【月経カップ体験談】フィンスイミングの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい! フィンスイミング日本代表 山階早姫さん
2018.12.10フィンスイミング日本代表 / 高校教諭 山階早姫(やましなさき)さん
生後8ヶ月から水泳を始め、小学生からは選手とし本格的に競泳の道へ。全国大会優勝など数々の大会で華々しい成績を収めてきた。しかし2012年のロンドン五輪選考会において、五輪出場の夢が叶わず引退。その後、先輩の勧めでフィンスイミングに転向すると初出場の大会で日本新記録を更新。日本代表としてアジア大会に出場し、銅メダルを獲得。今も進化が止まらない。本職では高校教師として毎日200人近くの生徒たちと関わっている、社会人アスリートとして仕事とトレーニングを両立させる異色のスイマー。
Her Life Style
大きなフィンをつけて泳ぐ姿はまるで人魚のように美しいですよね。フィンスイミングとはどんなスポーツなのですか?
フィンスイミングは、フィンと呼ばれる足ひれを使って競泳と同じようにスピードを競う競技です。伸ばした腕を頭の上で組んで、全身を波のようにくねくねとうねらせて泳ぎます。
両足をそろえてイルカの尾ひれのような1枚のフィンをはいて泳ぐ競技と、スキューバダイビングで使うような2枚のフィンを左右の足にはいてクロールを泳ぐ競技があります。
フィンスイミングは基本的に顔が水中に入りっぱなしなので、潜水種目でなければシュノーケルで呼吸をします。
距離は50mから1500mまであります。水中最速競技と言われていて、最高速度は競泳の約1.5倍のスピードにもなるんですよ!
フィンスイミングを始めたきかっけは何だったのですか?
生後8ヶ月で水泳を始めて、小学校1年生からは競泳選手として本格的に泳ぎ始めました。
多くのスイマーは大学卒業を機に競技を引退するのですが、私は2012年のロンドンオリンピック出場を目指して現役続行を決意しました。しかし、残念ながら夢叶わず、競泳選手としてのキャリアに終止符を打ちました。正直、現役生活最後の1年間は結果が伴わなくて、とても苦しかったです。引退後は半分引きこもりになりかけていましたね。(苦笑)
そんなときに、同じスイミングクラブの先輩が、「ここまでやってきた大好きな水泳が辛い、苦しい、で終えるのはもったいないよ!」と、私をフィンスイミングに誘ってくれたんです。最初は、「とりあえず日本選手権に出てみて、楽しく泳いで、そしたら辞めよう」という軽い気持ちでした。ところが、まさかの日本新記録を樹立してしまったんです。
日本代表に選出されて、競泳時代では成し得なかった日の丸を初めて背負い、ベトナムで開催されたアジア大会に出場しました。この時点でも、「アジア大会が終わったら辞めよう」と思っていたのですが…そこで3位になり銅メダルを獲得。初めての国際大会での表彰式に感動してしまい、その後も泳ぎ続け、今に至ります(笑)
フィンスイミングを始めて今年で7年目。身体は年々しんどくなっているはずなのに、今でもベストタイムを更新しています。
社会人アスリートとして毎日どのようなスケジュールで過ごしていますか?
平日は朝8時から高校で社会の授業を教えていて、毎日200人近くの生徒たち関わっています。
平日は週3回仕事のあとに、小さいころから通っているスイミングクラブで水中でのトレーニングやジムでウエイトトレーニングを行います。土日のどちらかはフィンをつけて泳ぐトレーニングを行ったり、試合や合宿が入ることもあるので…ほぼ水の中にいますね!(笑)
とにかく厳しかった競泳時代とは違って、気分があまり乗らないときや、疲れてるなと感じるときは無理をせずに、トレーニングの日でも休養日にあてて、友達と出かけたり美味しいものを食べたりしてリフレッシュするようにしています。
ただがむしゃらに練習すれば記録が伸びるという年齢でもないですしね…身体と相談しながらトレーニングを続けています。
仕事をしているとトレーニングができる時間がとても貴重なので、時間の使い方が上手くなりました。やると決めたら一気に集中できます。
また、月に1度くらいの頻度で、吉本興業のお笑い芸人さんとのイベントなどさまざまな水泳イベントなどに参加させていただいていて、そこではフィンスイミングのデモンストレーションをしています。フィンスイミングの人口はテレビ番組などの影響で徐々に増えていますが、まだまだマイナースポーツなので、少しでも多くの人に知ってもらいたいと思っています。
高校教師とフィンスイミングのトレーニングで忙しい毎日を過ごされていますが、やりがいは何でしょうか?
私は小さいころからずっと水泳一筋で過ごしてきて、水泳のことしか頭になかったのですが、今学校では普通科からスポーツ科までさまざまな生徒たちと関わるなかで、今まで知らなかった世界を知ることができて楽しいですね。生徒たちを見ていると、ひとりひとりいろいろな考え方や生き方があって、「そんなに型にはまった生き方じゃなくてもいいんだ」と逆に高校生から学んでいます。それを知ったら心に余裕が生まれました(笑)
社会人アスリートとしてのやりがいは、自分が一生懸命になれる何かを持っていることで、それが自分の強みになったり自信になったり、誰かを勇気づけたり、共に感動できたりすることだと思います。
お気に入りのグッズがあれば教えてください。
商売道具であるモノフィンの“マーマレードちゃん”です。2年に1回くらいの頻度で買い換えるので今のフィンは3代目。名前の由来は色がオレンジだから(笑)。暖色が好きなので実は水着もオレンジです。モノフィンはウクライナから輸入するので、実際に履いてみるまでは履き心地が分からないんです。サイズが微妙に違うこともあって…。だからこそ、自分にぴったり合ったフィンには名前で呼びたくなるくらい愛着が湧くんです!
Her Period
生理中の水泳ではどんな苦労がありましたか?
私たちのスイミングでは生理のときはコーチに報告するようにと言われていて、コーチの話が長いことは変わりませんでしたが、ミーティングを早めに上がらせてくれるなどの配慮はしてくれていました(笑)
高校でも水泳仲間であれば、生理のことはけっこうオープンに話していました。関西という地域柄もあるかもしれませんね。ただ、オープンに話せるとはいっても、個人個人の生理の具体的な悩みはあまり話さなかったし、正しい知識や適切な対処法は知らなかったですね。練習中の経血漏れに関してはみんな苦労していました。
タンポンを使っても長時間の練習では容量いっぱいになって血が垂れてきてしまうんですよね。水中で泳いでいるときはいいんですが、練習後にプールサイドに上がったときが問題で、いつも女子同士で水の入ったバケツを持って走ってプールサイドに垂れてくる血を流し合っていました。そんな私たちを男子のチームメイトたちは見て見ぬ振りをしてくれていたと思います(笑)
仕事中の生理の悩みはありますか?
授業と授業の間の休み時間が10分しかなくて、教室の移動や提出物の受け取り、名簿や教材の差し替え、生徒に話しかけられていたらあっという間に時間が経ってしまいます。
生理中でもトイレに行く時間がないので、デリケートゾーンは不快だし漏れることをいつも心配していました。
月経カップや吸水ショーツを使い始めて変わりましたか?
なんと!生理期間が短くなりました。7日間あったのが5日間で終わるようになったんです。理由はよくわからないのですが、これが本当にうれしいです!
フィンの練習では、「今日は多い日だから休もう」という日がなくなりました。また、試合やイベントと生理がかさなることも気にならなくなったので、スケジュールも立てやすくなりましたね。月経カップは日中はほぼ取り替える必要がないので、時間と気持ちに余裕が生まれました。
また、実は男性トレーナーのマッサージを受けるときに、ナプキンがカサカサする音が気になっていたんです。月経カップとエヴァウェアならそんな心配もなく安心してマッサージを受けられるようになりました。ウエイトトレーニングでも、ナプキンのずれや蒸れを気にせずに普段と同じように動けるので、以前より集中できるようになりましたね。
愛用している生理用品を教えてください。
私はやわらかいスーパージェニーが気に入っています。カップの下のほうに星柄がついているのもかわいいんですよね!
最近はカップを取り替えるタイミングが分かってきたので、バックアップで履いているエヴァウェアを汚すこともほとんどありません。思ったよりもカップに血が溜まっていないとガッカリすることもあります(笑)
私はどんなことにおいても「選択肢や知識が増える」ことは人生を豊かにすると思っています。月経カップは、最初はちょっとドキドキしますが、このチャレンジは決して無駄にはなりません。まずは1歩踏み出してみてください。
正直、もっと早くカップに出会いたかったです!フィン仲間にもおすすめしているので私の周りでは少しずつユーザーが増えてきていますよ。
ビギナーの方へのアドバイスは、挿入するときに力を抜くことですね。中でうまく開かないときはステムを持って前後に動かすと「ポコん!」と開きますよ。ぜひ試してみてください。
Her Message
生理についてメッセージをお願いします。
生理は何も恥ずかしいことではないですよね。生理についてもっとオープンに話すことができれば、憂鬱になりがちな気分も笑って吹き飛ばせると思うんです。生理の悩みはそれぞれですが、女性同士でお互いに助け合うことができるかもしれません。
学校では男子生徒がふざけた感じで生理の話をしてくることがあるんです。そんなとき、こちらが恥ずかしがると余計に調子にのってふざけるので、真面目に話をするようにしています。そうするとその後はふざけたりしないし、それ以上聞いてくることはないですね(笑)女性の体の仕組みを知ることは男性にも大事なことなので、教師として正しい知識をきちんと伝えるよう心がけています。
Her Dream
今後の夢を教えてください。
今は大会が終わっても何日か経つと「泳がなきゃ!」って気持ちになってプールに戻るんですよね。この気持ちがなくならない限りはやめられないです!逆にその気持ちがなくなった時が引退する時かな、と思います。
それまでは、自分にできることを常に探しながら柔軟に対応し、最終的にフィンスイミングに恩返しがしたいです。日本でフィンスイミングをもっと多くの人に知ってもらい、もっとフィンの価値が上がっていくことを願っています。
まずは来年の秋に日本で開催されるアジア大会で活躍できるように、頑張ります!