生理カップがTSS(トキシックショック症候群)を引き起こす!?

2018.09.11

生理カップ(月経カップ)は、タンポンと比べてTSS(トキシックショック症候群)の危険性がないことで知られています。その理由のひとつは素材の違いだといわれています。タンポンは合成繊維などの繊維で作られていますが、主な生理カップは医療用シリコーンで作られています。しかしながら、つい先日(2018年4月20日)、生理カップがTSSを引き起こす可能性がより高いと主張する研究論文*を元にした記事がイギリスのDaily Mail Onlineにて配信されました。このことが世界中の月経カップユーザーに大きな衝撃を与え不安にさせているようです。

*Impact of currently marketed tampons and menstrual cups on Staphylococcus aureus growth and TSST-1 production in vitro. Appl. Environ. Microbiol. AEM.00351-18; Accepted manuscript posted online 20 April 2018

しかし、この論文をよく読んでみると、記事のタイトルとなっている「生理カップがTSSを引き起こす」ということを証明できる研究結果は示されていないことがわかります。この研究は、単に「TSSを引き起こす危険性がないといわれる生理カップでさえも、正しく使わなければTSSを引き起こす可能性はゼロではないですよ」ということを伝えている程度の内容だと理解しました。ぜひみなさんにも正しく理解していただき、安心して生理カップを使っていただきたいので、今回の記事について説明したいと思います。

TSS(トキシックショック症候群)とは何?

TSSは、黄色ブドウ球菌の産生する毒素が原因で起こる急性疾患のことで、発症した人の約半分は合成繊維で作られているタンポンの使用によるものといわれていますが、さまざまな方法で男性にも女性にも発症する可能性があります。

黄色ブドウ球菌は、私たちの鼻腔、皮膚、口腔、咽頭、消化管、膣などに定着する常在菌です。健康な女性の膣内は、グラム陽性の乳酸桿菌(デーデルライン桿菌ともよぶ)によりpHが酸性に保たれることで、膣の自浄作用が働き、常在菌のバランスも保たれます。しかし、体調が悪いときや疲れているときには免疫機能が低下しているため通常より黄色ブドウ球菌が増殖し毒素が産生しやすくなり、TSSを引き起こすリスクが高まると考えられます。

TSSの初期症状としては、突然の高熱を伴って発疹・発赤、倦怠感、嘔吐、下痢、粘膜充血などがあります。このような症状があらわれた場合には、直ちに医療機関で治療を受けないと血圧低下などのショック症状に至り、場合によっては死に至ることや、四肢切断につながる可能性があります。初期症状がインフルエンザとよく似ているため、早期の処置が遅れてしまい、それが致命傷となることもあります。

タンポンは数十年にわたりTSSの主な原因でしたが、1970年代にプロクター&ギャンブルが販売した超吸収型タンポンがTSS発症を劇的に増加させ、多くの死を招きました。このタンポンは市場からなくなりましたが、現在もタンポンによるTSSの発症は続いています。

タンポンを使用する際の注意点は、添付された説明書に従って使用すること、合成繊維で作られたもの、ダイオキシンを発生させる漂白で処理されたものを避けることです。最近では、オーガニックタンポンがTSSを起こす可能性が低いと考えられることから人気が高まっています。タンポン使用によるTSS症例の報告は大幅に減りましたが、ガイドラインに従わないユーザーにとっては、依然としてリスクは存在します。

引用:Centers for Disease Control and Prevention

生理カップは本当にTSSを引き起こすの?

一般的には、月経カップはTSSの発症のリスクはほぼないといわれてきました。しかし、最近の研究によると、カップもTSSにつながる可能性があることがわかってきました。ただ、恐れないでください。この研究では、月経カップを使用した人のなかでTSSの症例を報告した人はたった2人だけでした。カップの使用中にTSSを発症する可能性があることは認めますが、重要なことは、この2人のケースは、いずれもカップのメーカーが示している最長使用時間である10〜12時間をはるかに超えて、なんと7日間もカップを膣内に放置していたのです。

先日出回ったイギリスのDaily Mail Onlineなどから配信された記事は、フランスのClaude Bernard大学の調査を参考にされています。この研究は、膣内の環境(微生物叢)とは大きく異なるビニール袋の中で行なったin vitro(イン・ビトロ)の試験です。

彼らは月経カップが黄色ブドウ球菌(TSSの原因となる細菌)の産生を増加させる可能性が高いと主張していますが、この主張を世の中に発信する前に、さらなる多くの研究を行う必要があります。TSSの何千もの症例のうち、月経カップに関連する症例は2件しかないという事実を考えると、月経カップの快適性や利便性が優先されるべきだと思います。

カップは今まで欧米を中心に何十年も使用されてきており、さらに最近の10年間でアジア各国も含め世界中で着実にユーザーが増えています。もしカップがTSSを引き起こす可能性が高いのであれば、タンポン以上にカップに関連するTSSの症例が報告されているはずです。しかし実際にはその報告はありません。

世の中にあふれる衝撃的な記事の見出しを無視することは非常に難しいです。しかし、この研究の対象は人間ではなく、ビニール袋の中で行われたことを理解することが重要です。どのような生理用品にも共通する最も重要なことは、それらを清潔に保つことです。また、決して長時間入れっぱなしにしないこと、信頼できるブランドの製品を使用することです。

生理カップを安全に使うために

生理カップ(月経カップ)

生理カップユーザーにとって、カップを適切に洗浄することが非常に重要です。10〜12時間ごとにカップを取り出してきれいに洗うこと、またTSSやその他の感染症が不安な場合には、毎月の生理期間の前後で煮沸消毒してください。

カップの正しい使い方では、連続で12時間以上装着してはいけないのですが、カップユーザーであればうっかり取り出すことを忘れて12時間以上放置してしまった話はよく聞きます。そのような場合でも、取り出したカップが臭うくらいで他に致命的な事態は起きていないのが現状です。

しかし、みなさんは普段あまり意識しないかもしれませんが、タンポンも生理カップも日本では医療機器に属する製品です。医療機器とは薬機法において、構造、使用方法、効果又は性能が明確に示されるものであって、「疾病の診断、治療、予防に使用されること」又は「身体の構造、機能に影響を及ぼすこと」のどちらかの目的に該当し、政令で定めるものとなっています。例えば、疾病の予防に使用する目的の機器でも政令で定められていない場合(例:マスク等)は、「医療機器」に該当しません。

したがって、タンポンや生理カップを使用する際には、添付文書に書かれた使用方法に従って、正しく使用することが自分の身体を守ることになります。あらためてお伝えしますが、生理カップは12時間ごとに必ず取り出して洗浄するようにしましょう。おすすめは、スマホのタイマーをセットしておくことです。

最近では医療機器として届出がされていない安価な生理カップも出回っていますが、使用しているシリコーンの質が低いと細菌が付着しやすかったり、耐久性がなかったり、ペコペコとやわらかすぎて挿入と取り出しが困難で結局使えないということも多いそうです。ついつい価格が気になるかもしれませんが、生理カップは安全性を第一に考えて選びましょう。

生理カップはより健康で快適!

生理カップで快適

生理カップは、私たちの生理をより健康で快適に変えてくれます。タンポンは経血だけでなく膣の自然な分泌物も吸収するため、膣の乾燥により自浄作用が低下したり、セックスのときのうるおい不足にもつながることもあります。

また、タンポンは経血量の少ないときに使用するとタンポンが完全に飽和しない状態で取り出す際のボソボソした摩擦により膣管に微小な傷をつけることもあるといわれています。生理カップは、生理の軽い日から1時間おきにタンポンを交換しなければいけない重い日までどんな量でも使えます。

ぜひあなたの生理用品の選択肢のひとつにぜひ加えてみてはいかがでしょうか?