもなり、地球にやさしい生活ができます。
では、できるだけよい状態で長く使うためのメンテナンス方法についてご紹介します。
新しい月経カップを箱から出したら
新品の月経カップを箱から出したら、まずはカップ全体を観察し、縁部分(リム)にある空気穴がきちんと空いているかを確認してください。
そして、新しい月経カップを使用する前には、必ず「煮沸消毒」を行います。
毎月の生理サイクルでの月経カップのケア方法
では、毎月の生理サイクルでの月経カップのケア方法はどのようにしたらよいでしょうか?
ここでは、必ずしも煮沸消毒をする必要はありません。
カップを使用した日は少なくとも1日1回、水やぬるま湯と、低刺激性の石けんを使用して、しっかりと洗ってください。シリコーン製の月経カップ専用の洗浄剤の「ディーバウォッシュ」もおすすめです。
特に空気穴には汚れがつまりやすいので、カップに水を溜めた状態で、手のひらに逆さまに置いて、カップをぎゅっとつぶしながら、空気穴から水を出すようにして洗うとよいでしょう。
ただし、感染予防のためにも、月経カップを長持ちさせるためにも、生理サイクルごとに(少なくとも2〜3ヶ月に1回は)煮沸消毒を行うことをおすすめします。
特に夏のムシムシする時期はあらゆる細菌が繁殖しやすいので、煮沸作業は面倒くさがらずに行うとよいでしょう。
煮沸消毒って何?
煮沸消毒と聞いても、やったことがない人にとっては、どんなふうに、どのくらいの時間やればいいのかよく分かりませんよね。
煮沸消毒は特別な機器は必要なく簡単にでき、効果のある消毒方法として細菌やウイルスを殺滅するのに有効といわれています。
月経カップ「エヴァカップ」「スーパージェニー」「ディーバカップ」の素材であるシリコーンは耐熱性があるため、消毒方法には煮沸消毒が奨励されています。
身近なところでは、赤ちゃんの哺乳瓶の消毒にもこの煮沸が多く用いられています。
煮沸消毒と熱湯消毒の違い
煮沸消毒・熱湯消毒どちらも、お湯を用いて消毒をおこなうという点では同じです。
しかし、煮沸消毒は「グツグツ沸騰する鍋のお湯に、消毒する物(ここでは月経カップ)を入れて煮立てて消毒する」のに対し、熱湯消毒は「80度〜沸騰(100度)させたお湯を、消毒する物にかけて(浸けて)消毒する」という違いがあります。
どちらも殺菌のためには有効な方法です。
熱湯消毒は100度以下のお湯でも可能という点で熱いのが苦手な方には安心感がありますが、いくら煮沸消毒よりも温度が低いといえども熱湯です。お湯をかける際にお湯が飛び散ってヤケドする恐れは十分にあります。
月経カップの熱湯消毒を考えた場合、カップの内側まで熱いお湯をまんべんなくかけるのは難しく、ヤケドのリスクはさらに高まると思います。
したがって、熱湯消毒よりも煮沸消毒をおこなった方が安全かもしれませんね。
熱湯消毒には「80〜100度のお湯に5分程度浸ける」という方法もありますが、一方で煮沸消毒は医療機器にも使われるほどに効果がある方法として幅広く実施されていて、熱湯消毒よりも効果が高いと言われています。
月経カップには小さな空気穴が空いていてそこに汚れがたまりやすいため、より殺菌効果が得られるという煮沸消毒がおすすめです。
参考:「消毒方法 消毒・滅菌の概要」日医雑誌122巻10号付録,日本医師会
煮沸消毒ってどうやるの?詳しい手順について
月経カップ(エヴァカップ・スーパージェニー)と一緒に入っている説明書には
「鍋を水で沸騰させた後、カップを入れ10分間ほど煮沸消毒してください。」と記載されています。
電子レンジで煮沸する方法もあり、その場合は「耐熱容器にカップを入れ水に浸し、電子レンジで数分間煮沸します。」
との説明書きがあります。
煮沸消毒の時間はなぜ10分間なのでしょうか?
細菌の中には10秒で死滅するものもありますが、すべての菌を死滅させるためには最低でも10分間は必要だといわれているからです。
どうしても沸騰するまでの時間が持てない方は電子レンジの方法が有効かと思います。
今回は鍋を使用した場合と電子レンジを使用した場合の2種類の煮沸消毒の仕方をご紹介します。
鍋を使用した煮沸消毒の方法
煮沸消毒の前に、カップについた経血はぬるま湯や水で洗い流し、きれいにしておいてください。
① 鍋を用意します
料理の鍋を使用するのに抵抗がある場合には、ご家庭で使用しなくなった鍋をカップの煮沸消毒専用にしてもよいかもしれません。
最近では100円ショップでも手頃に鍋を入手できます。
鍋は大きさよりも深さが重要だと思います。
鍋に水を入れたときに、カップがすべて水に浸る程度の水量にしてください。
カップの一部が水から出ていたら効果が得られません。
↓このように一度カップを入れてカップが十分に水に浸る水量を調節してみてください。
※水に浸ることを確認したら一度カップは取り出します。
② 鍋を火にかけ沸騰したらカップを入れます(またはIHのスイッチをオン)
鍋を温めて、沸々と沸騰してきたら、カップを鍋の中に入れましょう。
およそ10分間煮沸します。
写真の赤いカップのように、沸騰したお湯によってカップがどんどん水面にあがってきてしまいます。
菜箸などをうまく使い、カップを泳がせるようなイメージで全体がお湯に触れるように調節してあげてください。
このとき、カップが破損しないように、カップが鍋底や鍋の側面にずっと触れた状態にならないように注意しましょう。
なるべく見守っていてあげてくださいね。
③ 10分後、火を止めてカップを取り出します
約10分間煮沸したのち、火を止めます。
ザルなどを使用し鍋のお湯を捨て、カップを取り出しましょう。
このとき、お湯の蒸気や、熱くなったカップによるやけどには十分注意してくださいね。
④ 水で軽くゆすいで水気を取ります
熱くなったカップをやけどに注意しながら水で軽くゆすぎます。
ゆすいだ後は水気を切り、キッチンペーパーやタオル等で軽く拭きましょう。
⑤ 乾燥させ、保管します
カップの水気を切ったあとは、すぐに袋などに入れるのではなく、清潔な場所に置いて完全に乾燥させましょう。
乾燥しきらないままの保管、密閉する袋やプラスチックケースへの保管は、細菌の繁殖やかびなどの原因になることもあるので、避けてください。
エヴァカップ、スーパージェニー、ディーバカップには、カップ収納用のポーチが付属されています。
あの台所用品で、煮沸が簡単に!
煮沸のとき、菜箸だけで10分間ずっとカップを泳がしているのは、熱くて大変ですよね。
そんなとき、あの台所用品が大活躍します。
こちら、味噌をとくときに使うものですが、100均などでも簡単に手に入ります。
これを使用すると、鍋とカップが直接触れることがないので煮沸しやすくなりますよ。
他にも、泡立て器を使用するのもおすすめです。
電子レンジを使用した煮沸消毒の方法
鍋を使用したときと同様に、煮沸消毒の前はカップについた経血はぬるま湯や水で洗い流し、きれいにしておいてください。
① マグカップやタッパーなどの耐熱容器を用意します
月経カップが水に十分に浸る程度の深さのある容器を用意します。
ご家庭で余っているマグカップや100円ショップなどで販売されている耐熱容器などから選ぶのもありですが、自分の月経カップにぴったりのサイズのものを探すのは意外と難しいですよね。
そんな方におすすめしたいのは、月経カップ専用の洗浄カップです。
なかでも、インテグロの洗浄カップは、全ブランド&サイズに対応しているうえ、耐久性と安全性に優れた食品グレードシリコーン製で安心して長く使えます。
また、安全面に配慮して、ふたに蒸気穴があったり、ホルダーリングがついているのもポイントです。
② 洗浄カップに月経カップと水を入れます
洗浄カップに月経カップを入れて、一番上のラインまで水を入れます。
③ 電子レンジに入れて加熱します
蒸気穴を開けた状態で蓋をして、電子レンジで温めます。目安は、500W 5分間、600W 3分間くらいです。
④ やけどに注意して電子レンジから取り出す
温めた直後は洗浄カップが高温になるため、少し時間をおいて冷めたことを確認してから取り出すか、ミトンやふきん等を使って取り出します。
ふたを開けずに、蒸気穴からお湯を捨てます。
⑤ 洗浄カップが冷めたら月経カップを取り出します
加熱直後は、洗浄カップも月経カップも熱くなっているため、水で冷やしてからふたを開けて、月経カップを取り出します。
タオルやキッチンペーパーで軽く拭きます。
これで煮沸消毒は完了です。
⑥ 乾燥させ、保管します
カップの水気を切ったあとはそのまま専用の袋に入れるのではなく、清潔な場所に置くなどして完全に乾燥させてください。
電子レンジを使用する煮沸消毒でのポイント
① 容器の深さと水の量に注意
マグカップのようにふたのない容器を使用した場合、水の量が多いと途中であふれてくることがあるため、多すぎず少なすぎず、月経カップが十分に浸る程度の容器の深さと水の量が大切です。
② できればふたがついている容器がよい
マグカップは取っ手がついているのでレンジから取り出しやすいという利点がありますが、一方でお湯があふれやすいという難点があります。
そのため、即席ラーメンを作るための耐熱容器などがよさそうです。
その他の注意点
今回は「煮沸消毒」に注目して月経カップのメンテナンスの方法をご紹介しましたが、そのほかにもカップを清潔に保つための注意点をいくつかご紹介します。
①カップは高温・多湿な場所や直射日光を避けて清潔な場所に保管するようにしましょう。日本は非常に湿度が高い国です。特に湿度が上昇する梅雨の時期は、カビがはえないように注意しましょう。
②エヴァカップ、スーパージェニー、ディーバカップに使用されているシリコーンは耐久性に優れていますが、定期的にひび割れやべたつき、変色などの劣化がないかチェックをしてみてください。万が一劣化や破損の兆候がある場合は使用を中止してください。
③ 腟内に挿入して使用するものなので、キッチン用の漂白剤などの強い薬品を使用することは絶対にしないでください。
④ 医療用シリコーン製の月経カップの消毒にミルトンは使用しないでください。ミルトンの成分である次亜塩素酸ナトリウムがシリコーンを傷める可能性があり、商品の劣化を早める原因になります。
まとめ
今回は「月経カップの煮沸消毒の方法」に注目し、カップをより安全に長く使用するためのメンテナンス方法についてご紹介しました。
シリコーン製の月経カップの寿命は数年〜10年間といわれています。
しかし、使い方・保管方法によっては、1年間で新しいものに交換しなければいけない可能性もあります。
お財布にも、地球環境にやさしい生活を送るために、ぜひ月経カップを適切にケアして大切に使用していきましょう。
参考記事: