毎月ちゃんと生理きてる?スポーツと生理にまつわる話 〜前編〜

※ 2024年10月22日更新

日々厳しいトレーニングに耐え、身体を酷使しているアスリートは、初経年齢が遅い傾向にあります。さらに、初経を迎えても、周期の乱れや無月経などの問題を抱えるアスリートが多く存在するのが現状です。

今回は、スポーツと生理の関係について整理し、生理に関する正しい知識を再確認していきましょう。

生理中はスポーツをしてもいいの?

適度な運動は、生理痛をはじめとする月経前の不快症状を軽減することにも効果的です。

これは、身体を動かすことで血流が促進されたり、運動に集中することで不快な症状を紛らわせたり、相手との交流や汗を流すことがストレス解消につながるからと考えられています。

もちろん、生理中に体調が悪い場合は無理に運動するべきではありませんが、体調が良ければ生理中でも運動することに問題はありません。

アスリートは初経年齢が平均よりも遅い傾向にある

一方で、日々厳しいトレーニングに耐え、身体を酷使しているアスリートは、初経年齢が平均よりも遅い傾向にあります。

その一因は「脂肪の量」です。初経を迎えるためには、一定量の皮下脂肪が必要ですが、アスリートは脂肪を蓄積しにくく、厳しい練習によるストレスが原因で初経や月経が起こりにくくなっていると言われています。

特に体重コントロールが求められる体操、フィギュアスケート、陸上、バレエなどではこの現象が顕著です。 

参考文献:

「月経のはなし - 歴史・行動・メカニズム」 (中公新書) ,武谷 雄二(2012年)

いまだスポーツ界にある「生理が来なくなって一人前」という風潮

初経を迎えても、その後の競技生活で生理が止まるアスリートも少なくありません。

アスリートと生理に関する「生理が来なくなって一人前の幻想 ――10代スポーツ女子をむしばむ月経周期異常」の記事では、クラブ活動などでスポーツをしている中高生の多くが無月経や月経不順になっていると述べられています。

さらにクラブ内には「生理があるほうがおかしい」という雰囲気があり、心身の健康のためのスポーツが、逆に健康をむしばんでいる実態がまとめられています。

筆者自身も幼いころからスポーツに打ち込み、中高時代には毎日厳しい練習をしていたため、1年間で生理が2回しかなかった時期がありました。

そのころは上の記事と同じように、「生理がない=頑張っている証拠」といった思い込みがあり、危機感はまったく持っていませんでした。

なぜアスリートの無月経が問題なのか?

卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)は、骨代謝に関係しているため、無月経が続くとエストロゲンが低い状態になり、骨量の低下が進行します。

骨が最も成長する10代〜20歳ころまでに、過度な体重制限やオーバーワークによる低体重、無月経によって女性ホルモンの低下が起こると、疲労骨折を発症するリスクが高まります。

実際に、疲労骨折を発症したアスリートは、無月経などの月経異常の確率が高いことがわかっています。

おどろくべきことに、これらの症状を訴える女子アスリートたちは、全国または国際規模の大会を目指す選手とは限らず、地方大会レベルの選手も同じ問題を抱えています。

一度減ってしまった骨量は元に戻すことがむずかしく、思春期から20歳ごろまでの過ごし方が、競技を終えたあとの人生に大きな影響を与えます。これはアスリート自身や、成長期の選手の育成に携わる指導者にとって、とても重要な課題といえます。

過度な食事制限による問題も

無月経が起きやすい競技(新体操・陸上長距離・フィギュアスケートなど)では、選手の無月経・低体重・骨粗鬆症の問題に加え、過度な食事制限によって摂食障害をも引き起こしやす傾向にあります。

実際に、フィギュアスケートの元日本代表でオリンピック入賞経験のある鈴木明子選手は、かつて摂食障害であったことを告白しています。

さらに、日本でも人気が非常に高かったロシアのユリヤ・リプニツカヤ選手は、拒食症により今後の活躍の期待がかかるなか、19歳の若さで引退を表明しました。

スポーツは時に人々を歓喜と熱狂に沸かせ、世界をも動かす強いパワーを持っていますが、その華やかな表舞台とは裏腹に、実際には将来の健康を犠牲にした危険と隣り合わせのアスリートたちが多く存在しているのです。 

まとめ

今回は、生理とスポーツの関係についての記事を中心に、生理の重要性や正しい知識について考えてきました。

日本のスポーツ界は、2020年東京オリンピックの開催が決まったことをきっかけに、産婦人科医がスポーツ医学に参入したり、オリンピアンが生理についてオープンに発信することが増え、女性アスリートをとりまく環境が少しずつよい方向に変わってきています。

これからはアスリート自身、そして指導者たちも積極的に生理や女性の身体についての正しい知識を身につけ、適性な栄養管理や、生理周期に合わせたトレーニングを行っていく必要があります。

毎月ちゃんと生理きてる?スポーツと生理にまつわる話 〜後編〜 に続く

 

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