低用量ピルの使いこなし術。避妊だけではない、生理痛や生理周期のコントロールにも!

低用量ピルは、避妊薬のイメージがありますが、生理痛の治療薬としても使われています。

そのほか、低用量ピルには、生理周期を自分の予定に合わせてコントロールできるなど、さまざまな副効用があります。

そもそも低用量ピルって、どんな薬なのでしょう? 

低用量ピルの嬉しい効果について、お伝えします。

文/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

 

低用量ピルの効果は避妊だけではありません

低用量ピルには、エストロゲン(卵胞ホルモン)剤とプロゲステロン(黄体ホルモン)剤という2種類の女性ホルモンが含まれています。

低用量ピルを1日1錠決まった時間に飲むことで、ほぼ100%の避妊が可能です。

でも、もちろん低用量ピルの効果は、それだけではありません。

まず、つらい生理痛を改善する効果があります。

さらに、女性にとってうれしい作用は、生理周期の調整ができることです。

その月の予定や生活のリズムを計画しやすくなります。

日本で低用量ピルが認可されたのは、欧米に遅れること30年、1999年です。

日本では認可が遅れましたが、逆に、30年前に認可されて低用量ピルを飲んできた世界の女性たちの健康状態が、現在、どうなっているかを知ることができます。

フランス人女性の人生を変えた薬!

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ピルを飲んできた欧米の女性たちは、どうだったでしょうか? 

健康被害が起きたり、不妊症の人が増えたでしょうか?

答えはNOです。

欧米では、今も50%~70%の女性が低用量ピルを服用しています。

たとえば、フランスでは約40%の女性が低用量ピルを服用していて、出産率が上がり、人口は増加しています。

1990年に実施された調査*の、「ここ20年で女性の人生を変えるのに最も貢献したものはなんですか?」という質問に対しても、実に半数以上のフランス人女性たちが「ピルを服用した生活(避妊)」と答えています。

【調査結果(複数回答)】

1位「ピルを服用した生活(避妊)」:59%

2位「責任ある地位につけること」:43%

3位「家庭用器具の進歩」:39%

4位「男性向きだった仕事につけること」:37%

(以下略)

*Le Nouvel OBSERVATEUR/FEMMEs du 6 au 12 decembre 1990

低用量ピルのメリットはたくさんある!

低用量ピルは、毎日内服することによって、避妊効果以外にも、さまざまなメリットがあります。

【低用量ピルのメリット】

  • 生理周期を調整できる(生理日を出張、旅行や試験などを避けて計画できる)
  • 生理痛を改善できる
  • ニキビを改善できる
  • 生理不順を改善できる
  • PMS(月経前症候群)を改善できる
  • 卵巣がんの予防(発症率の低下)に繋がる
  • 子宮体がんの予防(発症率の低下)に繋がる

    ピルの中でエストロゲン量が少ないのが低用量ピル

    ピルは1錠中に含まれるエストロゲンの量によって、高用量、中用量、低用量、超低用量に分類されています。

    • 高用量
      エストロゲンの量が1錠中50μg*より多い
    • 中用量
      エストロゲンの量が1錠中50μg
    • 低用量(OC=Oral contraceptive)
      エストロゲンの量が1錠中50μgより少ない
      (30μg~35μg)
    • 超低用量(LEP= Low dose estrogen progestin)
      エストロゲンの量が1錠中30μgより少ない
      (のちほど紹介する「ヤーズ」「ルナベルULD」は20μg)

    *μg(マイクログラム)

    ピルには多くの種類があり、選ぶことが可能

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    低用量ピルに含まれる女性ホルモンのひとつであるエストロゲンは、すべて同じ種類の“エチニルエストラジオール”というエストロゲンが含まれています。

    もうひとつの女性ホルモンのプロゲステロンの種類と開発された順番によって、低用量ピル(OC)は4種類(4世代)に分けられています。

    近年、超低用量ピル(LEP)の種類も増えました。

    これは、つらい生理痛である「月経困難症」の病名がつけば、保険適用になります。

    • 低用量ピル(OC)/自費
      シンフェーズ、トリキュラー、アンジュ、マーベロン、ラベルフィーユ、ファボワール

    • 超低用量ピル(LEP)/保険適用
      ヤーズ、ヤーズフレックス、ルナベルULD、フリウェルLD、ジェミーナ

    自費と保険がありますが、病院の窓口で支払う費用は、大きく変わりません。

    ちなみに、自費の低用量ピルは、クリニックによって金額は異なりますが、2千数百円~3千円というところが多いようです。

    保険適用のピルでも結局、そのくらいの金額になります。

    低用量ピルと超低用量ピルのおもな種類は…

    低用量ピル(OC)と超低用量ピル(LEP)のおもなものを種類(世代、プロゲステロン剤の種類)ごとに紹介します。

    日本でも今、低用量ピル(OC)や超低用量ピル(LEP)を何のために使いたいか、その目的に応じて選べるようになりました。

    女性ホルモンに詳しい婦人科医に相談してみてください。

    ノルエチステロン(第1世代ピル)

    プロゲステロン剤にノルエチステロンを使用したピルは、最初につくられた低用量ピルです。ノルエチステロンの作用で生理の経血量が減り、生理痛を和らげる効果に優れています。

    • シンフェーズ
      低用量ピル(OC)でサンデースタートピルと呼ばれ、1錠目を日曜日から開始し、出血(生理)が週末にかからないように工夫されています。

    • ルナベル(LD)
      月経困難症で保険が使えます。低用量ピル(OC)でエストロゲン量が35μg。

    • ルナベル(ULD)
      月経困難症で保険が使えます。ルナベルULDは超低用量ピル(LEP、エストロゲン量が20μg)。日本で発売されているピルの中で、1周期中(28日間)、最もエストロゲン量が少ないので、血栓症リスクを軽減することが期待できます。

    • フリウェルLD
      フリウェルLDとルナベルLDは全く同じ成分のピル(製造会社の違い)。

    レボノルゲストレル(第2世代ピル)

    プロゲステロン剤に、レボノルゲストレルを使用したピルは、第2世代のピルになります。

    • トリキュラー
      3相性の低用量ピル(OC)で、女性ホルモンの生理的な周期変化に対応させるために、1周期服用する間にも、ホルモンの量を3段階に増減しているのが特徴。
      これによって、第1世代のピルに比べて、1周期中(28日間)のエストロゲンの総量が少なくなりました(ルナベルULDを除く)。
      また、生理サイクルをコントロールする機能も向上し、ピル服用中に不正出血を起こす割合いが低下すると言われています。
    • ラベルフィーユ
      トリキュラーのジェネリック医薬品。
    • アンジュ
      トリキュラーと同じ3相性の低用量ピル(OC)。
    • ジェミーナ
      月経困難症を改善する目的で、保険適応となっている超低用量ピル(LEP)。
      「トリキュラー」や「ラベルフィーユ」と違って、1周期内でのホルモンの量が一定となっている1相性のピルです。超低用量ピルは、すべて1相性です。

    デソゲストレル(第3世代ピル)

    第3世代のピルは、新しいタイプのプロゲステロン剤で、アンドロゲン作用(男性化症状)を抑えるデソゲストレルやゲストデンというプロゲステロン剤を使用したものです。

    • マーベロン28
      日本ではニキビに悩む人たちに人気がある低用量ピル(OC)。

    • ファボワール28
      マーベロンのジェネリック医薬品。

    ドロスピレノン(第4世代ピル)

    第4世代ピルは、ドロスピレノンというプロゲステロン剤を使用したものです。

    • ヤーズ
      超低用量ピル(LEP)。
      月経困難症で保険適応されていて、ヤーズには、ほかのピルにない、次の3つの特徴があります。
    1. ピルの中で唯一“抗ミネラルコルチコイド作用”があって、むくみにくいと言われています。
    2. 24錠タイプ(ほかのピルは全て21錠タイプ)で、休薬期間が4日間と短く(ほかのピルは休薬期間7日間)、周期内のホルモンの変動が少ないため、下腹部痛や頭痛などのマイナートラブルの軽減が期待されています。
    3. アメリカでPMDD(PMSより精神症状が強いタイプ)に対して、治療承認を得ていますので、PMDD改善の期待もできます。日本では、月経困難症で保険適応されています。
    • ヤーズフレックス
      2017年4月からヤーズの姉妹ピルとして発売。
      月経困難症、子宮内膜症による月経痛で保険適応されている超低用量ピル(LEP)です。ヤーズフレックスは、ヤーズの3つの特徴があり、さらにピルの連続服用によって生理(月経)回数をできる限り減らす作用があります。
      月経の回数を減らすことができるため、PMS症状も減らすことが期待されます。

    ピルの副作用はマイナートラブルがほとんど

    ピルは、避妊効果を維持しながら、できるだけ副作用を少なくするという試みが積み重ねられてきました。

    第1世代がいちばん古いピルですが、副作用が強いかというと、そうでもありません。

    また、第4世代のピルが全て副作用が少ないかというと、そうでもないと言われています。

    低用量ピル(OC)、超低用量ピル(LEP)のようなエストロゲン含有量が少ないピルであれば、副作用の有無や強さは、開発の時代の古さではなく、その人とピルとの相性によるのではないかと言われています。

    また、低用量ピルでは、副作用というよりも“マイナートラブル”という軽くて一時的なものがほとんどです。

    マイナートラブルとして多いのは、不正出血気持ち悪い(吐き気)、むくみです。

    不正出血は、初めてピルを飲み始めたときに起こる人が約15%と言われているマイナートラブルで、ダラダラと少量の出血が続くことがありますが、ホルモンバランスが安定する2シート目を服用するころは、ほとんどの出血はなくなります。

    飲み忘れや飲み遅れで、出血することもありますので、きちんと服用することも大切です。

    気持悪さや吐き気がある人は、食後すぐに飲むと、改善することがあります。

    いずれのマイナートラブルも、初めてピルを飲むときに起こりやすいのですが、生活に支障があるほどの人は、ほとんどいないと言われています。

    また、初めて飲み始めてから1か月~3か月でほとんどなくなります。

    もしも、吐き気やむくみなどで、ピルを続けられなかったら、プロゲステロン剤の違うピル(世代が違うピル)に変えて試してみるのもいいでしょう。

    注意すべき副作用は血栓症です

    マイナートラブル以外に、ピルで考えられる最も重大な副作用は、血栓症です。

    血栓症は、血管の中に流れる血液が固まってしまうことによって、血液の流れに栓をしてしまう病気です。

    ピルによる血栓症は、ふくらはぎを流れる静脈に発症することが多いと言われていて、ふくらはぎや太ももが腫れて、強い痛みをともないます。

    更年期世代の40歳後半になった女性、また若い女性でも1日15本以上喫煙をする人、肥満の人は、静脈血栓症のリスクが高くなると言われています。

    服用開始から最初の3か月、特に最初の1か月に血栓症を起こすリスクが高いことも知られています。

    禁煙は、非常に大切です。

    血栓症のリスクの頻度は、かなり低いですが、まったくないわけではありませんので、自分のリスクがどのくらいかを、医師によく相談してください。

     

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