月経カップは本当に安全なの? 産婦人科医・宋美玄先生に聞く、月経カップの「気になる」を、一問一答。

*2022年7月14日更新(商品画像変更)

第3の生理用品として、日本でも徐々に認知され注目を集めている月経カップ

これから月経カップを使ってみたいと思っている方や最近使い始めた方が、月経カップの安全性や使い方などの疑問や気になる点について、産婦人科医・丸の内の森レディースクリニック院長の産婦人科医 宋美玄(そん みひょん)先生にお話を伺いました。

月経カップについて聞く 産婦人科医・宋美玄先生

 ―宋先生はいつから月経カップを使用されているのでしょうか?使いはじめたきっかけを教えてください。

宋美玄先生(以下、宋):私は今は、低容量ピルやミレーナ*で生理をコントロールしていますが、2014年ごろ、妊活中に月経カップを使用していました。きっかけは同じく医師の妹から勧められたことでした。彼女は常に地球にやさしい生活を追求しているので、限りある資源から作られたナプキンを使い捨てするということが耐えられないようです。最初は布ナプキンを使用していましたが、そのうちにカップに行き着いて、「めっちゃいいよ!」と私に勧めてきたのです。

使ってみると、生理中の蒸れやにおい、かぶれなどの心配がなく快適で、12時間もつけておけるので手術中も集中できます。さらに、ゴミが一切出ないので、トイレのゴミ箱の掃除をしなくていいのもうれしいですよね。「もっと早く出会いたかった!」と思うくらい、楽チンでとても便利なものだと思います。

私は、「月経カップ」「デリケートゾーン用の拭き取りシート」「布ナプキン」の3つを、生理のわずらわしさを解放する、女性のための「新・三種の神器」と呼んでいます。(笑)

 

*プロゲステロン(黄体ホルモン)を持続的に放出する器具を子宮の中に置く、子宮内避妊システムのこと。2007年に避妊薬として国内で承認された。子宮内膜を厚くさせない働きがあるため、近年では過多月経や生理痛等に対して有効な治療法として注目されている。

 

―「月経カップを取り出せなくなるのでは?」「月経カップが子宮の中に入ってしまうのでは?」などの心配をしている方もいるようです。実際にそんなことはあるのでしょうか?

宋:月経カップの装着位置はタンポンよりも下なので、正しく装着されていれば心配することはありませんが、カップをつけて動いたり寝たりしている間に、いつの間にかカップが腟の奥のほうに上がっていってしまうことがあるんですよね。ただ、子宮口というのは出産のときしか開かないようにできているので、体の構造上、月経カップが子宮の中に入ることはありません。

月経カップが奥に入ってしまって取り出しにくいときは、おなかに力を入れて、いきんで下に降ろすのが一般的です。少し寝転がったり、骨盤を上に向けたりして体勢を変えると、取り出しやすくなることもありますよ。

おすすめの月経カップ

 ―月経カップが使えない人や向かない人というのはありますか?

宋:腟中隔(ちつちゅうかく)などの生まれつきの病気で、腟に仕切り状のものがある人は使えない場合もあると思いますが、それ以外では、月経カップの使用に適さないという人はほぼいないと思いますよ。もちろん、自分で自分の性器をさわったり、腟に自分の指を入れたりすることもできないような人には難しいと思いますけどね。

非常に稀だと思いますが、万一、自力で取り出せなくなった場合には、婦人科に来てもらえば簡単に取り出せるので安心してください。(笑)

 

―月経カップは12時間連続使用ができることがメリットのひとつですが、本来、外に排出される経血が腟内にとどまることは、衛生的に問題ではないのでしょうか?

宋:経血が腟内にとどまるといっても、長くて半日くらいですよね。カップを使っていなくても、寝ている間に腟内にたまった経血が朝まとまって出てくるなど、姿勢によって半日くらい腟内に経血が溜まることはあるので、心配する必要はありません。むしろ、月経カップを使うと、経血がほとんど空気に触れることがないため、酸化による細菌の増殖やにおいの発生を抑えられるので、ナプキンやタンポンより非常に衛生的だと思います。

 

―月経カップを使うことによって、腟内で月経カップの溜まった経血が子宮のなかに逆流する心配はありませんか?

宋:腟に出た経血が子宮に逆流することはありません。ただ、意外かもしれませんが、経血は、通常、腟を通って外に排出されますが、9割の女性は、子宮から卵管を通って卵巣のほうに経血が逆流しています。これは、使用している生理用品に関係なく、誰でも日常的に起こっていることですので、月経カップを使用するから逆流しやすいということはありません。

 

―タンポンを長時間使用するとTSS(トキシックショック症候群)のリスクが高まるといわれていますが、月経カップにもTSSのリスクはあるのでしょうか?

宋:月経カップもTSSのリスクがまったくゼロとは言えませんが、使用されている素材の違いからタンポンより安全だと思います。タンポンは繊維でできているので、長時間使用することで細菌が繁殖しやすくなります。タンポンは実際に使ってみるとよく分かると思うんですけど、長時間使用して取り出したときにけっこうニオイますよね。一方で、エヴァカップやスーパージェニーなどの月経カップに使われている医療量シリコーンという素材は、心臓弁やカテーテル、胃瘻(いろう)用チューブなどにも使われているものと同じで、細菌が繁殖しづらくニオイも出にくい特徴があります。

最近の研究では、月経カップもTSSにつながる可能性があることがわかってきているようですが、これまで発症した数千ものTSSの症例のうち、月経カップに関連する症例は2件だけです。また、発症した2件のケースは、いずれも数日間カップを腟内に放置していたとのことです。どの生理用品にもいえることですが、月経カップを使う際には、感染予防のために、使用方法を守ることや手を洗って清潔にしてから使用するということが重要です。

関連記事:月経カップがTSS(トキシックショック症候群)を引き起こす!?

タンポンと月経カップのTSSリスク

 ―外出先のトイレでは、月経カップを取り出して再挿入するときに、水洗いできないのですが、衛生的に問題ないでしょうか?

宋:公共トイレでは個室に洗面台がついていることは少ないですよね。水洗いができない場合には、トイレットペーパーやデリケートゾーン用ウェットティッシュでサッと拭いて再挿入しても問題ありません。

腟は決して無菌状態ではありません。腟のなかには口の中と同じようにたくさんの常在菌が存在し、外部から病原菌が入ってくるのを防いでくれているんですよ。この腟の自浄作用が、子宮を清潔に保ってくれています。

例えば、セックスをするときを思い出してみてください。パートナーがあなたの体に触れる前に、きちんとシャワーを浴びたり手を洗ったりすることはありますか?セックスのときに腟がどれだけの菌にさらされているかを考えてみると、自分の腟内に入っていた月経カップを再度挿入することについて、それほど心配する必要がないことが理解できますよね。

関連記事:外出先の公共トイレで月経カップはどうやって交換するの?

 

―月経カップを長年使用すると、腟が圧迫されて広がってしまうことはありますか?大きいサイズのカップを使っている私は、腟がゆるいのでしょうか?

宋:月経カップによって骨盤底筋が傷ついたり、腟が伸びてしまったりすることはありません。また、出産を経験すると、腟はある程度ベースが引き伸ばされるので、ラージサイズのカップが適していると思います。

多くの人は、セックスのときの腟の動きと関連づけて、男性から「腟がゆるい」と思われたくないと心配しているんだと思いますが、そもそもセックスのときは、感じたりオーガズムに達したりすることで、腟がぎゅーっと締まります。普段の腟の状態とセックスのときの腟状態は全く別の話だということをぜひ理解してほしいですね。

 

―セックスの経験のない人が月経カップを使うことはできますか?処女膜は破れてしまうのでしょうか?

宋:10代でも月経カップを使っている人もいますが、セックスの経験のない人や腟に自分の指を入れることに抵抗がある人はちょっと難しいかもしれませんね。ただ、月経カップを使ったことのある人の方が、初めてのセックスに対する恐怖感や不安が少なくなるかもしれません。考え方によってはメリットもあると思います。

処女膜については、月経カップを使うことで、裂けることはあるかもしれません。でも、そもそも処女膜とは、腟の入り口付近になる穴の空いたひだ状の粘膜のことで、初体験をする以前にすでに処女膜が裂けている人も多いので、裂けていない処女膜が処女の証、ではありません。

日本ではまだまだ月経カップの存在を知らない産婦人科の医師や看護師も多いのが現状です。女性がより快適に過ごすことができる新しい生理用品の選択肢として、月経カップがもっと広まればいいなと思っています。私のクリニックにはサンプルも置いてありますので、実物を見てみたいという人はぜひお声がけください。

産婦人科医師 宋美玄先生がおすすめする月経カップ

 

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