【月経カップ体験談】自分も周りも環境も気持ちよく、そしてなにより楽しく、サステナブルな暮らしを実践する 服部麻子さん
2023.06.23photo: Yoshitsugu Ujo
ゴミをできる限り減らすサステナブルな生活や、自分にも環境にもやさしい暮らしを実践・発信する服部麻子さん。月経カップとの出会いのきっかけは、パートナーの服部雄一郎さんが仕事で翻訳していた本の中だったそう。ゴミ問題と生理用品の関係についてもお話しを伺いました。
愛用中の商品:スーパージェニー
ーー どんなきっかけで、ゼロウェイストやプラスチックフリーを目指すサステナブルな暮らしをはじめたのですか?
20代のころは環境問題にまったく関心がなくて、夫婦ともに都心に勤め、ごく普通の生活をしていました。子供が生まれたあとに、子育てをもっと楽しみたいと思い、神奈川県の葉山町に引越し、夫が家の近くの葉山町役場に転職したんです。そこで、まさかのゴミの部署に配属になったことが、ゴミ問題に目覚めたきっかけとなりました。
まず、ゴミ担当として、自ら自宅にコンポスト(家庭からでる生ごみなどを、微生物の働きを活用して発酵・分解させ堆肥を作る容器)を作って生ごみの処理をしてみたら、みるみるうちに家のゴミが減っていって、すごく驚いたし、なにより気持ちよかったんです。その体験からもっとゴミについて知りたいと思うようになり、夫が、ゼロウェイストが盛んなカリフォルニア州バークレーの大学院で環境政策の専門的なスキルを学びたいと言うので、子供も一緒に家族で渡米しました。
大学院終了後は、環境NGOスタッフとして南インドに半年間住むことに。その時に「オーロヴィル」というエコヴィレッジを訪ねたことが今の生活に舵を切るきっかけになりました。世界中から集まった人たちが、様々な形で「エコな生活」を実践している場所だったんです。私は「こんな生き方もあるんだ」くらいに思っていたのですが、夫がすごくインスピレーションを受けて「ここに住みたい」くらいなことを言い出して(笑)。
帰国後にこれから日本でどう暮らしていくかを考えたときに、バークレーで学んだことやオーロヴィルで見た実際のライフスタイルに刺激を受け、「自然豊かなところで、もっと自由でサステナブルな暮らしを実践してみたい!」と思うようになり、友人を頼って高知県の山のふもとに移住し、今にいたります。
ーー 月経カップと出会ったきっかけは何でしたか?
月経カップとの出会いは2015年ごろ。高知に移住してきてすぐに、夫がゴミ関連の本の翻訳の仕事を始めたんです。そのとき、彼が翻訳していた本「ゼロ・ウェイスト・ホーム」の中で「月経カップ」が推奨されていて、夫に「これはいい!ぜひ使ってみて」と頼まれました。
『ゼロ・ウェイスト・ホーム』ベア・ジョンソン著 服部雄一郎訳 アノニマ・スタジオ
でも、私は当時、すでに布ナプキンを5年くらい使用していて、ゴミは出ないし体にもやさしいため、それなりに満足していたので、これ以上のものは必要ないと思っていました。しかも、体内にカップを入れるなんてちょっと不安で、夫は残念そうでしたが(笑)、そのときはトライしませんでした。
ーー そんな月経カップを、使ってみようと思ったのはなぜですか?
それから3年くらいたったころに、合気道を習い始めました。合気道は、動きがかなり激しいうえ、道着が白。布ナプキンではとうていカバーできず、生理のときは稽古を休んでいたんです。やりたいことができないことに不便を感じたときに、ふと月経カップのことを思い出しました。カップがあれば漏れやズレがなく、自由に稽古に参加できそう!と。
調べものが得意な夫に「品質がよく安全で、初めてでも使いやすいカップを買ってくれたら、使ってあげる。」と伝えたところ、彼の調査の結果、候補にスーパージェニーが入りました(笑)。
ーー 実際に使ってみてどうでしたか?
出産の経験があったので、「これが入らないわけない」という気持ちはありつつも、周りに使っている人もいなかったので、やはり初めてのときは不安でドキドキでした。まず、お風呂で、出し入れだけの練習をして感覚をつかみました。量が多い日のほうがカップの滑りがよく、やりやすかったです。そこからトライアンドエラーをくり返して、2〜3ヶ月も経てばスムーズに使えるようになりました。
慣れたら本当に快適で、友達にも積極的におすすめしています。実は、「月経カップのお話し会」をやったこともあるんですよ。最初の不安な気持ちがわかるからこそ、実物を見てもらいながら自分の体験を話したら、実際に友達も使い始めました。
ーー 月経カップのメリットは何でしょうか?
ゴミが全く出ないことと、最小限の水と石けんだけでお手入れできることです。布ナプキンもゴミは出ませんが、洗濯の手間と時間がかかります。たくさんの水と洗剤も必要なので、カップのほうが断然エコ。多い日以外は半日つけっぱなしでも大丈夫なので、生理を気にせず過ごせます。
特に便利なのは、旅行、温泉、海水浴のとき。災害時にも絶対に役立つと思うので、私はいざというときのために、いつも持ち歩いています。普段から使い慣れている生理用品を災害時や旅行先でも使えるというのも安心ですよね。
私は「環境のことも考えながら、自分も心地よくハッピーに過ごせること」に価値があると考えていて、カップはまさにそれが実現できるアイテムです。
ーー 麻子さんの考える、エコな生理ライフについて教えてください。
ゴミ問題の取り組みとして優先順位が高いことは、日々の生活のなかで、「使い捨てるプラスチックのゴミを減らす」ことです。レジ袋、プラスチックカップ、ストロー、サランラップなど、1回使ったらすぐに捨ててしまうものはたくさんありますよね。プラスチック製品自体が悪いわけではありません。長く使えるものや再利用できるものは私も使っています。
実は、紙ナプキンの原料のほとんどはプラスチック。「紙ナプキン」というよりも「プラナプキン」ですよね。残念ながらこれも「使い捨てるプラスチックのゴミ」のひとつです。この世に女性がいる限り生理は続き、ゴミは増え続け、プラスチックが自然に還ることはありません。
このことを考えると、月経カップや吸水ショーツ、布ナプキンなどは、エコへの貢献度はかなり高いと思います。環境のことだけを考えるなら、紙ナプキンは一切使わないほうがいいのですが、ゴミゼロを目指すことで、我慢したり無理をしたりすると辛くなって続きません。
私の場合、多い日に漏れの心配があるときには、月経カップにプラスして、紙ナプキンや布ナプキンを併用することもあります。より安心して過ごすためのバックアップとしての活用です。同じナプキンでも役割が変わると、ナプキンの使用量を大幅に削減できますよ。
でも、最近は、バックアップ用のナプキンの代わりに「吸水ショーツ」を使ってみたいなと思っているんです。私は、敏感肌なうえ、締め付け感のあるショーツが苦手なのですが、インテグロさんのエヴァウェアは、伸縮性があって肌に刺激がないように作られていると聞いているので、ぜひ試してみたいです。いよいよナプキンゼロが実現できるかもしれません。
ーー ゴミを減らすために、私たちが簡単に始められることを教えてください。
日本のゴミ問題の大きな課題となっている「生ゴミ」を大幅に減らすことができるコンポストもおすすめですが、虫やニオイの心配など、人によってはハードルが高く感じられることも。使ってみれば本当に快適なんですけれどね。集合住宅に住んでいる場合でも、使えるコンポストは色々出てきているので、興味のある方にはぜひチャレンジしてみてほしいのですが、難しいと感じる人が多いかもしれません。
どこに住んでいてもすぐに始められることで、エコへの貢献度が高いことといえば、やはり月経カップデビューすることがナンバーワンです!(笑)なぜなら、カップは、勇気を出して最初の一歩さえ踏み出せれば、その後はゴミは自然に減っていきますし、同じものを長期間使うことができます。一度慣れてしまえば快適で、無理することも我慢することもありません。
エコアクションは誰かに押し付けたり、押し付けられたりするものではないですよね。なので、「やってみたい」と思った人から始めればいいと思います。「やりたいならやってみよう、楽しかったら続けてみよう」という感じですね。
ーー 今後の目標や夢を教えてください。
仕事でもプライベートでも、自分のやりたいことや得意なことができたらいいなと思っています。私は自分が経験したことで「これ、すごくいい!」と思ったことを伝えることが好きなんですね。それから、できるだけ多くの人に「その人の得意なこと」をぜひ生かしてほしいと思っています。
新しいことをはじめたいと思っているとき、最初の一歩がなかなか踏み出せないことってありますよね。そんな人の一歩を後押しできて、さらにそれがよりよい社会につながっていったらすごくうれしいし、そんな世界を見てみたいと思っています。
プロフィール
服部麻子(はっとり あさこ)さん
神奈川県生まれ。バークレー、南インド、京都を経て、家族5人で高知に移住9年目。「無理なく楽しく心地よく」を目指して、日々の暮らしを発信中。
共著に『サステイナブルに暮らしたい』『サステイナブルに家を建てる』(ともにアノニマ・スタジオ)
Instagram @asterope_tea