基礎体温は健康のバロメーター 無排卵や卵巣の機能不全もわかります

「生理が遅れがち…」「1か月空いてしまうことがある…」。逆に、「終わったと思ったらすぐにまた生理が来てしまう…」など。生理不順の悩みはいろいろ。「排卵していないかも? 将来、妊娠できるの?」という不安も持つ人もいます。生理不順や排卵の有無を簡単に自分でわかる方法があります。それが基礎体温です。基礎体温からわかる体のことと、心配すべき生理不順の対処法についてまとめました。

文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

 

治療してすぐに改善すれば大丈夫

正常な生理周期は、「25日~38日の間に生理が来て、3~7日間出血が継続している状態」です。生理が25日~38日の間で来れば問題ありません。

 

2~3か月に渡って生理が来ないような場合は、卵巣機能に問題がある可能性も否定できません。婦人科を受診してください。

 

もしも生理不順でも、治療してすぐに改善する生理不順なら、それがすぐに不妊症につながるということはないでしょう。

ただ、「卵巣機能不全(卵巣の働きの低下)」や「黄体機能不全(排卵後の黄体から十分なホルモンが分泌されていない)」などの病気があると、不妊につながる可能性もあります。

 

基礎体温は女性にとってのミカタになります!

婦人科を受診するときには、できれば基礎体温表を持参しましょう。

基礎体温には、生理周期だけでなく、排卵があるかどうか、卵巣の機能が大丈夫か…など、たくさんの情報が詰まっています。

 

専門家が基礎体温の変化を見れば、どの時期にどのホルモンが不足しているのかなど、多くの情報を得ることができるのです。

 

排卵日までが低温期、排卵したら高温期です

朝目覚めた直後の口の中の体温を基礎体温と言います。

性成熟期の女性では、体温の高い時期(高温相)と低い時期(低温相)が一定の周期で繰り返されています。

 

このような基礎体温の変化は、卵巣ホルモンの働きを反映しています。

月経開始直後から排卵日まで、エストロゲンが分泌される時期が“低温期”です。排卵が起こって、黄体からプロゲステロンが分泌される時期が“高温期”です。

 

妊娠しなければ、プロゲステロンとエストロゲンの分泌が減少し、体温が低下します。それとともに月経が始まります。

基礎体温から分かること

 

基礎体温で何がわかるの?

女性の体は、周期的に変化しています。そのため基礎体温は、性成熟期の女性の健康のバロメーターになっています。

 

基礎体温の変化はとても微妙。せいぜい0.5℃位の変動です。ですから、メモリの細かい婦人体温計で測ります。

夜寝る前に枕元に用意しておき、朝目覚めたら起き上がる前に、舌の裏で測り、基礎体温表に記入します。

これを線で結んだ基礎体温曲線から、たくさんのことがわかります。

 

まず、“排卵の有無”や“排卵日”がわかります。

基礎体温の変化と女性ホルモン

低温期の最終日が排卵日です。高温相、低温相がない一相性の曲線を描く場合は、“無排卵”の可能性があります。

 

“妊娠しやすい時期”がわかります。

卵子の寿命は約24時間です。そして、精子の寿命は約3日。このふたつを考え合わせると、排卵日前3日から排卵日後1日までが、最も妊娠しやすい時期になります。

 

妊娠すると、大量のプロゲステロンが分泌され、月経が止まるとともに、高温相が続きます。

 

そのほか基礎体温は、黄体機能不全、子宮内膜症などの病気の診断の参考にもなります。

 

生理不順のパターンごとの対処法は…

生理不順にも、いくつかのパターンがあります。それぞれのパターンで、妊娠、出産への影響について説明します。

 

  • 稀発月経(きはつげっけい)

生理の正常周期は25日~38日間のサイクル。個人差はありますが、39日以上、間があいてしまうような、周期が長い生理のことを「稀発月経」と言います。

 

稀発月経の原因は、卵巣の働きが低下していて、女性ホルモンが順調に分泌されていない可能性が考えられます。

稀発月経でも排卵があれば、妊娠、出産が可能ですが、無排卵の可能性も多いです。

 

1~2か月様子をみて、生理周期が正常になればいいですが、周期が長く開いてしまう状態がさらに続くようなら、女性ホルモンのバランスがどうなっているか、排卵はしているかどうか、を婦人科で調べてもらいましょう。

 

  • 頻発月経(ひんぱつげっけい)

生理周期が24日以下の短いサイクルで生理が来ることを「頻発月経」と言います。

原因は、卵巣の機能が落ちているか、ストレスで女性ホルモンの分泌が乱れたことなどが考えられます。

 

頻発月経のなかには、女性ホルモンのひとつであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が不十分で、排卵日から生理開始までの期間が短くなってしまう「黄体機能不全」という病気の場合もあります。

 

プロゲステロンが不足すると、子宮内膜が十分に成熟しないため、妊娠しにくかったり、妊娠しても流産が起こりやすくなることも。妊娠、出産を望んでいる人は、早めに婦人科を受診して、女性ホルモンの分泌がどのような状態なのかを調べましょう。

 

  • 過少月経(かしょうげっけい)と過短月経(かたんげっけい)

生理の出血量が少なく、ナプキンに出血がわずかにつく程度で終わってしまうような生理を「過少月経」と言います。

また、生理が2日以内で終わってしまう生理を「過短月経」と言います。

 

いずれの場合も、女性ホルモンの分泌量が少ないため、子宮内膜の厚みが薄い、あるいは子宮自体の発育が不十分な状態、甲状腺機能異常などが原因のこともあります。

 

生理は来ても、排卵のない無排卵月経になっている場合も多いので、長い間、そのままにしておくと不妊症の原因になってしまいます。

婦人科を早めに受診しましょう。場合によっては、ホルモン剤などで治療が必要なこともあります。

 

  • 過多月経(かたげっけい)

過多月経とは、月経血の量が異常に多い状態で、一般的に150ml以上で、血の塊が多く混ざるような場合とされています。

一般に月経血量は一周期分で20~140ml、平均が50~60mlとされていますが、実際経血量を測っている人はまずいないので、月経血量の多さは、日常生活に支障をきたすほど月経量が多い場合や、月経のために病的な貧血がある場合に、過多月経とされ、治療が行われます。

 

10代の過多月経は、無排卵などの原因が考えられます。20代、30代の性成熟期では、子宮筋腫(特に粘膜下筋腫)、子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症、子宮体がん、子宮線筋症などの病気が原因となることが多いです。

 

貧血になることも多いので、「月経血に血の塊が混じる」「昼間に夜用のナプキンをしている」などの症状があれば、婦人科を受診しましょう。

 

  • プレ更年期の月経不順

卵巣の老化は、35歳ころから始まっています。

更年期の前段階のプレ更年期(30代後半~40代前半くらい)で、生理周期が乱れたり、出血量が減るなどの症状がある人は、閉経に向けての体の変化がすでに始まっているのかもしれません。

 

閉経は、平均的には50歳前後ですので、あまり早くから更年期のような状態が起こると、老化も早まります。それに、閉経後に起こりやすい病気のリスクも高まります。

そのため、不足する女性ホルモンを補う治療が必要になる場合もあります。

 

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